スノースキン 第一章

作:宮代 能活

※春香20歳、直樹30歳という設定です。

いづみ「・・・あなた、あなた」
直樹「いづみ!いづみなのか!?どこいっていたんだ・・・ずっと探していたんだぞ」
俺はいづみの体を抱きしめると、何度も何度も唇を重ねた。
直樹「もうどこにもいかないでくれ・・・ずっと独りだったんだ」
いづみ「・・・あなた、それはできないわ」
いづみ「もういかなくちゃ、あなた、それじゃあね」
女は氷の湖の方へ歩いていった、俺は何故かその氷が割れることを知っていた。
直樹「いづみ!いっちゃ駄目だ!!そこは危ない!!」
その忠告は女の耳には届かず、女はそそくさと湖の奥へと歩いていく。
ビシッ!
氷にまるで蜘蛛の糸のようにヒビが入り崩れた、女はそのまま湖の底に飲み込まれていく。
直樹「いづみーーーーーーーーーーー!!!!!!」

直樹「はっ!」
目の前に無機質なコンクリートの天井が現れた、どうやら夢を見ていたようだった。
直樹「また、あの夢か・・・」
俺は汗でビチョビチョになったシーツと寝巻きを洗濯機につっこむとスーツに着替え始めた。 


俺の名前は安藤 直樹、とある芸能事務所に勤めている。
昔、俳優をやっていたツテで社長と知り合い、ある時、就職を勧められたのだ。
俳優の仕事も面白かったのだが、実際の所、俺には俳優よりも営業の方が性に合っていた。
直樹「さて、とりあえず今日最初の仕事は・・・天海さんを迎えに行くことだな」
天海 春香さんとは今俺がプロデュースしている女の子・・・アイドルだ。
アイドルといっても色々な活動があるが、
この子は歌が得意なことからミュージックステーション等、音楽番組への営業に力を入れている。
あともう一人プロデュースしている女の子がいるんだが、それはまたの時に話そう。
直樹「天海さん、おはよう」
春香「おはようございますー、プロデューサーさん、いつもすいませんー」
バタン
春香「おや?くんくん、お、プロデューサーさん香水つけてますねー、珍しい〜」
直樹「え?ああ、たまにはね」
春香「あー、なんかいいことあったんですか〜?」
直樹「はは、ただの気分転換だよ」
事務所に向かう車内の中で、天海さんはきまって他愛のない話をする。
俺は適当に話を合わせるのだが、何故か天海さんは幸せそうな顔をしている・・・女心は難解だ。

事務所に着くと俺は自分のパソコンを立ち上げ、いつものようにメールソフトを立ち上げた。
新着のメールは大概が音楽番組出演オーディションの合否なのだが今回はプラスアルファがあった。
直樹「お、天海さん、あのドラマのオーディション合格したみたいだよ」
たまには趣向を変えようと受けてみたオーディションだったのだが、まさか受かるとは。
春香「えぇ〜、ドラマですかー、どうしよう〜、夢みたいですー」
直樹「打ち合わせは・・・今日の午後からだって、天海さん、良かったね」
春香「うーん、大好きな歌が歌えなくなるから嬉しさ半分、悲しさ半分って感じです〜」 


〜午前12時〜

春香「それじゃ、私はドラマの打ち合わせ行って来ます、ついでに今日は直帰しますね〜」
直樹「了解」
律子「頑張ってねー!」
天海さんが出かけていくと、ほどなくして秋月さんがなにやら戸棚の前でふんばっていた。
直樹「何やってるの?」
律子「あっ!安藤さん丁度いいところにきましたね、この置き薬を戸棚に入れて欲しいんです」
直樹「ああ、そういうことか、構わないよ」
薬を秋月さんから受け取ると俺はなんなく薬を戸棚に片付けた。
律子「さっすが身長184cm!余裕ですね〜」
律子「時に安藤さん、少し痩せましたか?」
直樹「ああ、よく分かったね、こないだ計ったら69kgになってたよ」
律子「ええ〜、ちょっと痩せ気味じゃないですか?ちゃんと朝ごはん食べてないでしょ?」
直樹「朝は忙しいから抜くことが多いかな」
律子「朝こそしっかり食べなくちゃいけないんですよ!
営業は体が資本なんですからしっかり食べてくださいね」
直樹「善処するよ」
秋月さんは体調管理には人一倍うるさいのだ。

〜午後10時〜

ようやくいつもの事務処理が終わり帰宅しようとしてた時だった、天海さんからメールが入った。
春香「プロデューサーさん、これから帰宅します。一応報告まで・・・疲れたよ〜(;_q)」
直樹「(こんな遅くまでやってたのか、天海さん家って遠いのに明日平気なのかな?)」
その時は初日だけかと思っていたのだが、どうやら毎日のようだった
・・・連ドラなので仕方ないといえば仕方ないのだが、
毎日送り迎えしているだけに天海さんが疲れているのは目に見えていた。 


〜ある日の朝〜

直樹「天海さん、天海さん、事務所に着いたよ」
春香「あ、安藤さん、私、また眠っちゃったんですね、気持ちいいからつい・・・」
直樹「・・・天海さん、まだドラマの収録まで時間あるだろうから、ちょっといいかな?」

直樹「コーヒー、アメリカンで良かった?」
春香「あ、ありがとうございます」
直樹「天海さん、ここの所ほとんど寝ていないでしょ?」
春香「えへへっ、さっすがプロデューサーさん!お見通しですねー」
直樹「はぐらかさないでくれよ」
春香「家からここまで来るには始発でこなくちゃいけないから帰って寝るのは2〜3時間くらいなんですよー」
直樹「・・・それじゃあ、体が持たないよ」
直樹「天海さん、せめてドラマの収録が終わるまでの間、俺の家に泊まらないか?」
直樹「それなら毎日収録現場まで送ってあげられるしさ」
春香「ええ〜、いいんですかー?両親がどういうかなぁ・・・」
直樹「両親には「友達の家に泊まっている」っていうしかないかな?」
春香「うーん、しょうがないですね、少しの間だしそう言っておきます」

春香「えへへっ」
直樹「どうしたの?」
春香「はじめて優しい言葉かけてもらったんで嬉しいんです」
春香「いつも、ぶっきらぼうだから・・・」
直樹「ええっ、そうかな?」
事務所の向こうで秋月さんと高木社長がぶっと吹き出してた。

そして翌日の午後から俺と天海さんの共同生活が始まったのだった。

−続く− 



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