Explosion ver'雪歩

作:522

 ある日のことである。
 夕方俺は、いつもより早めに今日の報告書を作成していた。今日はここ―勿論、我らが
765プロダクションのことだ―に所属しているアイドルの大半がオフなせいもあるのだが、
今日は六時からある子にラジオの仕事があり、終わったらそのまま直帰するつもりなのだ。

 ・・・・・・肝心のそいつ―名を萩原雪歩という―はまだ事務所に来てないわけなんだがな。
書くこともあまりなくて、ほどなくして報告書が出来上がる。一通り仕事を終えた俺は、
徒然なるままに、ヘッドホンをつけて、音楽を聞きながら冥王星あたりへと旅立つ・・・・・・もとい、ぼーっとし始めたのだか。

 午後四時を少し回ったところ。765プロダクションに、一人の少女の姿があった。
「あぅぅ・・・・・・遅くなっちゃいましたぁ・・・・・・」
この少女―萩原雪歩という―はどうやらかなりギリギリの到着のようである。ともかく、
急いで事務室の方へと向かう。
雪歩が事務室へ入ると、そこには一人の青年。そう、その男は、
「プ、プロデューサー・・・・・・遅くなってすみません〜、前の仕事押しちゃって・・・・・・」
「まぁ、それならしゃあないな。支度、まだちょっとだけ残ってるからここで待っててく
れ」 そう言うと、どこかへと男は向かう。
 雪歩はしばらく所在なさそうにしていたが、すぐに、男の机の上にあるものに気がつく。
ヘッドホンである。しばらく迷った様子だったが、意を決したのか、それを耳にあて、MP
3プレイヤーの再生ボタンを押す―― 
 身支度を整えていたら、きゃうぅという小さい悲鳴が聞こえてきたので、俺はすぐに事
務室へと戻った。すると、
「うぅ〜」
・・・・・・なんというか、雪歩がヘッドホンをつけてうずくまっていた。
「ど、どうした雪歩?」
「そ、そのぅ・・・・・・、私、これで音楽を聞いてたんです。けっこう静かな曲が続いてたんですけど、いきなり・・・・・・」
あぁ、話が見えてきた。てか、もう原因は分かった。
「雪歩、それは・・・・・・こいつだな?」
すると、雪歩が驚いた様子で飛び上がった。
「きゃうっ!・・・・・・なにするんですかぁ〜」
「あぁ、スマンスマン。やっぱこいつだったか」
「え、ど、どういうことなんですかぁ・・・」 

「その、こいつはな」
そう言いつつ俺は、インターネットであるものを探していた。
「あぁ、こいつだ」
雪歩が画面の方へと目を向ける。が、
「・・・・・・なんですか、これ」
どうにも事情が飲みこめないようで。まあ全く知らないようだったから、仕方ないといえ
ばそれまでなんだが。
ちなみに、そのサイトはとある有名なショッピングサイトで、画面の一角には「You Suffer」と、書いてあった。
 
この後、移動中はずっとこの曲の話をしていた。・・・・・・といっても延々と俺がこの曲の事
を語り続けてただけなんだけどさ。
「それにしても、ちょうどよかったな」
「え、何がですか?」
「ほら、今から出演するラジオば・・・・・・今日のテーマ何だったっけ?」
「え〜と・・・・・・ああ〜!」
「な、さっきので少しは話すネタができただろ?」
「そうですね。あ、その話で思い出したんですけど・・・・・・」
 
・・・・・・何だか、本番が結構楽しみになってきたよ―― 
                  fin 



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