ホームシック

作:ファル

ここは某所にある765プロ
その玄関先に、3人の人影がある。

「あれに乗りますよ」

今喋ったのが765プロに勤めるプロデューサーである。

「大きいですね…」

「こんなの乗るの初めてです!」

今大きいといったのが三浦あずさ、そしてもう一人が高槻やよい
2人とも765プロのアイドルだ。

「それじゃ、出発するんで乗ってください」

この日は「本州にある有名な温泉地を巡る旅」という番組の
長期ロケでその初日だった。ちなみに期間は5日間である。
チャーターした大型車で都心を抜けて、落ち着いた雰囲気のところへ入る
出発から数時間後…。 


「ここですよ、最初のロケ地は」

「何か…落ち着いたものを感じますね」

「空気がおいしいです…」

ロケ地に着いた3人は早速ロケを開始した
(テレビ局側が現地でスタンバイしていたため)
順調にロケを終えて1日目は終わった

午後10時30分…

ここはあずさとやよいの部屋、ロケ中は2人で一部屋となっている
(無論Pは別室)

「ロケ…楽しかったですね、あずささん」

「そうね…毎日でもここに居たい…」

こうして夜は更けていった

翌日、次の場所へ移動するため、8時30分に当地を出て次の場所へと向かった
そうして着いたのは、田舎を彷彿させる景色だった(実際に過疎地です)

「次の場所は温泉と旅館が別になっています、だからロケは温泉だけです」

「うふふ…ここも気持ちいいわね」

「そうですね、どんなものがあるのかな…」

そうして2日目のロケも無事に終わり旅館へと向かった
(場所は「はやしや旅館」)

その日の夜…

「あと3日で、どこへ行くのかしら…気にならない?やよいちゃん」

「残った3日もいいところ行ければ、それで良いです、弟たちも連れて来たかったなぁ」

こうして2日目の夜は終わった、だが事件は次の日に起きた

3日目、3人は長野へ移動してロケをすることになっていた、何でも有名なのは
露天風呂らしい…

「着きましたね…」

「ここも落ち着きがあるところですね、プロデューサーさん」

「…………」

「やよいちゃん?どうかしたの?」

「え?…あぁ…なんでもないです!」

この日はやよいの様子が変だったが、何とかロケを終えた
しかしその日の深夜… 


「あぁぁ…夜中にトイレに行きたくなるなんて久しぶりだわ」

あずさが深夜トイレから戻って部屋に入ると…

「うぇぇっ…ぐずっ…あぁっ…」

「どうしたの!やよいちゃん!」

あずさはやよいのそばに詰め寄って軽く抱いた

「帰りたいよぉ…お母さん…」

「あらら…ホームシックね」

その後やよいが泣き止んだのであずさは事情を聞いた

「やよいちゃん、どうしたの?急に泣き出して…」

「家に帰りたくなって…家の事思い出したら寂しくなって…お母さん」

その後の話で、自分は長女なので人に頼るということが出来なかった
家を離れて自分は孤独になったのだと思ったらしい

「やよいちゃん、そういうのをホームシックって言うのよ」

「ホームシック?」

「遠いところから家に帰りたいって思うことよ」

「でも、このままじゃ迷惑がかかっちゃうし…」

「やよいちゃん私でよければ、代わりになるわよ」

「えっ?」

「良かったら、私のこと、「お母さん」って思ってくれても良いんだけど…」

「良いんですか?あずささんの事「お母さん」って呼んでも…」

「ええ」

やよいは涙目になりながらあずさに抱きついて叫んだ

「お母さん!」

やよいは、今まで押さえてきたものを全てあずさにぶつけるようにして泣いた
あずさもそれを受け止めるように、自分の胸の中で泣きじゃくっているやよいを
髪を優しく撫でながら見ていた 


「お母さん…お母さぁん…」

「やよいちゃん…」

ひとまずやよいは落ち着いた、だが、離れようとはしない
あずさに甘えたいのだろう…
あずさも離そうとはせずただやよいに身を任せた
ふと、やよいが口を開いた

「お母さん」

「何?」

「その…図々しいと思いますけど…膝枕してくれませんか」

「うふふ…良いわよ」

「良いんですか?、じゃあ…」

やよいはあずさの胸にうずめていた顔をあずさの膝の上に移した

「お母さん…」

「いい子いい子…」

あずさはやよいの頭を撫でた、それに反応するようにやよいは眠りに着いた
それと同時にあずさも眠った

それからの2日間はやよいは調子を戻してロケも滞りなく進められ、大成功した
しかし3日目の出来事については2人だけの秘密であり同時に
あずさがあの時ああいったことをしなかったら…それは誰にも分からない 


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