作:ファル
11月20日 午後4時13分
ダンスレッスン場
真 「レッスンお疲れ様でした!」
P 「じゃあな真、気をつけて帰れよ」
真 「はい」
同日 某時刻
繁華街
真 「ん〜〜っ!」
外へ出ると真は大きな背伸びをした
彼女の名は菊池真、765プロに所属する
アイドルである
真 「さて、トレーニングがてら走って帰ろう」
11月22日 午前8時
765プロ
真 「おはようございます、プロデューサー」
いつも通り事務所に来た真
しかし真を待っていたのは悲報だった
P 「真か…悪いが話したいことがある」
真は言われるまま外へ出た
真 「話って何ですか?」
P 「実は…真は最低あと二ヶ月で引退することになった」
真 「えっ…」
真は一瞬時が止まったような感覚がした
真 「どう言うことですか!説明してくださいよ!」
Pの胸座につかみかかる真
Pは真を諫めた
P 「待て待て、何も決定したわけじゃない」
真 「どう言う事…ですか」
P 「実は後二ヵ月後にボーカル審査の試験があるんだ
それに合格できれば活動を続けられるけど…」
P 「今の真じゃ…ダンスに偏りすぎてるから合格は無理だと社長が…」
真 (嘘だっ!)
真は突然、Pを押しのけると走っていってしまった
P 「あ!、おい!真」
真は走り続けていた…
気がつくと真は公園にいた
同日 某時刻
公園
真 「何だよ…何でだよ…」
真は泣きながらうなだれていた
自分のボーカルの力量があまりに低いということを…
ましてやPに言われてはもう終わりだと思っていた…その時
あずさ 「♪〜探が〜さな〜きゃね〜、君の涙のふるさと〜
頬を伝って落ちた雫が どこから来たのかを〜♪」
ふとあずさの声がしたので真は振り向いた
そこには歌を歌うあずさの姿があった
真 「あずささん、何してるんですか?こんな所で」
あずさ 「真ちゃん、私はここでこの曲を練習していたのよ」
そういってあずさが取り出したCDケースには
BUMP OF CHICKEN/涙のふるさと
と書かれていた
真 「どこで歌うんですか?こんな曲」
あずさ 「今度の仕事でミニライブをやるのだけれど
一曲カバーしてくれってプロデュサーさんに頼まれてね」
真 「その曲…歌ってみてください…今ここで」
あずさ 「何で〜?」
真 「いいから!早くお願いします」
あずさ 「あ〜はいはいはい、分かりました」
こうしてあずさは涙のふるさとを歌い始めた
涙の源泉を物語として現出させ、それを歌い上げた歌詞になっていた
あずさ 「真ちゃん、どうだっ…」
真 「ううっ…くずっ…」
あずさ 「どうしたの!」
泣きながら俯いている真に
あずさはあわてて駆け寄った
そしてその隣に座った
あずさ 「何か悲しいことでもあったの?」
真 「実は…」
真は半泣きになりながら今までの経緯を説明した
あと二ヶ月で引退になりそうなこと…ボーカル試験のこと…
あずさ 「そう…だったの」
真 「だからボク、アイドル続けられなくなるかと心配で…」
真 「うああああああっ!!」
真はあずさの膝に突っ伏して泣いた
そんな真をあずさは優しく抱いた…そして
同日 午後6時
公園
あれからどれだけ経ったのだろう
真はあずさの膝を枕にして眠っていた
あずさ 「え〜と、今6時ね、真ちゃん、そろそろ起きて」
真 「えっ…はっ!すいません、寝てしまって」
あずさ 「いいのよ〜それより、早く帰ったら〜?」
真 「その前に一つお願いが…」
あずさ 「何〜」
真 「そのCD、貸してもらえませんか?」
あずさ 「これ?いいわよ〜家に何枚かあるから」
真 「ありがとうございます、じゃあ」
こうして真は帰っていった
11月23日 午前9時3分
765プロ
真 「遅れました!」
P 「真!来ないかと思ったぞ」
真 「すいません、ところでポーカル試験の方ですが…」
真は、今自分の中にある「策」を打ち明けた
P 「別にそれならいいけど…特に制限もないし」
真 「じゃあ、それでお願いしますね」
真はいったい何を考えているのだろうか…そして
12月21日 午前8時
ボーカル試験会場
ついにこの時か来た、真のアイドル活動の全てを賭けた試験が…
P 「この一ヶ月で、真のボーカルは飛躍的に上がってるよ
これならいけるんじゃない?」
真 「絶対にやって見せます、プロデューサー」
P 「頼もしいね、じゃ期待してるよ」
同日 某時刻
待合室
待合室にいた2人は審査方法の確認をしていた
P 「試験といっても、審査の仕方は変わらないから、
オーディションだと思えば良い」
真 「はい、分かりました」
P 「この試験には他に5人のエントリー者がいる、真は3番だ
呼ばれるように頑張れよ」
真 「はい、プロデューサー」
こうして審査の時が来た…
真の番になると…
P 「頑張れ…真」
真がステージに立つと独特の音楽が流れ始める
そう、真が歌おうとPに提案したのがこの
BUMP OF CHICKENの涙のふるさとだったのだ
真 「♪〜探が〜さな〜きゃね〜、君の涙のふるさと〜
頬を伝って落ちた雫が どこから来たのかを〜♪」
独特の雰囲気の中歌い続ける真
歌詞のひとつひとつからしっかりと感情が伝わってくる
そして発表になった
審査員 「結果の発表です…合格したのは…
3番、1番、そして5番の方です、おめでとうございます」
真は見事に合格したのだった
同日 午後4時37分
ボーカル試験会場 入り口前
真 「やりましたよプロデューサー!」
P 「ああ、今日の真は一段と輝いて見えたよ」
真 「これでまた、アイドル活動続けられますね!」
そう言った真の目には涙があふれていた
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