フォトグラフ

作:456

765プロデュースの事務所は、よりにもよって実に暑い夏真っ盛りに移転した。
それまでのアパート型事務所から自社ビルを建造しての事務所移転に高木社長は非常に喜び、
アイドルの手を取って錯乱した精神病患者のように踊り狂ってこう言った。
記念撮影をしよう。
素直なアイドルや整頓業務メインだった女性スタッフたちは「いいですね。やろうやろう!」と大喜びし、
それなりに集まった引越し実働班(男性スタッフ諸君)は「頭にボウフラでも湧いたんじゃねぇかコイツ」という目で社長を見る。
しかし悲しい事に765プロデュースは高木社長のワンマン会社であり、
という事はスタッフ諸君は賃労働者であり、おまけに給料日の前だった。
はしゃぐアイドルたちに引っ張られるようにぐったりしたプロデューサーが
真新しい『765プロデュース事務所』の金属の看板フレームの前に出てくると、
すでにそこでは引越し業で疲れ果てた仲間たちが「ゾンビが笑ったらこうなるんじゃないか」という笑顔でこっちを見ていた。
備品のカメラに火を入れてタイマーをセットする。
備品といったところで備品らしい備品はカメラを支える三脚だけであり、
その三脚にケツを掘られているのは社長の、それはそれは電池消費が激しいデジカメだった。
どうにか電池が寿命を迎える前に被写体の群に混じると、
プロデューサーもまた周囲のゾンビに同化して、なけなしの笑顔をカメラに向けた。直後にフラッシュが無意味に光る。

これが、もう2ヶ月も前の出来事だ。
証拠に、プロデューサーの机に飾ってあるその写真の日付は7月であるし、
写真に並んでおいてある電波時計のカレンダーは9月を示している。
その時、仏長面を絵に描いたような如月千早はアイドル群の左から3番目にいて、
もはやゾンビと化したプロデューサーは後ろから数えたほうが速かった。
あれから、もう2ヶ月経つ。
あの頃は、歌さえあれば良かった。 


いらいらする理由など他に思いつかなかった。
千早は身体の内から沸きあがる怒気を理性の力でねじ伏せる。
だって仕方がないじゃない、『VISUAL―MASTER』はそういうオーディションなんだから。
合格しなければ、Aランクには上がれないんだから。
それでも、やはり理性は本能に勝てないのかもしれなかった。
テスト明け休みの1週間を無意味に潰す事だけはないように、あれだけプロデューサーにも念を押していたはずなのに。
改めてホワイトボードを見る。アイドルに日常的に触れるからなのか、
基本的に765プロデュースの事務スタッフに喫煙者はおらず、そのせいか2ヶ月過ぎた今でもボードの掛かった壁は白そのものだった。
ともすれば見逃してしまうかもしれないホワイトボードは全部で10以上掛かっていて、
そのうち『如月千早』と書かれたホワイトボードは左から4番目にあり、
月:営業 火:オフ 水:ダンス 木:ヴィジュアル 金:ヴィジュアル 土:ヴィジュアル 日:オーディション
絶望的な気分になった。先週も先々週もボードに『ボーカル』と書かれてはいなかった気がする。
気分に導かれるままに深い深いため息を吐く。やはり理性は本能に勝てないのか。
ふと、そこまで考えて妙な感覚にとらわれた。
歌は、もはや自分にとっては本能なのだろうか。
生物が最低限生きていくための自律反射の一環として歌があるのなら。
呼吸をするかのごとく、睡眠をとるかのごとく、歌を歌う事が生きるために必要な
「千早、そろそろ出かけるよ」
「――――――――あ、はい。分かりました」
ドツボにはまりそうなところをプロデューサーに救われた千早は、
ボードにへばり付いているマグネットを「在社」から「営業」に取り替えて事務所を出た。

自分には歌しかない。そう思って歌ってきた。
いつしか、歌を『自分の居場所』を作るために使ってきた。
大好きな歌なら、他に負けないから。
大好きな歌なら、自分が居ていい場所があるから。
呼吸をするかのごとく、睡眠をとるかのごとく、歌を歌う事が生きるために必要ならば。
今の私が生きていられる場所は、どこにもないのではないか。

営業は万事滞りなく進行し、それでも日が暮れたあとにようやく事務所に帰ってきたプロデューサーと千早を待っていたのは
〆替わりのミーティングだった。
「うん。じゃあ、今日はこんな感じかな。向こうのオーディオ班も太鼓判だったから、いい仕上がりのテレビになるよ」
「そうですか…。放送は、いつでしょうか?」
たずねると、プロデューサーはボロボロのスケジューリングノートを取り出した。
その中に挟まっていた、やはりボロボロになった何枚かのB4プリントを開いては閉じ開いては閉じ、
「えーと。3日後…だから木曜日の夜8時」
見れないかもな、と言ってボードを見る。情け容赦ない白地に緑の「ヴィジュアル」の文字が、
その時間帯にようやくレッスンスタジオを出ることができるだろう、と予言していた。
「ヴィジュアルレッスン、ですか」
「不満が?」
「…はい」
言ってしまってから、千早は口を押さえた。
普段の千早ならば、『いえ。上に行くために必要ならば』とでも言いそうなところだが、
湧き上がる衝動はいつもの『如月千早』を演じさせてはくれなかった。
プロデューサーを見ると少しだけ驚いたようにこちらを見ており、
その表情からは『いつもの千早らしくない』という感情が非情にも見て取れる。
「そうか…。でも、次のオーディションはボーカルの配点高くないしな。辛いだろうけど、今が頑張り所」
「ボーカルの配点が高くないって言うのは、歌なんてどうでもいいってことですか」
プロデューサーの話をねじ切って出した声は、自分でも驚くほど底冷えした声だった。
それでも鬱々とした気分は収まらず、口は次の言葉を発する。
「私はシンガーのつもりです。その私に、歌ではないものでファンに何を届けろって言うんですか」
「な、ちは――」
「―――今日は、このまま帰ります。お疲れ様でした」
プロデューサーが何かを言う前に、千早はパイプ椅子から立ち上がった。
ボーカルの配点が高くない?
それはつまり、歌で息をしてきた自分に、死ねという事か。
『居ていい場所』は、ここではないという事なのか。
裏切られた気分だった。マグネットを『在社』から『帰宅』にして、乱暴に戸を閉めた。 


今日はこのまま帰りますと言ってしまった以上正直に帰っても良かったのだが、
まっすぐ帰宅する気分にはどうしてもなれなかった。
家に帰ったところで裁判所に提出する白地黒枠の書類を前に喧々諤々と喧嘩する両親の顔を見なければならず、
「あら帰ってきたのじゃあこれで何か食べてきなさい」といわれて野口英世を出されるのがオチだ。
むしゃくしゃした。階段を3階下りて右に曲がり、『レッスンルーム1』と書かれた部屋に入って乱暴に電気をつける。
4つあるスイッチの上段と下段の左は室内灯で、残りの一つは今頃ドアの上の『使用中』に喝を入れているはずだ。
千早はさらにコンソールを操作して防音壁に仕切られた奥の電灯に灯を入れた。
『レッスンルーム1』は事務所移転の際に新しく作られた高木社長肝いりの防音室で、
簡単な録音であれば十分に用を足せる作りをしている。
平たく言えば『絶対に音が漏れない機密性ばっちりの部屋』であり、
ここでの収録がない日はもっぱらアイドルたちが発声の自主練習用に使っていた。
真ん中にあるピアノはある日突然『レッスンルーム1』に出現したもので、
「いつの間にこんな立派なピアノ買ったんですか」と聞いたら「社長は凄い人だよ」とプロデューサーは真顔で言った。
防音素材の戸を閉める。ピアノの前に座り、基調音を出して簡単な発声を済ます。声などとっくに出来ていた。
練習曲を少しだけ歌い、数ヶ月前にリリースした『まっすぐ』のボーカルをなぞる。
声とは心の状態を最もよく表す楽器である、といったのは誰だったか。
全く声がノってくれない。発声はとっくに出来ていたはずなのに。
波立った心の反響はすさまじく、昨日歌えた歌が全く歌えないというのはどういうことか。
むしゃくしゃは募り、さりとて歌が歌えるわけではなく、
千早はやがて最後まで歌いきらないまま『今日は帰ろうか』と思い、ダンパーペダルに乗せていた足を上げ、
「あ、ごめんよ。邪魔するつもりはなかったんだけど」
驚いて防音壁を見ると、薄いグリーンの上下にやはりグリーンの帽子をかぶった老年の男が千早を見ていた。
帽子に隠れないモミアゲには白髪が見え隠れしているし、顔にはずいぶん皺があった。
覚えがある、男の左腕に巻かれている青い腕章は『総合警備サービス』と書かれているし、
彼のような風貌を千早は退社間際に見た事があった。
「…す、すみません。もう遅い時間ですね」
壁に掛かった時計を見ると21時を回っていた。彼がここにいる理由は明白であり、
ともすれば巡回中に気合を入れて光っている『使用中』には彼を立ち止まらせる理由が大いにあったに違いない。
声を掛けてくれればいいのに―――そう思って、千早は一瞬我を省みた。
「いやぁ、まだプロデューサーさんが残っているんだけどね」
そういって警備は苦笑する。つまり、彼が帰宅できない理由は千早だけではない、そう言っているのだった。
しかし、彼の帰宅を妨げている理由が千早にないというわけでもない。
急いで荷物をまとめる。バッグに楽譜とペンををぶち込んで乱暴にファスナーを上げ、
暑いくらいで着てこないほうが良かったと思った上着を引っ掴む。
「すみません、すぐに出ます」
ゆっくりやっても良かったのに、という顔の警備とすれ違う。
コンソールを操作して防音室の電気を消し、入り口の前で警備に向かって一礼する。
それでは失礼しますと言って踵を返し、千早は足早に社外に出た。
数歩歩いたところで振り返り、夏の日の記念撮影の距離から本社ビルを眺めてみる。
数時間前まで千早がいたはずの事務所の明かりは、まだ煌々と照っている。
何だ、あの人まだいるのか、と思った。 


種明かしをすれば、何も千早だけがオフなのではない。
ヤニ汚れのない壁に掛かったボードを見れば、
所属アイドル全員のボードの火曜は『オフ』と書かれていたり同意のマグネットが張り付いている。
要するに火曜は珍しく『アイドルのいないプロデュース会社』なのであり、
アイドルはそれぞれ偶のテスト休みや学生生活を満喫していたりする。
もちろんそんな珍しい日がそうザラにあるわけではないが、少なくとも765プロデュースにはそういった日が年に4回あり、
アイドルのボードとちょっと離れたところに掛かっているスタッフ全員分のボードには火曜に星マークがついている。
有給では、もちろんない。
社を上げての掃除が始まったきっかけを新米の社員が知る由もなく、
ただ社長から一言『雑巾と汚れてもいい服をもってこい』といわれれば持って来ざるを得ず、
何でこんな事をせにゃならんのだ、という新米に、諭すように小鳥は言うのだった。
ここは、飲食店の上からスタートしましたから。
もちろん、それだけが理由ではない。
ワンマン社長がわずか1代で自社ビルを建てるというサクセスストーリーが巷にないわけではないが、
それでも『自社ビルを建てる』というのは彼にしてみれば『一国一城の主になる』のと等しいのだろうと小鳥は思う。
昨日のスタッフミーティングを聞いていれば誰でもそう思う、
――いつも使っている職場を清潔に保とうではないか、諸君。
もうずいぶん昔、小鳥がまだ亜美真美や美希と同年代だったときに校長先生が言っていた言質と非常に似ていた。
もちろん、それだけが理由ではない。
来客の増えた765プロデュースとしては客人が通るような場所は清潔にしておかねばならない場所であるし、
そうでなくても『清潔』と言うのはイメージが大事なアイドルにしてみれば非常に重要な要素であるし、
おまけに以前リリース前CDの音源がライバル社にすっぱ抜かれる危機に陥ったという経験もあり、
社長は余り外部の人間を社内に入れたがらないのだった。
掃除くらい半日も頑張ればすぐ終わる、そのあとはオフにするから頑張ろうではないか――
社長のそんな言葉が、果たして建前なのか本音なのかは小鳥には分からなかったけれど。
それでも765プロデューススタッフは『まあ社長の事だししょうがねぇか』というテンションで掃除を始める。
ただいまの時間、朝11時12分。
11時開始の掃除であり、掃除では最初にほこりを落とさねばならない。
各人が持った叩きを手首のスナップを利かせて高所に掛けていき、あらかた埃が落ちたら次は箒がけだ。
就職先を間違えたんじゃないかというほど馬鹿らしい筋肉の事務員が
パソコンのケーブルとポスターサイズの紙束を持ち上げたとき、『ガサ』という音とともに突如としてソイツは動きを開始した。
馬鹿らしい筋肉から絹を裂くような悲鳴が聞こえ、小鳥は一瞬にして手元にあった漂白剤を手に取った。
古いスタッフは前後の差こそあるものの小鳥のような動作をし、
本来ならばオフのはずのところに仕事増やしやがってこの野郎、
と恨みつらみを過剰に満載した憎しみの塩素漂白剤をヤツに向かってぶちまけようとし、
漂白剤のラベルには実に垢抜けない絵柄のキャラクターが吹き出しまでつけてこう言っている。
『混ぜるな危険』。
上等である。古参のメンバーはまるで密林に隠れたゲリラ兵を見つけたパイロットのごとく、
有機リン酸系殺虫剤と塩素漂白剤を使って米空軍も真っ青な絨毯爆撃を開始する。 


どこかで「きゃー」という悲鳴を聞いた気がする。やけに野太い声だった。
小鳥たちがゲリラを殲滅して「1人いたら30人いると思え」の教えに従って
般若のような形相で枯葉剤を投下している丁度その瞬間、プロデューサーはレッスンルーム1の前にいた。
どうせここも掃除しなければならないし、頼れる先輩が向こうにいるなら自分の出る幕は事務室にはないという腹だった。
――――さっきの悲鳴が気にはなるが。
「どうしたのかね。はやくここもやってしまおう」
高木社長はそう言ってプロデューサーを中に誘おうとするが、正直言って悲鳴を上げたいのはこっちである。
汚れてもいい服をもってこい、という言葉の通りくたびれたジャージを持ってきたプロデューサーが見たものは
「頭に三角巾、胴体は割烹着、足には脛あて」という日本の伝統的なオカン・スイープスタイルをした高木順一郎の勇姿だった。
叫ぶか笑うか正気を疑うかの中でプロデューサーが選択したのは最後の一つで、
何か変なものでも食べたんですか、という問いに、掃除とはこうでなくては、というやり取りがあったのはほんの30分ほど前だ。
言われるままに中に入って四つのスイッチを全部入れた。
プロデューサーの手に握られているのは長さ1メートル20センチの中型T字箒で、社長の手に握られているのは叩きである。
社長が防音壁の上窓に実にソフトに叩き掛けをし、
プロデューサーはその間にコンソールのコードから電源プラグを引き抜いて埃を雑巾で拭き取る作業を開始する。
「そういえば、警備の遠藤君が『ずいぶん遅くまで千早君は練習しているんだね』と言われたぞ。昨日は何時までやっていたのかね?」
業者を呼ばない理由はこんなところにもあって、例えば今プロデューサーが拭いているコンソールは精密機械もいい所である。
とにかく無関係な部外者を入れたくない社長にとって見れば
「どこの馬の骨とも分からん奴にウチの機材を壊されたらたまらん」というオチはどこにでも適用された。
「終わったのは7時頃ですかね」
だが、「どこの馬の骨」という表現を使うなら、ひょっとしたら
「どこの馬の骨とも分からん奴がウチの大事なアイドルにツバを付けたら堪らん」と言う方が適当なような気もする。
古参のメンバーに数えられるプロデューサーではあったが、いまだに高木社長を図りあぐねている部分もあるにはあるのだ。
「そうかね。遠藤君のお孫さんが千早くんの大ファンらしくてね。『新曲はまだなのか』と遠藤君を突くそうだ」
全くありがたい話ではあるが、同時に「新曲はまだなのか」には社長の意見も含まれているように思えた。
そろそろそんな話も出てきていいだろうし、
最近全くボーカルレッスンをさせていない千早にしたらこれ以上フラストレーションが溜まるものもないだろう。
コードの埃を拭ききってコンソールに電源プラグを刺しなおし、
「新曲なら昨日上がりました。バラードですよ。…多分、千早ならすぐ歌えると思います」
「昨日かね」
「はい」
「残業かね」
「う、それはその、」
ため息が聞こえる。 


「…全く。残業申請をするなとは言わんが、君の残業時間は我が社でトップだよ。もう少し身体をいたわりたまえ」
高木順一郎は実にビックな社長であり、
並みの会社が『残業は手際が悪いから起こる事であって出来るなら残業をせずに帰れ』
と言うのがサービス残業を勧告する死刑宣告である一方、社長の言葉の節々には
『身体を壊さないように何とか十分に休養を取れ』と言う意図が見え隠れする。
高木社長がプロデューサーの残業申請を見た時間がもう少し早ければ、
あるいはプロデューサーは有無を言わさず今日は休ませられていたかもしれないのだ。
オカンスタイルで腰に手を当ててこちらを見る社長の様子はまさしく『ゴツいお母さん』のそれであり、
しかしどう見ても『お父さん』にしか見えないその風貌はやはり出来の悪いコスプレか何かに見えた。
「ありがとうございます。…でも、その、千早の調子も最近余りよくないようで、出来れば身体を動かしておきたいな、と」
「ふむ…。そうなのかね?」
原因は分かってるんですけどね、と一言置いた。二人とも会話こそしているものの、掃除をしているその動きには澱みがない。
ここにカメラが備え付けてあれば、まるで自律型掃除ロボットが会話しながら業務に精を出しているような様子が映るはずである。
「最近、ボーカルのレッスンをしてませんからね。そろそろ新曲を出さなきゃいけない時期ですし、
歌一本でやってきた千早がストレスを溜めこんで当然だとは思います。
…彼女は辛いと思いますが、でも今はAランクに上がるには必要な時期なんです」
『VISUAL―MASTER』は、その重きをヴィジュアルに置いている。
となれば、当然ヴィジュアル中心の採点にならざるを得ず、こちらとしてはもちろん対策を講じなければならないことは目に見えていた。
とりわけデビューから歌一本で売ってきた『如月千早』はヴィジュアルイメージ増幅が急務で、
もちろん千早本人にストレスがたまらないはずはないのだ。
「…そうかね。それで、昨日の残業か」
もちろん、そんな事は分かりきっていたのだ。少なくとも出来る対策はしなければならず、
昨夜爆発してしまった千早に対してプロデューサーができる事と言えば、新曲を何とか卸す程度しかなかった。
「前から思っていたのだがね。君はあまり仕事とプライベートを分けられないようだ。
そういう時期だということを話して分からない千早くんではないだろう?」
もちろん。
千早は頭が回る。
回りすぎて、プロデューサーがめまいを起こすほど。
「ならば、なぜ君がそこまで急いで新曲を卸す必要があったのかね?」
いつの間にか、二人の手は止まっていた。
レッスンルーム1のフロントで、二人の男が顔を合わせてお互いを見合う。
そのときの表情を、高木順一郎は後生忘れる事はないだろうと思った。

プロデューサーは、まるでボロボロに擦り切れた手帳のような表情を浮かべ、何かを求めるように上を向き、
穴だらけの防音壁からほんの少しの勇気をもらったように、
こう答えた。

「…俺ら、家族みたいなもんじゃないですか」

あるいは、それは単なる呟きだったのかもしれないが。

掃除の終わったレッスンルーム1と掃除が始まる前のレッスンルーム1を比べてどこがどう違うと言うのは難しい。
そもそも余り汚れていないし、
大きな違いと言えば椅子がきちんと並んでいるのと窓サッシに埃がかぶっていないのとコンソールのプラグがきれいになっているくらい。
そんなレッスンルーム1のピアノの前で、プロデューサーは鞄から大事そうに大きなファイルを取り出した。
楽譜である。昨日の晩3時間とその前の週を合わせて、気の遠くなるような時間の集大成であった。
譜面台に楽譜とテスト版CDを載せ、殴り書きのような汚い字で『千早へ』と書いて貼り付ける。
これでよし。
「楽譜はここにおいておくのかね?」
何をするのか見ていてやろう、とばかりにニヤニヤしながらプロデューサーを見ていた社長が、何だつまらない、と言う目でそう言った。
苦笑する、
「どうせ今日も自主練習するんでしょうから。全く休日だっていうのに」
君がそれを言うかね、と言う高木社長とともに、プロデューサーは楽譜を残してレッスンルーム1を後にする。 


遅く帰ろうが早く帰ろうが、次の日の朝と言うものは世界共通でやってくる。
フレッシュな空気はどこか心地よいが、今日に限っては疎ましかった。
結局帰れたのは20時も回ろうかと言う頃だったが、
相変わらず両親は白地黒枠の書類に判を押す押さないで揉めていたし、
『家族』の中でもっとも遅く目が覚めるのはいつも決まって千早だった。
一晩考えた挙句、『VISUAL―MASTER』というオーディションを勝ち抜かなくては目標であるAランクへ達する事は不可能であり、
従って何とかして合格を勝ち取るための作戦を立てていたプロデューサーの意見は全く正当なものであり、
と言う事は自分に非があってプロデューサーにせめて
『すみませんでした』と言うのはスジである、と言うところまでは考えがまとまった。
それでも、あの時感じた強烈な『ここは自分の居場所ではない』という感情は、思い出すたびに千早の胸をじりじりと蝕んでいる。
歌一本でやってきた。
他のものは全部捨てた。
歌を否定された事は、どうしようもなく『ここは君が息をしていい場所じゃない』と言われた事に等しいと感じた。
寝起き特有のものとは違う気分の悪さを無理やり押し込んでリビングに出ると、
実にきれいで中身のない字で、お昼はしっかり食べるように、という有り難いご高説と樋口一葉が一枚置いてあった。
ため息。
結局、居場所はここでもないのだと思った。
居場所がないなら、どこに居てもいいのだと思った。
泣きそうになった自分を一括して顔を洗って歯を磨いて髪をとかして顔を作った。
買い置きしてある菓子パンをひとかけらだけ口に含み、どうせ休日なのだから、
どうせ誰もいないであろうレッスンルーム1に行こうと決める。樋口一葉を財布に収めて家を出る。
一度だけ後ろを見る、現在時刻は10:45。
あとはもう、振り返らなかった。 


「おはようございます」と言おうとして、千早はその戦場を見た。
どっ散らかった事務所のあちらこちらからは
『ギャー!』とか『向こうに行った!』とか『逃がすなー!』とか『飛んだー!』という
叫び声と旧ユーゴスラビアな風景が展開されており、それでもなぜか楽しそうなスタッフの笑顔が刺さり、千早は早々に退散した。
どうせタイムカードを切るつもりもなかったし、この場にいる自分に違和感を覚えたと言うのも大きい。
自分の居場所は、ここではないはずなのに。
事務所から3階降りて右に曲がってレッスンルーム1に行こうと思った。

事務所から3階降りて右に曲がったところで、千早は不思議なものを見た。
『使用中』に灯がついたレッスンルーム1の中では誰かが何かをやっていて、
しまりきっていないドアから『誰か』が高木社長と誰かで『何か』が掃除のようだと見当をつけた。
もう一人は誰だろう、と推測をつけるが、防音壁が完全な死角になっていて見えない。
「…全く。残業申請をするなとは言わんが、君の残業時間は我が社でトップだよ。もう少し身体をいたわりたまえ」
高木社長のそんな声が聞こえた。戸の隙間から見える高木社長はなぜか全身白尽くめで、千早の目からはお化けか何かのように見える。
どうやら社長は叩きか何かをかけているようだ。
今日はオフのはずなのに。
誰もいない、レッスンルーム1のはずなのに。
「ありがとうございます。…でも、その、千早の調子も最近余りよくないようで、出来れば身体を動かしておきたいな、と」
「ふむ…。そうなのかね?」
息を呑んだ。
プロデューサーが、そこにいた。
唐突に、あの時のプロデューサーの言葉がよみがえった。
――次のオーディションはボーカルの配点高くないしな。
帰ろうと思う。そう思って、ふと千早の顔に投げやりな笑みが浮かんだ。
帰るってどこへ。
居場所なんてない。
脳裏に浮かぶ、白地に黒枠の無常なあの書類、家庭裁判所に提出する書類に納得した表情で認印を押す両親、
差し出された樋口一葉のどうしようもない無表情。
歌一本でやってきて、歌で居場所を作るんだと息巻いて、着いたところはこんなところか。
自嘲する、所詮そんなものなのだ。無理に意地を張ってプロデューサーの言う事も聞かず、
『居たい場所』すらなくしてしまった、そんな自分がいるべき場所などどこにもないのだ。
その時、声を聞いた。

「最近、ボーカルのレッスンをしてませんからね。そろそろ新曲を出さなきゃいけない時期ですし、
歌一本でやってきた千早がストレスを溜めこんで当然だとは思います。
…彼女は辛いと思いますが、でも今はAランクに上がるには必要な時期なんです」

『居たい場所』などなくしてしまったと思っていたのに。
それでも、プロデューサーはレッスンルーム1の薄明かりの中にいて、そう言った。
理性は言うのだ、だって仕方がないじゃない、「VISUAL-MASTER」はそういうオーディションなんだから。
合格しなければ、Aランクには上がれないんだから。
居場所が作れないんだから。

「…そうかね。それで、昨日の残業か。前から思っていたのだがね。
君はあまり仕事とプライベートを分けられないようだ。そういう時期だということを話して分からない千早くんではないだろう?」
会話はなおも続く。今すぐプロデューサーのところに行きたい、昨日の死刑モノの非礼を謝らなければならない、
そう思っていた千早の耳に、まるで判決文を読み上げる裁判官のような高木社長の声が聞こえた。
「ならば、なぜ君がそこまで急いで新曲を卸す必要があったのかね?」

息を呑んだ。
答えを、待った。
やがて、永遠とも思えるわずかな時間の後、絞り出すような声が聞こえた。

「…俺ら、家族みたいなもんじゃないですか」

どうしようもなく青臭く、そう言い切るにはどうしようもなくくたびれた声だった。
思い出す、あの夏の日の記念撮影、ゾンビのようなスタッフと華やいで笑う同僚たちの声、
くたびれ果ててなおカメラに笑いかけるプロデューサーと、救い難いほど仏長面をした自分。
家族みたいなもんじゃないですか。
つまり、レッスンルーム1にいる人にとって見れば、アイドルもスタッフも家族というくくりにいるわけだ。
『どうしようもねぇなぁ』と言いながら、苦笑いの範囲を拡大させて時に笑いあい、時に怒りながら、
どうしようもない家族の夢に向かって邁進しているわけだ。
どうしようもなく嬉しかった。
『居場所』が、ここに、確かにあった。 


上手い具合に死角に隠れ、プロデューサーには見つからずに済んだと思う。
家族が掃除をしていた現場を見てみたいという、普段の千早からは考えられない好奇心を持ってレッスンルーム1に入り、
下段の右を除いた全てのスイッチにもう一度息を吹き込んだ。
掃除できてないな、と言うのが第一印象だった。
掃除する前のレッスンルーム1と掃除したあとのレッスンルーム1を比較するのは難しい。
千早が見つけた掃除の痕跡と言えば、コンソールの電源ケーブル周りがきれいになっているのと、
椅子がきちんと並べられているのと、窓サッシの埃が
気づいた。ピアノの譜面台に何かが載っている。
恐る恐る防音壁を開け、慎重にピアノに近づく。
まるで不発弾を見つけた爆発物処理班のような手つきで『何か』を手に取ると、
それには殴り書きのような字で『千早へ』とだけ書いてあった。
「…新曲」
言葉を覚えたての幼児の如く一単語だけを口にすると、千早はやはり恐る恐る表紙をめくった。
めくったと同時に落ちてくるCDに気付き、あわててかがんでCDを拾う。
CDには『テスト版』とだけ書かれており、裏返したCDのラインは空き具合を教えてくれた。
改めて表紙をめくる。
「…これが、新曲ですか」
瞬間、千早の視界が水に溶かしたようにひどくぼやけた。
新曲のタイトルは、『青い鳥』である。 


警備の遠藤周蔵(58)は、だって仕方ないじゃん来たかったんだもの、といってむくれる孫に狼狽していた。
今日に限って保育園は休みであり、息子夫婦は共働きで、ばあちゃんに預ければいいじゃないか、
と言う非常手段は検査のために入院していた。
仕方がない、という気はしなくもない。
孫はと言えば憧れのアイドルに会えるかもしれないと言う期待に胸を膨らませており、
5分に1度ねーおじーちゃん弥生ちゃんとか千早ちゃんに会えないのー会えないのーと繰り返していた。
目に入れても痛くないほど可愛い孫ではあるがさすがに5分に1度が1時間も続くとたまらず、正直にゲロする事に決めた。
「今日はお休みの日なんだ。だから残念だけど千早ちゃんには会えないんだよ」
「えーっ!?」
約束が違うと怒る孫ではあったが、そもそもそんな約束などしていない。
しかし、こうなってしまった孫はもはや天皇陛下よりも強硬であり、
じゃぁ今度サインを貰って来てあげるから、という口からでまかせの約束をしようとし、
あるいは、孫のほうが早く気付いていたかもしれない。
「…? 何か、聞こえないかい?」
そう言った時、すでに孫は口を噤み、耳の後ろに手を当ててダンボになっていた。
歌が聞こえる。それも、とびきり上等の。
その歌声は朗々と歌詞を歌い、伸びやかな声質はあらゆるものを払拭するかのごとく響き渡る。
「…ちーちゃんだ! ちーちゃんの歌が聞こえる!」
そして、孫は駆け出した。
だが、それよりも先に、遠藤もまた席から腰を浮かしていた。

戦後協定など上手く行くはずがなかった。
そもそも種が違うし、双方の主張は全くといっていいほどかみ合わなかった。
向こうは自由と権利を主張し、こちらは領土侵犯についての弁明を求めていたのだ。
釈明の機会は与えられず、爆撃によって丸裸になった事務の床は塩素系漂白剤によって色が抜かれて白くなり、
これで奇形児が生まれたら俺らも戦犯になるのかな、と誰もが思う。
一方的な駆逐を除けば、掃除は万事滞りなく進んだ。
事務所の床にはチリ一つ落ちていないし、書類の整頓具合と言えば設備の整った図書館のようだ。
誰もがくたくたに疲弊し、誰もが勝利に酔っていた。
乾杯はコーヒーであり、付け合せはするめでもステーキでもなく余り物のお茶菓子であった。
「こ、小鳥さん。毎年こんなになってるんですか?」
新米スタッフのそんなボヤキに、小鳥はほんの少しだけ遠い目をする。
「そうですね…。でも、もう事務所の1階は飲食店じゃないですから、ずいぶん大人しい方ですよ?」
うへぇマジかよ、と言う顔をして、新米は実に苦そうにコーヒーを飲んだ。
それでも、嚥下した後の表情には疲労よりも満足感のほうが色濃く出ており、
「でも、楽しいですね!」
と言う意見には小鳥も賛成なのだった。
ふと、「楽しいですね」を最後に、声が途切れた。
新米が周りを見渡すと、それぞれが思い思いの方向を実にまじめな表情で見ている。
ひょっとしてNGワードでも喋ってしまったのか、新米はそう思い、
「あの、」
「静かに!」
小さな声で注意され、新米もようやく戦勝国を黙らせる『何か』に気付いた。
歌が聞こえる。それも、とびきり上等の。
ある時は情緒にあふれ、またある時は決意に溢れ、生きるものを鼓舞せずに入られない歌。
気がつけば、戦勝国は国を挙げて移動を開始したのだった。

目指すは警備室から2階上がって左に曲がり、
目指すは事務室から3階降りて右に曲がり、
レッスンルーム1だ。 


30分間本気でCDを聞いた。
曲の構成は大体分かった。表拍メインの曲ではあるが、ローピッチからいきなりハイピッチに上がる構成は正直に言って難しい。
それでも、千早は恐れなかった。基調音をピアノから拾って簡単な発声を済ませ、CDの2番を掛けた。
ピアノが弾けないプロデューサーが入れてくれた、ボーカルなしのカラオケ版音源。
胸が高鳴る。武者震いが全身を伝わる。
自分の歌が、『居場所』に響き渡る。
このとき、千早はやはり気付いていなかった。防音壁がほんの少しだけ開いている。
これでは声が外にダダ漏れになってしまうし、BGMも外に筒抜けだ。
それでも、千早はやはり気付かなかった。だから、そのままスタートしてしまった。
『青い鳥』を歌う。『居場所』を捜し求めた2分間が、ついにレッスンルーム1で花開く。

給湯室の横の自販機コーナーで、プロデューサーが、何だやっぱり来てたのか、と一人ごちた。

実に心地よい2分間が過ぎて千早が横を見ると、ものすごい勢いでスタッフが勢ぞろいしていた。
皆疲れきったような表情で、それでも口元には笑みがあり、皆一様に何かを待っている。
いまさらながら気付く。彼らは、家族なのだ。
であれば、言うべき事は一つだった。
「…ありがとうございました!」
聞いてくれて。
ここにいてくれて。
『居場所』を、くれて。
そしてその瞬間、レッスンルーム1を爆心地にして、まるでクラッカーが弾けたかのような拍手が沸き起こった。
歓喜の絶叫が沸き起こり、手だけでは感動を表現しきれない新米たちは片足で床を叩き出し、
本来ならばいるはずのない小さな子供が千早に抱きつく。

自分には歌しかない。そう思って歌ってきた。
いつしか、歌を『自分の居場所』を作るために使ってきた。
大好きな歌なら、他に負けないから。
大好きな歌なら、自分が居ていい場所があるから。
そうして、私は『居場所』を手に入れた。
でも、それは歌だけで出来たものではなくて、それは――― 


その姿を、千早は給湯室横の自販機コーナーで見た。
全く似合っていないジャージ姿が新鮮に感じる。右手でプルタブをあけてコーヒーを半口分だけ飲み、
プロデューサーはこちらを見てこう言った。
「よう」
「こんなところにいたんですか」
「おう。仕事上がりのコーヒーは美味くてね」
そういうと、おもむろにプロデューサーはベンダーに120円を入れて紅茶のボタンをポチリと押した。
ガタンという音がして紅茶が吐き出され、プロデューサーはよっこらしょと言ってスチール缶を拾い上げる。
「ありがとうございます」
「おう」
しばし無言で紅茶を飲んだ。いくら何でもあれっぽっちの発声練習でいきなり歌うんじゃなかったと思う。喉が少し痛い。
「…あの、プロデューサー」
半分ほど飲んだところで、千早はとうとう顔を上げた。
昨日の死刑モノの非礼を謝らなければならない、そう思うが、上手く言葉が出てこない。
それでも。
「昨日は、すみませんでした」
深々と頭を下げた。頭の後ろで、プロデューサーの狼狽する様子が手に取るようにわかる。
「へ? ちょっと待て、何かされたっけ俺?」
とりあえず頭上げてくれ、と言われ、顔を上げたその先には、やはり予想通り狼狽した表情のプロデューサーがいた。
ちょっとだけ笑う。
「いえ、気にされていないなら、なんでもないんです」
「そうか?」
それならいいや、と単純にプロデューサー。お掃除お疲れ様でした、と言おうとして、それ以上に言わなければならないことに気付く。
「オーディション、日曜日ですね」
「え? ああ、そうだね」
『どうしようもねぇなぁ』と言いながら、苦笑いの範囲を拡大させて時に笑いあい、時に怒りながら、
どうしようもない家族の夢に向かって邁進しているのだ。
言わなければいけないことは、伝えなければならないことは、決して『お疲れ様です』ではないのだ。
「私、頑張ります。頑張りますから、」
だって、家族なんだから。
「よろしくお願いします」
だって、『居場所』なんだから。 


あれからすぐに、千早はAランクになった。
相変わらず多忙な日々を送り、いまやテレビにラジオにと引っ張りダコになった千早はもはや敵なしで、
彼女のテレビはまるで昇竜の如く視聴率を上げ、出演依頼は倍以上に増えた。
それでも、隙あらば彼女はある写真を覗いており、
まるで子を見る母親の如く自愛に満ちた表情でその写真を懐にしまうのが常である。
彼女自身はその写真を人に見せるのを嫌がるが、
もし見たければ765プロデュースの彼女の担当プロデューサーの机に同じ写真が飾ってある。
記念撮影をしよう、といったのは、まるで何の変哲もない日曜日で、
所属アイドルは全員そろっていて、朝ゆえに別段誰も疲れておらず、
素直なアイドルや女性スタッフは「いいですね。やろうやろう!」とノリノリで、
やはり男性スタッフは「頭にボウフラでも湧いたんじゃねぇかコイツ」という目で社長を見て、あわてて日付を確認する。
給料日前だった。
そんなわけで、記念撮影は滞りなく進行した。
プロデューサーが備品の三脚にケツを掘られた寿命間近の社長のカメラのタイマーをセットする。
あの頃のゾンビの群にダッシュで戻り、若干蘇生に成功したフランケンシュタインの面持ちでお勤めを待ち、
直後に無意味にフラッシュが焚かれた。

写真の前面には女性陣が華やかに彩り、その真ん中にはスーツ姿の社長が笑い、
後ろにはフランケンシュタインが列を作ってぎこちなく笑い、
そして、如月千早は女性陣のなかで、実に彼女らしく笑っている。 



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