勝負の世界

作:ユルカ

勝負の世界は厳しい。
笑う者がいれば、必ず泣く者がいる。

これは、ある勝負から
別の勝負の観点を見出せたある双子のお話……。


「う〜ん、こっちじゃないなぁ?」

「え〜と、こっち……でもないなぁ?」

「何をなさってるんですか? お二人とも」

「「あ、ピヨちゃん!」」


765プロダクション……
なかなかに大きなこの事務所に所属しているアイドル、双海亜美。
彼女は、二人一役でアイドルをしている。
双海亜美と双海真美……二人で双海亜美を演じているのだ。
そんな彼女……いや、彼女達は今日オフのはずなのに、事務所にいた。

彼女たちに声をかけたのは、この事務所の事務員:音無小鳥である。
小鳥を亜美・真美は「ピヨちゃん」と呼んでいる。


「ピヨちゃん、これテレビと繋げられる?」

「これは……Wiiですか……なんでこんなものを?」

「えへへへ。真美たちがアイドルとして活躍してるから、
 じゃじゃーん! ニンテンドーDSLiteと一緒に買ってもらったんだ!」

「……で、お二人は何故ここでWiiをやろうとしているのですか?」

「実はね、DSLiteは2台買ってもらったんだ。バージョン違いの同じソフトも」


そのソフトは、大人気のゲームソフトで、
出てくるモンスターを戦わせるRPGである。


「で、ニックネームをつけることができるんだけど。
 みんなの名前をつけて、真美と戦ってみることにしたの」

「そうそう。で、普通にやるんじゃ面白くないから、Wiiでやることにしたんだ〜」

「へぇ、それは面白そうね」

「!?」


その声の主は反射で光る眼鏡と、それと同じくらいの眼光で亜美たちを睨んでいた。


「律っちゃん……」

「私だけじゃないわ。ほかの皆もよ。意外と野次馬なのよねー。私もだけどさ」


秋月律子。
亜美や真美と同じくアイドルとして活動している、眼鏡の努力家。


「じゃあ、皆で見ましょうか」


と、小鳥の一言で、アイドル達が見守る中、亜美と真美の勝負は始まった…。 


「なーんか、調子狂うなぁ……」

「ま、観客だと思えば……」


『さーて、お二人はいったいどういったバトルを展開するのでしょうか?』


なぜか、小鳥がマイクを握って実況している。

ノリの良い人だ。


『さーて、まずは亜美ちゃんが「いおりん」と名のつけられた「ミミロップ」!
 対する真美ちゃんは、「まみ」と名づけられた「マイナン」です!』

「ちょっと! 私あんなのなの!?」


いきなり反論したのは、亜美・真美に「いおりん」と呼ばれている、「水瀬伊織」。


『さぁ、お互い最初の指示は!?』

無視して小鳥が実況する。


「いおりん」の「まもる」!


「ちょ、ちょっと! 何で攻めないのよ!!」


「まみ」の「10まんボルト」!


しかしこれは、「まもる」によってダメージ0


「ふぅん。結構やるじゃない。」

「やるね亜美! でも「まもる」は連続で使用しにくいから、次の攻撃は当てにいくよ!」


真美の言う通り、次の指示は「まみ」の「10まんボルト」!

「いおりん」の体力が半分以上削られてしまった。


「ちょっと! 亜美! 何ボサッとしてるのよ! 守りだけじゃ勝てないわよ!」

「わかってるもん! だから、「いおりん」の大技を使うよ!」


「いおりん」の「ミラーコート」!


「こらっ! 亜美!! 私のおでこは鏡じゃない!!」

「で、でもほら。」


「まみ」はたおれた!

「いおりん」は「かいがらのすず」ですこしかいふく


「あら。意外と強いのねぇ。許してあげるわ」 


「ミラーコート」は相手の特殊攻撃を倍にして返す技。

そして、伊織のトレードマークはおでことウサギ。

亜美は、ミミロップがこの技を覚えることも含めて、伊織=ミミロップとしたのだ。


『さぁー、攻撃を返された真美ちゃん、次は……
 「ちーちゃん」と名づけられた「チルタリス」!!』


「ち、ちーちゃんって、私のことですか!?」


反応したのは、アイドルたちの中で最も高い実力を持つ:如月 千早だ。

亜美・真美は彼女を「千早おねえちゃん」と呼んでいるが、

あいにく、文字数制限に引っかかるので、「ちーちゃん」になっている。


「にひひ。千早の攻撃も跳ね返しちゃうかもよ?」

「くっ! 所詮遊びじゃないですか!」


「いおりん」の「マジックコート」!


『「マジックコート」! この技はあらゆる状態以上技を跳ね返す技です!
 それに対して、千早ちゃんはどう出る!?』

「私じゃないです!!」

「でもさ〜、この「チルタリス」は蒼い鳥だよ?」

「そ〜そ〜! で、ソプラノで歌うんだよね〜」

「……そ、そんなにまで似せなくても……くっ!!
 そんなに私を信じるなら勝ちなさい! 真美!」


「ちーちゃん」の「りゅうのまい」!


『「りゅうのまい」。攻撃と素早さを同時にあげる技です!』

「これで、次はちーちゃんが先手だね」

「フン! 亜美! また跳ね返しちゃいなさい!」


「ちーちゃん」の「ドラゴンクロー」!

きゅうしょにあたった!

「いおりん」はたおれた!


「嘘ぉ!?」

「私のほうが勝っていたようですね」

「さっきは私じゃないとか言っていたくせに……!」


『さて、亜美ちゃんの次の一手は……「はるるん」と名づけられた「ミロカロス」です!
 これは、春香ちゃんでしょうか?』

「え? 私? すごい、ホントに人魚みたい!」

『「ミロカロス」はこの世界で一番美しいと言われているようですね』 


ちなみにさっきから小鳥さんが否に詳しいのにはわけがある。

参考資料と見比べながら話しているのだ。


「千早ちゃん! 勝負だよ!」

「くっ! こんなに盛り上がってしまうなんて……
 私、はしたないっ!」


「ちーちゃん」の「つばめがえし」!


『「つばめがえし」は絶対に当たる技! 佐々木小次郎の得意技ですねー。
 HPを1/4削りました! さぁ、対する亜美ちゃんは?』


「はるるん」の「さいみんじゅつ」!

「ちーちゃん」はねむってしまった!


『相手を眠らせる「さいみんじゅつ」!
 これは、一方的な勝負になってしまうのか!?』


「すごーい! 催眠術ですよ! 催眠術!」

「くっ!! なんだか傷つくんですけど……」


「はるるん」の「れいとうビーム」!

こうかはばつぐんだ!

「ちーちゃん」はたおれた!


『こうかばつぐんのれいとうビームでダウン!
 さぁ、真美ちゃんの次の一手は!?』


ゆけ! 「あずささん」!


『「あずささん」だー! 種族は「サーナイト」!』

「あら〜。これはまた可愛らしいですね〜」


「はるるん」の「アクアリング」!


『この技は毎ターン体力が回復していく技! それに対して……』


「あずささん」の「なげつける」!

「あずささん」は「くろいてっきゅう」をなげつけた!

「はるるん」は「アクアリング」ですこしかいふく


『もたせる道具によって威力の変わる「なげつける」!
 これは痛いが……「はるるん」なんとか持ちこたえましたー!』

「あずささんが鉄球を投げつけるだなんて……想像できないっ!!」

「あ〜でも〜。鉄球ならキャッチボールとかもできますから〜」

「できませんよっ!!」 


「あずささん」の「10まんボルト」!

こうかはばつぐんだ!

「はるるん」はたおれた!


『さて、眠らせたり弱点突いたり回復したりしていた
 ちょっと黒い春香ちゃんが倒されました! さて次は?』

「小鳥さん!! さっきからひどい事言ってませんか?
 私は黒くなんてないです!」

『「ブースター」の「やよいっち」!!
 これはやよいちゃんですね!』

「うっう〜! やっと出番が回ってきました〜!」


「あずささん」の「めいそう」!


『特殊攻撃と特殊防御を同時に上昇させる「めいそう」!
 それに対して、やよいちゃんは?』


「やよいっち」の「にほんばれ」!

ひざしがつよくなった!


『天候を「はれ」に変える「にほんばれ」!
 これで、炎タイプの技の威力もアップです!』


「あずささん」の「めいそう」!


『おっと、真美ちゃん!
 「あずささん」にまたもや「めいそう」を使いました!』

「あら〜、どんどん強くなるのですね〜」


「やよいっち」の「ほのおのキバ」!

きゅうしょにあたった!

「あずささん」はたおれた!


『おっと! せっかく強化した「あずささん」が倒れてしまった!
 恐ろしいですね! 「ほのおのキバ」!!』

「あら〜、私の代わりは誰なんでしょうか〜?」

『次は……「グレイシア」! 名前は「ゆきぴょん」!
 雪歩ちゃんですね』

「わ、私、ですか……す、すぐ倒されちゃうんじゃ……」

「大丈夫! 真美に任せてよ!」 


「やよいっち」の「のろい」!


『「呪い」じゃなくて「鈍い」ですからね。
 すばやさが下がる代わりに攻撃と防御のあがる技です。』


「ゆきぴょん」の「あられ」!

あられがふりはじめた!


『「あられ」! この技は氷タイプ以外だとダメージを受けてしまう技!』


「あられ」が「やよいっち」をおそう!


「ううう〜、痛いです〜」

「わ、私、いじめてないですよ〜」


「ゆきぴょん」はあなをほってじめんにもぐった!

「やよいっち」の「ほのおのキバ」!

しかし「やよいっち」のこうげきははずれた!

「あられ」がふりつづいている

「あられ」が「やよいっち」をおそう!


「わ、私も穴を……」

『ほるなー! もぐるなー!』


全員で思わずハモる。


「ゆきぴょん」の「あなをほる」!

こうかはばつぐんだ!

「やよいっち」はたおれた!


『えーと、真美ちゃん?
 雪歩ちゃんが穴を掘るのまで当てはめなくていいんだからね……
 さて、亜美ちゃんはどう出るのでしょうか?』


「あふぅ」

「え? 今のは美希?」

「ううん。ミキ、あくびなんてしてないよ」

「今のは亜美だよ〜! 切り札の「ミキミキ」、登場だよ!」

『種族は「トゲキッス」!
 亜美ちゃんの切り札になるんでしょうか……?』


「ミキミキ」の「はどうだん」!

こうかはばつぐんだ!

「ゆきぴょん」はたおれた! 


『な、なんと!! 一撃で「ゆきぴょん」を撃破しました!』

「わー、この子すごいのっ!」

『続いて登場したのは、「ブラッキー」の「まこちん」! これは真ちゃんね』

「やーりぃ! がんばれよ、真美! そして、ボクの分身!」


「まこちん」の「どくどく」!

「ミキミキ」は「もうどく」をあびた!


「あー、真くんひどい技使ったの」

「ちょ、ちょっと! 戦略だよ、これは!」


「ミキミキ」の「はどうだん」!

きゅうしょにあたった!

こうかはばつぐんだ!

「まこちん」はたおれた!


「ガーン!! これからバリバリ活躍すると思ったのに……!」

『しかし、「どくどく」は確実に「ミキミキ」を蝕んでいきます!
 3対1の状況に追い込まれた、真美ちゃんの最後の砦は!?』

「ん? 数が合わなくない?」

「どういうことですか? 律子さん?」


ここまでのそれぞれの使ったモンスターはこうなる。
亜美
いおりん(水瀬伊織):ミミロップ
はるるん(天海春香):ミロカロス
やよいっち(高槻やよい):ブースター
ミキミキ(星井美希):トゲキッス
?????:?????
??:????

真美
まみ(双海真美):マイナン
ちーちゃん(如月千早):チルタリス
あずささん(三浦あずさ):サーナイト
ゆきぴょん(萩原雪歩):グレイシア
まこちん(菊地真):ブラッキー
?????:????


「亜美は自分を入れているはずだから、残りは私一人。
 でも、これで11人全員登場してしまう。」

「そういえば……」

「真美が出すのは私? それとも……」

『こ、これは!! 私です!
 真美ちゃん最後の砦は「ペラップ」の「ピヨちゃん」!!』


「……私は出なかったか……あとで亜美に教えてもらいますか……」


と、律子があきらめたそのときだった。 


「ピヨちゃん」の「みがわり」!

「ピヨちゃん」のぶんしんがあらわれた!


「はい!?」

『体力を1/4削って自分の攻撃を代わりに受けてくれる「みがわり」!
 しかし、これは時間稼ぎにしかならないのでは……?』


「ミキミキ」の「あくび」!

しかし、「ミキミキ」のこうげきははずれた!

「ピヨちゃん」は「たべのこし」ですこしかいふく

『こ、攻撃をスルーしました!
 えーと、「みがわり」には状態異常技が効かないそうです!』


「ピヨちゃん」の「わるだくみ」!

「ピヨちゃん」のとくこうがぐーんとあがった!


『「わるだくみ」は自分の特殊攻撃を2段階挙げる技です……わ、私は悪巧みなんてしてませんよ!』


アイマスライブでの出来事は、忘れようとしているつもりなのか。
(自分のとんでもない企画を押しておいて、他の企画を没にしようとした)


「ミキミキ」の「エアスラッシュ」!

「ピヨちゃん」の「みがわり」がかわりにこうげきをうけた!

「ピヨちゃん」の「みがわり」はきえてしまった

「ピヨちゃん」は「たべのこし」ですこしかいふく


『「みがわり」も消えてしまいました! さぁ、この勝負も大詰めです!』


「ピヨちゃん」の「ハイパーボイス」!

「ミキミキ」はたおれた!


『おっと! 亜美ちゃんの切り札が倒されてしまいましたよ! 強いです、私!』

「実況は中立の立場でしょ!」

『し、失礼しました。亜美ちゃんは……「りっちゃん」! ついに出ました!
 種族は「フーディン」!!』

「これが私なの……?」

「律っちゃん、この「りっちゃん」はもたせてある道具が「ものしりメガネ」なんだよっ!」

「なるほどね……。ホントあなた達、人のことよく見てるわ」


「ピヨちゃん」の「ハイパーボイス」!

「りっちゃん」の「サイコキネシス」!


『お互いに攻撃を打ち合い、両者体力がほとんど残っていません! 頑張れ、私!』

「音無さん! 自分の立場を忘れないでください!」

『ま、またまた失礼いたしました。』 


「ピヨちゃん」の「ハイパーボイス」!

「りっちゃん」はたおれた!


『亜美ちゃんも最後の砦を出すときになりました! ここまでのことを考えると最後は……!』


最後に出てきたのは、「プラスル」の「あみ」。


「あみ」の「10まんボルト」!

こうかはばつぐんだ!

「ピヨちゃん」はたおれた!


『決まりました! 勝者は亜美ちゃん…………あれ?』


なんと、亜美は……泣いていた。

真美も泣いていた……。


『あ、あの……どうして泣いているの? 亜美ちゃん、真美ちゃん?』

「この勝負……オーディションみたい……」

「うん……誰かが笑う陰では、誰かが泣いている……」


全員、返す言葉がなかった。

亜美と真美は、遊びの中で厳しさを見つけてしまったのである。

現実のオーディションと仮想現実のゲームという違いはあっても、

勝負の厳しさは変わらないのだ。


「なら、笑い続ければいい。泣いたら復活すればいい。そうだろ? 亜美! 真美!」

「「兄ちゃん!?」」


いつのまにか、プロデューサーも来ていた様だ。


「さ、明日からも頑張るぞ!」

「「うん!!」」


♪悩んでもしかたない
 ま、そんな時もあるさ あしたは違うさ♪


勝負の世界は厳しい。
笑う者がいれば、必ず泣く者がいる。
しかし、泣きっ放しではない。
泣いた者はまた、新たな力を得て帰ってくる。

勝負の世界とはそういうものなのだ。

END 



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