ルーチンワークに不満はないが

作:522

シーン1:奇妙な流行(はやり)
 
 アイドルのプロデューサーという仕事を始めてしばらくたつのだが、
当事者たる俺にさえ首を捻ってしまうような状況に出会ってしまうことがこの業界ではよくある。
例えば……今がそうだったりする。というより、今の状況はそれすら越えて笑うしかない。
 
 この仕事に携わっていると、楽曲の使用許可願がくる、ということがたまにある。
ウチの事務所のアイドルが歌う曲が割といじりやすい曲調で、アニメとかのテーマ曲になっていることが多いせいなんだろ、
とは顔馴染みの作曲家の弁だ。いや、私はこの手の知識はあまり持ち合わせていないから詳しくはよく分からないのだが。
 
 ともかく、許可願を出されればよほどの事がなければそうむげに断ることはない。
というのも、こうして楽曲が使用されることで、新たな市場を開拓出来る可能性もあるし、
営利目的で使用するときは使用料を取れるから、大きい損失を被ることはない……まあ、後者が主な理由なんだけどさ。
 そんなこんなで、数々の許可を出してきたのだが、最近、奇妙な傾向が出てきていた。
 765プロダクションは、割と所属アイドル間の仲が良い。
だから、誰かのCDにサプライズとして他のアイドルが参加してるなんてのはよくある話で。
 それが高じて、つい先日、「Master Box」という、765プロの集大成ともいうべきアルバムを出した。
売り上げは上々で、ヒットチャートの最前線を独走中らしい。ところが、売れるにつれ、ある現象が起き始めた。
あるアイドルの曲に楽曲使用許可願が集中し出したのだ。
しかもそのアイドルが予想の斜め上を行くやつだったから、あの時は頭を抱えたものだ。
 ……そう、他でもない双海亜美の曲だ。
 最近、なぜここまでの事態になったのかを探ってみていたのだが……
 まあ、なんというかね、
 とかちつくされてしまったわけだよ。
しかし、凄いリミックスである。下手なプロの曲作りよりよっぽどましな音作りをしているし。
 それにしても、こうして改めて聞いてみると、亜美がこの手の人気を集めてしまうのが分かってしまうような気がしてならない。
アミフルなるあだ名そのままに脳内に激しく響いてくる。
まだあっちの世界に行きたくはないが、最近の調査のせいで距離は無駄に縮まってしまった気がする。 


 それにしても、(こういうのは禁句なのかもしれないが)これをもっと外で発揮する気はないのか、と思ってしまう。
声を大にして言いたい。というか言ってしまった。小鳥さんに怪訝そうな目で見られてしまい非常に恥ずかしい。
また冥王星にでも行ってしまおうか。まあ、行かないけど。
 まあ、趣味でやってるのかどうなのかは感知するところではないが、
これでまた売り上げが伸びればこちらとしても歓迎しようとは思う。今後も期待したい。
……個人的にも、こいつは疲れた体に潤いをくれるしね。亜美には悪いが。
 それにしても、天国系に灼熱系か……
 
終わり 



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