Eternity Signal

作:426

人生において、【ダメだと分かっていても進まなければならない】場面ってやつがある。
具体例は、後で3つほど挙げるとして……
人間、同じ行動を取るにしても、そこに伴うテンションの高低によって、
その結果は大いに違いが出るものだ。

……そんな事同業者である皆には当たり前のように分かっている話だと思うが。

今、俺は何度やっても慣れない、かつ辛い仕事をこなさなければならない。
飯の種である以上、出来ればこんな風にぼやきたくなど無いんだが……
それでも、あえて俺は同業者の皆に問いたい。


15点のビハインドを背負った状態でマウンドに向かわされるピッチャーと、
連邦軍の『白い悪魔』がこっちを睨んでいる状態で、突撃を命じられているザク(しかも単機)と、
千早に、水着以上に恥ずかしい服を来て歌わせるというミッションを社長から命じられたP。
一番、行きたくない状況があるとしたら、どれだと思う?


……冗談抜きで、俺は一番最後のがイヤだと思う。
毎度、Da服やVo服などアイドルっぽい衣装を着せるたびに、
『こんな、見世物みたいな格好で歌えって言うんですか!?』と、
著しくテンションを下げる千早をどうにかなだめて仕事させるというのは、
何度経験しても慣れるもんじゃない。

しかも、今回は衣装が衣装なだけに……そうだな、分かりやすく言うなら
【逆ワクテカ】必至の予感がする。
朝の挨拶でどんなに機嫌を取ろうとも、焼け石に水な気がしてならない。

千早とは、そこそこ長い付き合いになるが……多分、朝の挨拶が終わるなり、
『プロデューサー、今度着る衣装の件についてお話があります』と、
渋面を隠す事無く文句を言うであろう事が想像できる。
昼飯……いや、飲みに行く時の勘定を賭けても良いくらい、この予想には自信があるぞ。 


ビキニと言うには簡素すぎる、胸用の白い当て布。
これがまたマジで簡素なデザインだから、胸が薄い娘はより薄く見えてしまう。
その上に赤い袖なしのベスト。
腰には踊り子が着るような赤い前垂れのような布。
動きが激しいと、チャイナドレスよろしく裾が捲れてしまい、インナーが見える。

……勿論、ソレを考慮してインナーは水着のような『見せても構わない』タイプのものだ。
アクセサリには、Da衣装を思わせるきらびやかな腕輪と……一番特徴的なのは、
胸元にかけたそのペンダント状の宝石。
四角錐状の形をした、ぬける様な蒼みをたたえる宝石……この衣装を語る上ではずせないもの。

その名を【ブルー○ォーター】と言い、作品を象徴するキーアイテムだ。



……何故、こんな衣装を千早に着せねばならないのか、それを説明しておこう。
今、千早とあずささんのデュオが行っているラジオ企画【歌姫楽園】というコーナーがある。
ボーカル能力が特に高いこの2人に、765プロの曲以外の、ファンが好きな歌をリクエストしてもらい、
それを二人に歌ってもらうと言う企画で……
権利関係さえクリアしてしまえば、大変面白くファンの受けも良い企画になった。

アイドルポップスを外れて、アニメソングから演歌まで……
千早やあずささんにも良い刺激になるし、アイドルもファンも、両方楽しめるし、
リクエストのハガキやメールの数を見るに、反響の凄さが伺える。
先月の【六月の花嫁】特集も大好評に終わり、今月の【海】特集もいい感じのスタートを切った、
そんな矢先の、あるファンからのリクエスト。 


昔の、ある国営放送アニメの主題歌が今週のリクエストとして採用された。
で、いつもはスタジオでの収録だが、今週は公開録音。
つまり、ステージ衣装を着て歌うことを義務付けられているというわけ。
そのアニメのヒロインが着ていた衣装がコレなんだが……

実は俺も、当時放映を楽しみにしている人間の一人だった。
湾岸戦争で一話分放映時間が変わってしまい……録画、保存している視聴者が、
大ブーイングを起こした伝説もあったんだよなぁ。今となっては懐かしい。

つまりは作品自体も良く知っているだけに……何て言ったらいいかなぁ、
あの衣装が持つ、扇情的なイメージを指摘されたら反論の仕様が無い。
だが、当時のファンが大喜びするのは事実。
飲み代どころか、今月の給料全部賭けてもいいくらいのテッパン予想だ。



………限りなくハイリスク。でも、上手く行った場合のリターンも果てしなくでかいよな……
あずささんには申し訳ないが、今週メインで出てもらうのは是非とも千早にしたい。
何故なら、歌とキャラのイメージが凄く合ってるんだよな……
厳しい境遇下で必至に生きているさまとか、扱いづらい性格とか……
って、こんな事言ったら、きっと一発バッドコミュに違いない。気をつけないと。
まったく、社長ときたら……本当にしんどい仕事を振ってくれたもんだとつくづく思う。


そんなことを考えているうちに、がちゃり、とオフィスのドアが開いた。
俺が心の準備を終える前に、その人物は最短距離を無駄なく歩いて俺のデスクへ向かって来る。
「や、やぁ……千早」
「プロデューサー、来週着る衣装の件でお話があります」

……こりゃ、俺の予想以上だ。
朝の挨拶すっとばしていきなり核心を突いてきたぞ。
最悪の場合、3週くらいのドタキャンは覚悟しないとな……

いずれにせよ、賽は投げられた。
こうなったら、意地でも千早を説得してやるぞ! 


【おはよう、千早。まずは挨拶だ】
【おっはよっ♪千早。どうしたんだ?一体】
【はわぁ……眠い……こんばんは、千早】



「おっはよ♪千早。どうしたんだ?一体」
あくまで軽く接してみるが、どこか俺の反応に無理があったのかもしれない。
「プロデューサー……顔が引きつってますよ。
どうやらわたしの言いたい事は分かってくださっているようですが?」

うーむ、テンションに影響は無さそうだが、千早の勢いは変わらずだ。
千早の方も、俺に幾度となく衣装についてはやり込められているためか、
やり取りも段々難しくなってるんだよなぁ……

「まぁ、立ち話も何だしまずは座ってくれ」
隣のデスクチェアを千早に勧め、まずは落ち着かせる。
話が相手のペースで流れている時は、一旦間を空ける。交渉の常套手段ってやつだ。
「さて……何から話したものか。来週の【歌姫】で歌う曲についてはOKなんだろ?」
「ええ。とても素晴らしい曲だと思います。放映当時わたしは産まれて間もないので、
資料としてお借りしたDVDを見ましたが……歌い甲斐のある曲ですね」

やはり千早は真面目な娘だな……OPテーマだけでなく、
アニメ本編まで見て勉強してくれたらしい。
しかし、本編を見たとなると……下手な説得は即、死を招く事になるかもしれない。
尚更気を引き締めなければ。

「ならば分かると思うが、その衣装はヒロインの身につけていたものだ。
公開収録に来てくれるファンの中には、あのアニメを見ていた人も少なからず来るはずだ。
……つまり、その衣装は決して変な意味での見世物ではなく、
ヒロインと、歌と、ファンの皆……全てが同調するために必要なものなんだよ」

うーん、ナイスだ俺。
言葉自体は今、即興で作り出したものだが、かなりもっともらしく聞こえるぞ。
「そ、それは分かりますが……わたしである必要性はないと思いますっ!
そ、その……あずささんとかの方が、男の人は喜ぶのではないでしょうか?」 


ぐ……そう来たか。
確かに、あずささんにこの企画を話したときはノリノリだったよな……
しかも、幼い頃にリアルタイムで見てたというから思い入れもあるだろうし。
確かにそれも凄いかもしれないが、あの服が一番似合うのは千早だと思うんだよ、俺は。
千早の運動能力を考えると、サーカス団にいたというヒロインの過去を考えるに、
ダンス、ビジュアル共に似合うのは千早の方だ。
あずささんには申し訳ないが、ダンスが苦手な彼女にこの歌の振り付けをさせるだけでも精一杯。
ヒロインの魅力を100%活かせるかと言うと……ちょっと疑問だ。

しかし、あずささんの分も衣装は注文してあるんだよな……念のため。
千早がこの衣装を受け入れてくれない可能性も、担当Pとしては考えなくてはいけないから。
言っておくが、千早を信用して無いわけじゃないぞ。
当日は、不慮の事故をはじめ何が起こるか最後まで分からないものだ。
常に最善の手は打ち、万一の場合もフォローは欠かせない。それがプロデュース業というものだ。
……俺もつい最近、社長から教わったんだけどな。

しかし、あずささんがあの衣装を着たら………






……いかん、軽く別の世界へワープしてしまった。
いや、似合うどうこうと言う問題じゃないような気がするんだ。
いろんな意味で危険すぎる。あの露出度……特に胸の辺り。
最高に似合うとは思うんだが、ファン達が曲だけに集中できない気がする。

一日署長の仕事をしたときもそうだったが、ミニスカのアイドル署長というのは……
なんと言っていいのだろうか?著しく仕事に集中できない。俺も本人も、周りの人たちも。
駐車違反程度の罪なら、彼女の前に自首しに行って『めっ、ですよ〜』と叱ってもらいたくなる。
洒落じゃなくて、あの時実際そういう事件があったんだ。
で、警察の仕事を何も知らないあずささんが
『では〜駐車違反の罪で逮捕します〜♪』と、手錠を取り出したからさあ大変。
パレードが一時中断して、ちょっとしたパニックになったものだ。
地元TVのネタにはなるし、仕事自体は成功だったんだが…
正直、2度とやりたくないと思ったね。警察からはけっこう怒られたし。

「おはようございます〜プロデューサーさん♪」
噂をすれば何とやら。この場合はただ、俺の妄想んなんだけど。
どうやら別次元へ旅立っていあいだに、もう一人の関係者がやって来たようだ。 


綺麗な黒髪のロングヘアに、抜群のスタイル。
ゆったりとしたその動作は、見るもの全ての心を癒すと言われている……
そんな俺の、もう一人の担当アイドル、三浦あずさ。
身に纏うお姉さんっぽい雰囲気から、年上にも【さん】づけされる不思議な人だ。
俺もその一人だし。

そんな当たり前のことを考える暇もなく、俺と千早は彼女を見て固まった。
何でって、着てるんだよ、衣装を!あの服を今、この時点で!?

……いかん、日本語がヘンだぞ。落ち着け、俺。

「あの……あずささん?どうしてその服をもう着てるんですか?」
とりあえず、こちらの意図は何とか彼女に伝わったらしい。が……
「もう……いけませんよプロデューサーさん。まずは挨拶!お話はそれから。
基本だと教えてくださったじゃないですか〜めっ」

そういえばそうだ。だが、俺はさっきの千早の気持ちが少しだけ分かった気がする。
勿論挨拶は重要だが、それどころじゃない事が、目の前で起きているんだから。
「えーっと……おはようございます、あずささん。今日は元気そうですね」
「お……おはようございます」
「おはようございます〜♪今日は、来週の【歌姫】打ち合わせがお仕事ですから、
事務所についてから更衣室で着替えてきちゃいました〜」

あぁ…良かった。その服でここまで来たわけじゃないんですね。
さすがにそりゃ無いか。いくらあずささんでも。 


今 俺の目に いっぱいの妄想 全てを輝かす………
さっき軽くその姿を想像したが、目の前でその服を見せられたときの破壊力と言ったら!!
まずはその腰。
ダンスが苦手とはいえ、アイドルとして普通の女性以上に運動はしているあずささんだ。
765プロの中でも、抜群のスタイルを誇る、その肢体の魅力は胸だけでは無い。
長身ながら細い腰つきに、流れるようなヒップまでのライン。
それが、この衣装でいい感じにメリハリをつけて……
動くたびに揺れるその胸は、すべての男達の視線を独占するだろう。

「うふふ〜♪今回の歌姫楽園は張り切っちゃいますよ〜」
「あずささん……やっぱり、アニメ本編見てました?」
「はい〜。昔から一度、着てみたかったんです〜ヒロインのお姉さんのこの服。
可愛いですよね〜」

お姉さん!?その言葉に、俺は果てしない違和感を感じたわけだが……
放映当時のことを考えると、あずささんはまだ幼稚園児とかそれくらいの年齢だ。
あのヒロインが【お姉さん】になっても不思議は無いわけで……
うーん、何だろう?理屈では分かるんだが、やはり納得行かないぞ。

「……やっぱり、わたしより適任な人がいるじゃないですか」
会話の流れから外されていた千早が、半ばすねるように言い放った。
しまった……あずささんに見とれて、目的の本質を見失ってしまったようだ。
ここで安易に同意するわけには行かないぞ!
かと言って、目の前のあずささんを否定するような発言はもってのほかだ。
『いや、千早の方が似合うって』なんて事は絶対に言ってはいけない。
ここが正念場だ。踏ん張れ、俺! 


【まぁ待て、ダブルヒロインと言う手もある】
【メイド服着て、マリーの役でもやってみるか?】
【いや、あずささんは副船長の役が決まってるから】



「まぁ、待て。ダブルヒロインと言う手もあるぞ。
劇じゃないんだし、ヒロインが二人で歌っても不都合は無い。
むしろ、それぞれのファンが大喜びするさ」

ボーカル能力は二人とも申し分ないので、
ダンスは千早、ビジュアルはあずささんで公録の参加者をひきつけて……
うん、我ながらこれはイケるぞ。

「千早……第一話での空中ブランコとまでは行かないけど、宙返りくらいならできるよな?」
「はい。それくらいでしたら十分にリハーサルをすれば、大丈夫です」
「良し、千早はバトントワリングも得意だし、ダンスでファンを引き付けて貰うさ。
あずささんはボーカルに集中して下さい。サビ部分は3音高くハモって」

「あの……プロデューサー?わたし、まだ了承したわけでは……」
「まぁ、聞いてくれ千早。番組OPテーマは見てるよな?」
「は……はい」

「最初の歌い出しでは、シンクロ率を上げて二人同時に入ってもらう。
二人の声を充分、ライトを消した会場に響かせて……BGMと同時に、
ぬけるような空をイメージする、青いライトを一面に当てるんだ。
舞い降りる鳥と、バックに輝く海、そして吸い込まれそうな青空……
最高のアピールをすれば、どれだけのファンを引きつけられると思う?」

あのアニメを作っている会社は、OPテーマの演出が抜群に上手い。
曲における静と動を使い分け、巧みにカットインの手法を使いこなし……
音だけでなく、ビジュアルでも視聴者を魅了してしまう。
感性の高い千早の事だ。きっと俺の言ったイメージは明確に伝わっている。

「そこで、華麗に立つ二人がはじめて仮設ステージから見えるんだ。
そこからファン達に視線をやって、Aメロの歌い出し……最初は千早からな」
「………」 


良し、いいぞ。
千早が身体を前のめりにして、興味を示している。
表情があまり変わらない千早だが、もしも今の彼女にケモノ耳や尻尾があれば、
ぱたぱたと振っているであろう事が俺には良く分かる。
美味しいものを表現するときには、下手な理屈はいらない。
ただ、目の前で自分がひたすらに美味しく食べて見せれば良いだけの話だ。


「そこで、ヴィジュアルとボーカルの勝負になるわけだ。
確かにその服は多少扇情的で恥ずかしいかもしれんが……ファンへのアピール力は絶大だ。
つまり、全力以上のモノを出さないとボーカルを印象付ける事は出来ない。
ただでさえ、その作品が好きなファンは濃い人たちが多いからな……
あえて大きな制限を設けて、ボーカルレベルを一段上げさせるように組んだワケさ」

「そうだったのですか……この衣装は、最終的にわたし達のボーカルを高めるために
………くっ、すみませんでした、プロデューサー……そんな心も知らず、
わたしはただ、この衣装が恥ずかしいからと自分の都合しか考えずに……」

うぁ……真剣に反省する千早を見ると、途方も無い罪悪感に狩られるぞ。
確かに言ってる事に嘘は無いが、俺自身があの衣装を着た千早を見たいってのが本音だから。
「まぁ……分かってくれればいいさ。じゃ、今から皆で応接室へ行くか。
あの部屋にあるTVで、OPテーマを見ながらパート分けを考えよう」

「はい!必ず、最高のイメージを再現してみせます」
「あら〜千早ちゃんが燃えてますね……一気に海底から水面へ上昇する、
第二世代型惑星間航行用亜光速宇宙船みたいです〜♪」




「………」
「………」 


それまで、事の成り行きを見守っていたあずささんが意外な事を言った。
いや、詳しくは意外な単語、な。

「あずささん……あの潜水艦の正式名称、覚えてるんですか?」
「はい〜♪子供の頃、ちょっと気になりましたので……本を読んでいたら、
いつの間にか覚えてしまいました〜」
「ちなみに、新型の方は?」
「え〜と……確か、【第4世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦】ですね〜」

俺も千早も、驚きを隠しえない。
当時見ていたとはいえ、俺でも忘れてるぞ、あのメカの正式名称なんて。
まぁ、確かに排水して一気に海面へと上っていくその画は、
急激にテンションを上げて、やる気をみせる千早の様子を体現していたが……




もしかしてあずささん、とんでもなく記憶力良いんじゃないだろうか?


「では〜千早ちゃん、着替えて応接室に集合ですよ〜♪」
「えぇぇっ!?……あの、今からやるのは打ち合わせでは……」
「シンクロ率を上げるためには、カタチから入るのが日本人と言うものですよ〜」

ちょwwwwwwwあずささんwwwwそれ、別のアニメだから。


あずささんに半ば強引に背中を押され、千早は更衣室へ準備しに行った。
あのコスチュームを了承させるだけでなく、今着させてしまうなんて……
ナイスアシストです!あずささん。
俺は、彼女達が出て行ったオフィスのドアに向かって親指を立て、グッジョブ!のサインを送った。

その後は、天国と地獄が同時にやって来た。
だって、あの服を着た千早の破壊力が、あずささん以上なんだぞ。
スレンダーな身体つきは、ヒロインのキャラ特性を存分に体現し、
前垂れのスリット部分からスラリと伸びた脚は、美しいなんて生易しい表現で済ませるもんじゃない。

さらには、千早の魅力の一つでもある綺麗な黒髪ロングヘアは、
キャラの特性を維持しつつ、新たなイメージを提案しつつあり……
コレを見て【キャラが違う】と文句をつけるファンにはお帰りいただいて構わないとさえ思う。

胸からおへそにかけてのなだらかなラインは、しっかりと【女の子】しており、
露出が多い事も影響して、意外といつもより胸があるように見える。
最後に、覚悟を決めながらもまだぎこちなく恥じらうその様子はどうだ!?
別に事務所内では風なんて吹いてないのに、常に手を前にやって、
前垂れが捲れないように注意しているその様を見るに、

よくやった……本当によくやったぞ、俺!!あずささんもありがとう!

と、自分で自分を褒めてやりたくなった。 


だが、こんな服を着た二人と、密室でTVを見て打ち合わせ……
仕事が始まれば、ふたりとも積極的に意見を出し合ってくれるのだが、
テーブルの上に乗り出した時の胸の谷間とか、
TVに釘付けになっている時のおしりのラインとか、
軽く振り付けをしたときに捲れる前垂れとか………
これは危険すぎる。刃物で出来た一本橋を、裸足で渡るくらいにヤバイ。

二人とも真剣すぎるためか、俺という男が見ていると言う事をあまり意識してないっぽい。
品のない話だが、応接室にソファーがあってよかったと思う。マジで。
絶えず前屈みで仕事をするような、間抜けな真似はごめんだからな……

行っておくが、同業者諸君……これで仕事だけに集中できる奴がいるとしたら、
俺はソイツを男と認めないね。
ちょっと資料の台本をめくっただけであずささんの胸が揺れるし……
いやらしい気持ちで千早たちを見ていることがバレたら、即ドタキャンの危険は常にあるんだ。

まぁ……ビジュアル面での成功は、保障されたようなものだ。
あとはどれだけボーカルイメージを高めて、公録イベントを成功させるか、だな。
うーん……しかし素晴らしい。来週が楽しみだが、ファンに見せたくないような気もする……

当日は、きっと二人にもいい思い出が出来るだろう。
関係ない話だが、俺個人は素晴らしい思い出が沢山出来た。
来週はワクテカ確定さ。うん、本当に楽しみだ。来週のイベント。


〜パーフェクトコミュニケーション〜


■おしまい。 



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