鬼の霍乱

作:510

 鬼の霍乱、と言う言葉がある。
 言うまでもなく、普段丈夫な人が突然病気に罹る事を指す言葉なのだが、この「霍乱」というのは、
日射病や暑気当りの事を指すのだそうだ。
 ……まあ取り敢えず、そんな事はどうでも良い事で。

 朝。ごく普通のワンルームマンション、その一室。平たく言えば、俺の部屋。
 携帯のアラームにセットした「おはよう!朝ごはん」が、今日も一日の始まりを告げる。
 布団から携帯に手を伸ばしてアラームを切り、目を開く。
 体を起こして、さあ今日もいつものように頑張ろう……と言いたかったのだが。
「げほっ、ごほっ!?」
 ……咳に痰。喉の痛み。鼻水。全身が気だるい。体温を計れば38.5度。
体温計をしまう前に振って水銀を下げ……ようとして、デジタル表示なのを思い出し、電源スイッチを押す。
「ふえっきしょいっ!」
 お約束のように、くしゃみも出てきた。
 ティッシュを手に取り、ちーん、と洟をかむ。
 ……これはもう、間違いないな。
「あ゛〜……風邪引いた」
 ティッシュをくるくると丸め、ゴミ箱に向かって放り投げる。外した。
「……」
 ……いいや、もう。
 若干不貞腐れ気味に横になり、布団を被……ろうとして、ふと我に返って結局起き上がった。
 携帯電話とメモ帳を取り、ついでにティッシュを捨てなおす。
 布団の上に胡坐を組んで、スケジュール確認……よかった、今日はオーディションも営業も入れてない。
どうやら被害は最小限に済みそうだ。


【大事をとって休む】

【無理してでも出社する】

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