2時間遅れのクリスマス

作:GD

「もうすぐクリスマスが終わるな…。」
「いいから黙って仕事してちょうだい…。」

今はクリスマスの夜、ここはいつもの事務所。
Pと律子はやっぱり仕事をしていた。

「クリスマスに事務所で二人って、なんかデジャヴってますけど
 大丈夫なんですか?」
「ん?なんの事だ?」
「なんでもありません、気にしないで。」

Pと律子はアイドル達の来年以降のスケジュール予定を
考えて書類にまとめていた。

「なんで俺はこんなステキな日にこんな遅くまで仕事してるんだろう…。」
「ほーら文句を言わない。これをちゃんと終わらせておかないと、
 来年からの活動をスムーズに進める事ができませんよ。」

これから各アイドルが受けるレッスンとオーディションの計画を
Pが用紙に書き記して、律子がまとめてパソコンに入力している。
律子からツッコミが入ると二人で話し合って計画を考え直し、
またPが書いて律子が入力する。
二人はこんな作業を夕方から続けていた。
Pは突然律子に呼び出されて、しぶしぶ残業しているのだった。 



「しかしこの作業って今やらなきゃだめなのか?」
「当たり前でしょプロデューサー、だから呼んだんじゃないですか。
 来年分のレッスン場の予約やオーデションのエントリー、
 今のうちにやっておくのと来年になってからじゃ進行のスムーズさに
 雲泥の差が出るんですよ。今できる事はやっておいて貰わないと。」
「今からそんなに先まで考えても、レッスン場の休みや善永さんのプッシュ、
 あまり考えたくないけどオーデ不合格で、
 予定なんて簡単に狂っちゃうんじゃないか?」
「プロデューサー、それは全然違うわ。それが心配ならレッスン場が休みの時は
 どうするか、善永さんが来たらどうするか、そして負けた時にどうするか、
 あらゆる状況を先に考えて、対処方法までちゃんと考えておけばいいのよ。
 予定は立てておいて損はないわ。」

アルスラーン戦記のナルサスみたいな事を言うなとPは思った。
律子がナルサスなら、さしずめ俺はダリューンと言った所か。
ダーリンでなくてダリューン!くすくす…。

「プロデューサー、何ニヤニヤしてるんですか?
 頑張らないと今日中に終わりませんよ。」
「ごめん、頑張るよ。」 



しばらく真面目に作業は続き、最後のアイドルのスケジュール作成になった。
律子は入力が終わったのでPの予定が出来るのを待っていて、
うんうん唸りながらスケジュールを考えているPを横から黙って見ている。
そんな時になにげなく、律子の方から話が始まった。

「プロデューサーって何歳くらいまでサンタクロースを信じてました?」
「小学生の3年生くらいまでは信じてたかな。親父が書いた
 サンタからの手紙を貰ってはしゃいでたなあ…律子は?」
「私はね…残念だけど、初めてのクリスマスプレゼントの時、
 父が部屋に入って来たのをいきなり見ちゃって、そんな夢は見れなかったのよね。
 知ってるんだけど周囲に気を使って知らないふりしたり、
 まあとにかく、クリスマスはちょっと疲れる日でした。」
「そうか…それは確かに残念だな。」
「もう私は別にいいと思ってるんだけど、今度は父や母や友達の方が
 変に気を使ってくれちゃって、今もクリスマスはちょっと苦手です。」
「…そうか…。」

…微妙な間。

「…で、なんで突然そんな話をしたんだ?」
「今ちょっと「サンタっているのかも」って思ったから。」
「は?」

律子の顔がしまったという顔になった後みるみる赤くなっていく。
Pはしばらく黙って、うつむいて照れる律子をじーっと見ていたが、

「あー、俺もちょうど今、サンタの存在を確信したな。(ニヤニヤ)」
「ばかぁ…」

Pは真っ赤になっている律子があまりにも可愛くて、
どうにかしてやろうかと思ったが、なんとか我慢した。 



Pの作った最後のスケジュールが出来て、それを律子が入力する番になった、
手が空いたPは真剣にパソコンに向かう律子を置いて、無言で事務所を出た。
最寄のコンビニ(往復5分)にケーキを買いにである。前行った時に
クリスマスケーキ販売の告知を見ていたし、売り切れていなければまだあるはず。
今から律子と二人でケーキを食ってイイ雰囲気になるのだ。(正直)

時間は0時を過ぎてそろそろ半になりかけといった所。
Pは白い息を吐きながらコンビニに到着したが、
残念なことにケーキは売り切れていた。夕方までは売れ残っていたが、
ダッシュで買いに来た娘がいて売り切れたらしい。
更に隣のコンビはちょっと遠くて片道5分、往復で10分はかかる。
無言で出てきて15分いないのはちょっとまずいなーと思ったのだが、
今から律子に電話して「ケーキを買いに〜」なんて言うのも
なんかかっこ悪いし、こういうのって突然ケーキを買って
帰るのがいいんじゃないですか。ってわけでPは黙って次のコンビニへ。

ケーキはあった。Pはそれをすぐに買って事務所に戻る。
時計を見たらもう1時に近かったが、本当に重要な連絡があったら
律子から携帯に連絡が入るはずだし、それも無かったという事は
何も無かったという事だろう。流石にこの時間だし説教はあるかもしれないが、
ケーキで機嫌を直してもらおう。そんな事を考えながら律子のいるフロアに到着。
気付かれないようにこっそりと律子の所に戻る。 



…律子は…自分の席に伏せて静かに肩を震わせていた…。

「ううっ…ぐすっ……ぐすっ…」

…えーと…これはいったいどういう状況なんでしょうか…泣いてる?
なんて声をかけていいか分からないけれど、
とにかく声をかけなければいけない事は確信したので、
Pはおそるおそる声をかけてみる。

「…律子…どうした…?」
「…うぁ…プロデューサー…どこに行ってたんですか…?」
「…ケーキ買いに行ってた…一人にしてごめん…。」
「黙っていなくなるなんて酷いですよ…ぐすっ…。
 私を置いて帰っちゃったかと思いました…。
 それで誰かの所に行ったんじゃないかって…ぐすっ…。」
「はっはっは、何を言っているんだ律子、
 俺が律子を置いて誰かの所に行くなんてありえないぞーう!」
「プロデューサーのばかぁ…。」

無理矢理ちょっと明るく言ってみたりするP。
そのまま律子が落ち着くまで黙って待つ事にした。 



待つ間に考えていたが、もしかして律子はクリスマスの晩を
俺と一緒に過ごしたくて呼び出したのではないだろうか。
口実が仕事というのがいかにも律子らしい。

「ケーキならあったのに、なんで言わないんですかぁ。」

言われて冷蔵庫を見てみると、そこには最寄のコンビニのケーキが入っていた。
そういえば律子は俺がスケジュール書き始めたのを見てから
一瞬いなくなったな。夕方ダッシュで買いに来た娘ってのは律子だったのか…。

「律子こそ、なんでケーキがあるって言わなかったんだ。」
「だって…ギリギリまで秘密にしておいた方が楽しいじゃないですか…。」

結局二人とも同じような事を考えていたらしい。
どうしたもんかなーと思っていたら、やっと落ち着いた律子の方から提案が。

「私はプロデューサーが用意してくれたケーキを食べたいです。」
「俺は律子の用意してくれたケーキを食べたいぞ。」
「ありがとう。だからここはお互いのケーキを少しずつ食べましょう。」
「食いかけを残しておくのってまずくないか?」
「どうしてです?」
「明日誰かに見られたら…怪しまれないか?」
「誰も怪しいなんて思いませんよ。普通に皆で分けて食べればいいじゃない。
 ただケーキが2個あって、私とプロデューサーがそれぞれ
 食べたい方を食べたってだけです。何も怪しくなんかありませんよ。」
「そうか、まあ律子がそういうなら。素直に食べようかな。」

もう深夜2時近くなってしまったのだけれど、
二人念願の「二人でケーキを食ってイイ雰囲気になる」は
クリスマスに2時間程遅れてなんとか達成されたのだった。

「律子。」
「プロデューサー。」
「「メリークリスマス!!」」 



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