K@TH@RSIS

作:ユルカ

如月千早――彼女のプロデュースを始めて
半年が過ぎた。

だが、俺は……その千早に……とんでもない事をしてしまった……。


パチィン!!


「あ……!」

「あ…………!!」

「プロデューサーが……私の……私の……」


―私の頬を……叩いた……!


「あ……あ……!」


千早は、走って事務所を出て行ってしまった……。


「お……俺は……! お、俺は……!」


―――10分前


「どういうことだ!! 千早!! 仕事をほっぽり出すなんて!!」

「…………」

「いったいどういうつもりなんだ!」

「申し訳ありません……けど……」

「けど……? 『けど』だとっ!? 千早……言い訳するなっ!!」


パチィン!!


―――


「…………俺は……なんてことを……その時の感情に任せてなんてことをっ!!」

「自分を攻める前に……する事があるだろう?」

「社長……俺は……俺は……」

「それ以上は言ってはいけない。如月君のプロデューサーは君以外に考えられないのだよ」

「迎えに……行って来ます……」


事務所を飛び出し、千早を探しに行くプロデューサー……。


ポツ、ポツ、ポツ、ポツ……ザーッ……!!


「雨、か……」


その雨は、まるで……


「まるで……私の心みたいね……」


千早は近くの公園のベンチに座っていた。

雨は彼女の体を冷やし続けていた。

しかし、彼女は雨宿りをするとかそういった考えは無かった。

今は……ただプロデューサーの顔を見たくなかった……。


「プロデューサーがあんな事をするなんて……」


出会って半年……分かり合えたつもりだった……。


「おんや〜? 誰かと思えば千早じゃん? どしたのさ?」

「あ……」


千早に突然声をかけてきた人物は、千早の良く知っている人だった。

抜群のプロポーションと底なしのハイテンションを持つその人物は……。 


「『CLUBチアキング』のママさん!?」

「ジューシーポーリーYEAH!」

「はぁ……」

「ちょっとちょっと、どうしたのよいつもよりテンション低いよ?
 まぁ、ここじゃなんだし、雨宿りでもしますか」


チアキングのママに手を取られ、千早は慌てる。


「あ、あのちょっと……」

「ま、いいからいいから」


向かった先はもちろん、『CLUBチアキング』。


「たっだいま〜!」

「お帰りなさい……って、千早ちゃん!?」

「アサミさん……ど、どうも……」

「ほらほら、アサミちゃん。ボーッとしてないで、タオルタオル!」

「は、はい!」

「ほらほら、千早。今のうちにシャワーでも浴びてくれば?」

「そ……そうさせてもらいます……」


その後、アサミの服を貸してもらった千早は、2人に経緯を話すのだった……。


「プロデューサーは、もっと分かってくれる人だと思ってました。」

「いやでもさ。仕事を休んじゃったのは良くないでしょ。何があったのさ?」

「今日……弟のお墓参りに行って来たんです」

「あ……ゴメン。なんか辛い事……」

「いえ……その事だけで頭の中がいっぱいになっていて、それで……」


ママが、千早の前にカップを差し出す。


「コーヒーは飲める?」

「え? ……はい。ミルクと砂糖が入るなら……」

「千早は……そのままでも十分においしいコーヒー……」


と言って、コーヒーを入れるママ。


「そこに、千早ちゃんのプロデューサーの手腕が入り込む……」


と言って、ミルクと砂糖を入れるアサミ。


「でも、このままじゃ混ざりこむのに時間がかかる。
 だから、お互いの事を分かり合おうとする勇気と言う名のスプーンがいる!」


そこにスプーンを入れかき混ぜると、おいしそうなカフェオレが出来上がった。


「万人が飲めるカフェオレにするには、
 おいしいコーヒーだけじゃ作れないでしょう?
 千早にはプロデューサーが必要なんでしょ?
 あのプロデューサーなら、必ず千早の魅力を引き出してくれるって」

「でも……」

「お、そろそろ来たみたいね」

「え……?」


カランカラン…… 


「お世話になりまして……」

「ぷ、プロデューサー!?」

「千早がシャワー浴びているときに、連絡しておいたんだ」


プロデューサーは千早の前に立つと、頭を下げる。


「すまん、千早!!」

「プロデューサー……」

「感情に任せて俺は千早に……」

「謝るだけでは足りませんよ。プロデューサー」

「え? それはどういう……?」


バチィン!!


頭を上げたプロデューサーに千早のビンタが炸裂!!


「これで、おあいこですね」

「千早……」

「ですから、謝るのはやめてください。
 悪いのは、私なんですから」

「けどな……」

「謝るのなら、私以外にいるでしょう!
 私も一緒に謝りますから……」


「おろ? 雨止んだみたいだね〜」

「行きましょう、プロデューサー。
 謝るべき相手のところへ」

「ああ、千早……悪かった」

「次は無いですからね……」


その後、2人は得意先に誠意を込めて謝った。
ランクDでも、評判の良かった千早を
手放すのは番組でも痛いらしく、
今回の件は不問になった……


―数日後。


「千早。どうして、誰もいないブースなんかに?
 いい知らせ、持ってきてやったぞ!」

「……なんでしょう?」

「例のライブのチケット、即日完売だって。
 ランクCの人気はすごいな。もう完全にメジャーだ」

「そうですか……。あの、私からも
 プロデューサーに報告したい事が……」


ランクC・ランクアップ・コミュニケーションに続く…… 



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