THE GY@KUTEN S@IBAN

作:ユルカ


―某月某日・765プロダクション・会議室


今日の765プロはいつもと雰囲気が違う。それもそのはず。

なんと、候補生同士のトラブルがあり、その問題を内部で裁判として扱おうというのだ。

故に今日は765プロ関係者以外の立ち入りを禁止している。


事件の概要だが、訴えを起こしたのは如月 千早(15)。

彼女は同じ765プロの双海 亜美(12)、双海 真美(12)に、名誉毀損で訴えると言った。

……と言っても、きちんと謝って欲しいと言うだけの要求だが、

「ホントの事言って何が悪いの?」という双海姉妹の一言で、こんな騒ぎになってしまったのだ。

その、ホントの事とは……「千早お姉ちゃんって『ボン・キュッ・ボン』から遠いよねー」

という、デリカシーのない一言。

普段の千早なら聞き流すところだろうが……これまでの鬱憤がたまっていたのか、

本気で怒ってしまった。


……こうして、765プロ初の裁判が行われる事になったのである……。

今回のメンバーを紹介しておこう。
裁判長:高木 順一郎
弁護士:秋月 律子
 検事:菊地 真
原告人:如月 千早
被告人:双海 亜美・双海 真美
 係官:音無 小鳥
 係官:プロデューサー
傍観者:その他大勢

と、こんな面子になっているので、そろそろ主役の弁護士さんに代わるとしますか……。 


「まったく……どうして私が弁護士役になるかなぁ」

「律っちゃん、大丈夫?」

「真美達、死刑になるの?」

「コラコラ。そんな物騒な事言わないの」


しかし……今回の事は亜美と真美が全面的に悪い気がする。

どう弁護したものやら。


「そろそろ時間ね。ふざけない事、分かった?」

「「律っちゃん、がんばれ〜!」」


はぁ……。


―某月某日午前10時01分・765プロダクション・会議室


カンッ!

社長……もとい、裁判長の木槌がなる。 


「ではこれより、被告人:双海 亜美、双海 真美の裁判を始めます」

「検察側、準備完了してます」

「弁護側、準備できてます」

「では、菊地君。冒頭弁論を」

「今回の件は知ってのとおり、亜美と真美が、千早に対し本人の意思を無視した発言によるものです。
 検察側は、亜美と真美に謝罪してもらいます。そりゃもう、許されるまでね!」


ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ……。


「律子、こんな事で律子をやり込めるときが来るなんて、思ってもみなかったよ」

「……!」

「ではまずはじめに、被告人である亜美と真美に、証言していただきましょうか」

「音無君、二人を証言台に」


亜美と真美の二人が証言台に立つ。


「じゃ、証言してもらうよ。一体何故、問題の発言を言ってしまったのか。」

「わかったよ、まこちん」

「……真剣な場だからまこちんはやめて……」


証言:問題の発言
「ロッカーで着替えている時に〜、あずさお姉ちゃんと千早お姉ちゃんに会ったんだ。
 つい二人の体見比べちゃって〜、『ボン・キュッ・ボン』から遠いよねーって、言っちゃって……。
 あずさお姉ちゃんと比べたのは悪かったと思うけど〜、本当の事言ったらいけないの?」


「……亜美君、真美君、君達には……」

「裁判長、お待ちください。」

「何だね、律子君?」

「判決には早すぎます。尋問がまだですから」

「では、行ってくれたまえ」


あまりの発言に社長はすぐにでも有罪の烙印を押すつもりだ。

何とかしなければ…。 


「二人は『ボン・キュッ・ボン』って意味、ちゃんと分かってるわよね?」

「もっちろ〜ん! バストがあって、ウエストは細くて、お尻も出てる人のことだよね。」

「……で、それが何だって言うんだい? 律子?」

「出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込む。女性の理想的な体よね。
 でもね……あずささんにそれは一部当てはまらないのよ!!」


ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ……。


「……ちょっと待って律子、おかしいんじゃないのか?
 あずささんは、候補生の中で一番胸が大きいんだぞ!」

「胸が大きい=『ボン・キュッ・ボン』、は時に間違っているのよ!」

「それはどういうことかな? 律子君?」

「これをご覧ください。候補生全員の履歴書から3サイズだけを抜き出したものです。」





「ご覧のとおりです。あずささんは候補生の中でウエストが一番太い!」

「まぁ〜。そうだったのですか〜」

「で、でも! 亜美と真美はあずささんと千早を見比べて、言ったんだぞ!」

「……じゃあ聞くけど。この事件の傍観者に千早と同じサイズのバストなのに、
 訴えを起こしてない人が居るのをご存知かしら?」

「え!?」

「そんな人がいるのですか!? 律子!」

「……ええ。……やよいよ。」

「わ、わたしですか、うっう〜! 褒められました〜!」


褒めてないって…。


「異議あり!! ……律子。問題をうまくすり替えたつもりだろうけど、
 亜美と真美が言った事については、もう変えられないんだぞ!」


真、ずいぶんとはりきってるわねぇ……。


「確かに、言った事の事実を変えることは出来ないでしょうね。」

「ちょ、ちょっと律っちゃん!?」

「……でも、千早に謝る必要性がないと考えるならどうかしら?」 


ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ……。


「……ちょっと待てよ、律子。それはつまり、千早よりも『ボン・キュッ・ボン』から遠い候補生がいるのか?
 それは、一体誰なんだ!?」


……ごめんね。

私は、人差し指をその人物に突きつけた。


「あなたよ…………真」

「ええええええ!? ボク!?」

「そう。1位に10点、2位に9点と……点数をつけていくと、ああウェストは細い方が1位ね。
 1番『ボン・キュッ・ボン』なのは美希」

「あふぅ。へぇ、そうなんだ」

「2番があずささんで、3番が私と雪歩」

「わ、わたしが、私が3位なんて、恥ずかしくて穴掘って埋まっていたいです〜!」

「そして、9位が千早、10位が真、あなたなのよ。
 つまり……亜美と真美が謝る相手は千早じゃなくて真なのよ!!」

「ボ、ボクが……一番理想系から遠い……きゅう」


真はショックで気絶してしまった。

よほど衝撃的だったらしいわね……あとで謝っておこうかしら。


「千早……女の価値って、胸のサイズだけで決まるわけじゃないわ。」

「……でも、年相応の胸がないと……」

「千早は、年相応の胸がないと歌えないの?」

「……そ、それは……」

「千早は胸の大きさの換わりに、歌唱力をもらったのよ。そう考えれば前向きに考えられるんじゃない?」

「……そう、ですね……」


千早はなんとか納得してくれたみたいだけど……
真をどうやって説得するか、私は悩む事になる。


でもさ、完璧な人間なんていないのよ?

そう、思わないですか? プロデューサー。


(了) 



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