キミと共に 〜君に出逢えて〜

作:229

「どうしてこんなことに・・・・・・」

 彼は今、病室で一人の少女の手を握り締めていた。


 彼は、日本では歴史的アイドルと呼ばれ、
歌番組はもちろん、
バラエティやドラマなど幅広く活躍したアイドル「星井美希」など、
数々のユニットをプロデュースし、
「アイドルマスター」と呼ぶにふさわしい、
超売れっ子の駿プロデューサーである。
 いや、だったと言ったほうがいいだろう。
駿は一人の人間を裏切ってしまったため、
もはやそんな資格はないと思い込んでしまった。

 さかのぼること数日前のこと・・・・・・


「あいつ・・・・来てくれるかな?」

 駿は美希の活動期間が終わり、
ハワイから帰国して3日ほどたっていた。
美希は、帰国してから1週間の休養の後、
別のプロデューサーと再び芸能活動に入ることになっていた。
だが、プロデューサーが変わっても、
駿が美希の「ハニー」であることに変わりはないのである。
 つまり、駿は今、誰もプロデュースしていない状態、
つまり無職同然なのである。
と言っても、しばらくしたら再び誰かをプロデュースする予定である。
 そこで彼は、このオフの期間を利用し、
久しぶりに会いたい人とこれから会うのである。
 駿は待ち合わせの場所で、約束の時間より30分早めに来てしまったのだ。
しかも前日はよく寝れなかったのだ。
しかも待っている今も、とても緊張しているのだ。

 5分後。その人はやってきた。


「お久しぶりです!プロデューサーさん!早かったんですね。」

「久しぶりだな春香。俺もちょうど今来たとこなんだ。」

 彼女の名は天海春香。
駿が765プロで初めてプロデュースした娘である。
Bランクで引退し、ドームで有終の美を飾り、あれからしばらく会っていなかった。
それからは毎日電話やメールを交換するようにしてきた。


「メールで「久しぶりに会わないか?」って来たんで、
 何かなって思ったんですが・・・・どうしたんですか?」

「いや、ようやく暇になったから、
 春香と一緒に遊びたいなと思って。」

「どうしてですか?」

「なんだかんだいって、メールや電話だけじゃ物足りなくて、
 気がついたら、会いたいってメール送っちゃった・・・・」

「プロデューサーさん・・・・私でよければ喜んで!」

「ホント?よし!今日は思いっきり遊ぶぞ〜!」

「はい!」

 駿と春香は、2人で映画を見に行ったり、
カラオケで歌いまくったり、
ゲームセンターやショッピング、スイーツフォレストなど、
遊びすぎというぐらい、十分にデートと呼べるに相応しいほど、楽しく過ごした。

 そして、すっかり夕方になり・・・・


「もうこんな時間か・・・・そろそろ送るよ。」

「え?いいんですか?」

「ああ。最近新しい車を買ったんだよ。
 ちょうどこの近くの駐車場に止めてるんだ。」

 駿と春香はおしゃべりしながら駐車場へと向かった。


「プロデューサーさん、すっかり売れっ子ですね♪」

「いやいや、プロデュースした娘が精一杯頑張ったからさ。
 俺はその道しるべをしただけだよ。
 でも、春香のときは、俺の知識不足や不甲斐なさで、
 Bランク止まりになってしまった・・・・
 俺がしっかりしていれば、Aはもちろん、Sにも行けたのに・・・・許してくれ。」

「いえいえ!そんなこと思ってませんよ!
 あんな私を、ドームで歌えるぐらいのアイドルにしてくれたんですから!」

「そう言ってもらえると、
 ちょっと救われたよ。ありがとう。」

「い、いえ・・・・そんな・・・・・・」

 春香は駿の笑顔を見て、少し頬を赤らめた。
そして話しているうちに駐車場に付いた。
駿は、ピッカピカで白のフェラーリの助手席のドアを開け、春香をエスコートする。


「さ、どうぞ。お嬢様♪」

「ええええええぇぇええ!?
 プロデューサーさん、これって、すごい車じゃないですか!?」

「まあ、値が張ったせいか、
 しばらく贅沢はできないけどな・・・・」

「いつ買ったんですか?」

「つい最近だよ。1ヶ月前かな・・・・さ、どうぞ♪」

 春香は助手席のイスに座り、駿はドアを閉じ、
運転席側に回り、ドアを開けて運転席に座る。
そしてエンジンをかけ、シートベルトをし、車は発進。駐車場を出た。


「たしか春香の家は○○○だったな。」

「そうです。よく憶えてますね?」

「そりゃあ、一度家に入れてくれたんだから。」

「そういえば、そんなこともありましたね。
 あ、そういえば、あの約束、憶えていますか?」

「え?なんだっけ?」

「ほら、今度、プロデューサーさんの家に招待してください!って。」

「ああ。そういえばな・・・・
 でもあれから、春香が引退して、
 千早や美希、他のアイドルのことがあったから忙しくって、
 結局招待できなかったんだよな・・・・
 なら明日にでも来るか?
 でも春香って、まだ学校だよな?」

「ちょうどよかったです!
 明日も学校はお休みなんですよ♪」

「そっか。なら、明日迎えにいくよ。
 時間とかはメールで決めるか。」

「そうですね♪楽しみだな〜♪
 どんなとこなのかな〜?」

「!・・・・・・」

 すると、車は一度近くのドライブインに止めた。


「?・・・・プロデューサーさん?」

「すまない春香・・・・
 俺にはそんな資格はなかったんだ・・・・・・」

「どうしたんですか?」

「美希のことだ。
 今、こうして君に再び会えて、これまでのこと、
 春香と別れてからのことを言える気がするんだ・・・・」

 駿は、今までプロデュースしてきた娘について説明した。
美希のプロデュースのことを。
そのほとんどを打ち明け・・・・


「そして美希のお別れコンサートのあと、
 俺たちはハワイに行った。
 そこで・・・・・・美希と・・・・・・同じ部屋で一夜を過ごした・・・・・・。
 もう、数日前の話だ・・・・・・」

「プロデューサーさん・・・・
 でも、どうしてその話を私に?」

「自分でもわからない・・・・・・
 でも春香には話したかったんだ・・・・
 でも俺は、美希の気持ちを裏切ることなんてできない・・・・
 もう、どうしたらいいかわからないんだ・・・・・・。」

「・・・・・・」

「すまない。こんな話をして・・・・
 そろそろ出発しよう。」

 車は再び動き出した。
それ以降、二人に会話はなかった。
今の駿は、春香の顔を見ることはできなかった。
というより、自分にそんな資格はないと思ってしまったのだ。

 1時間後、車は赤信号になったので止まった。
春香の家まであとわずかである。


「もうすぐ着くから。
 今日は来てくれてありがとう・・・・
 あと、ごめんな・・・・・・」

 しかし、春香は何もしゃべってはくれなかった。


「春香?」

 駿が春香の方を向けると、
春香は眠っているように見えた。
しかし、少し様子がおかしいと思い、
ためしに肩を叩いてみると、何の反応もない。
と、次の瞬間、春香は助手席の窓ガラスに頭をぶつけたが、
何の反応もない。
まるで人形のようだった。


「春香!?」

 駿が春香の肩をゆすって起こそうとするが、何の反応もない。
駿はすぐさま近くの病院へ急いだ。

 病院に着き、すぐさま医師の診察が始まった。

 10分後。担当医が駿に話しかけた。


「保護者の方ですか?」

「親ではないですけど、
 一応元プロデューサーって言っておきますかね。」

「患者の容態なんですが、現在意識不明の状態です。
 心肺機能は正常ではありますが・・・・」

「助かるんですか?」

「しばらく様子を見るしかないでしょう・・・・」

「そうですか・・・・付き添いはできますか?」

「どうぞ。病室は205号室です。」

 駿はすぐさま春香の両親に電話をかけた。
しばらくして両親が病室に到着し、駿は事情を説明した。
春香の両親は安心した感じで、
駿に「後はお願いします」と言い、病室を後にした。

 駿は病室の椅子に座り、
春香の右手をずっと優しく握り締めた。


「どうしてこんなことに・・・・春香・・・・・・」

 彼はしばらく春香の手を握ったまま眠りについた・・・・



「ここはどこだ?・・・・・・
 俺は確か、病室で春香の無事を祈っていたのに・・・・・・」

 気がつくと、彼が立っているのは、
都会の街中である。
しかし、人の気配は全くない。


「一体・・・・これは・・・・・・
 ん?あれは!」

 彼の視界に入ったのは、
ゴシックプリンセスに身を包んだ春香である。


「春香ー!お前、目を覚ましたんだな!
 でもその衣装は・・・・」

 とその時!春香は手にしている日本刀で駿の首に突きつけた。


「な!?・・・・春香・・・・・・?」

「うふふ・・・・プロデューサーさん、
 私のこと、裏切ったんですね。
 私はあんなに好きだったのに・・・・・・
 そんなプロデューサーさん、私は許せません。
 この手で殺してあげますね。」

「そんな・・・・春香・・・・・・一体何を。」

 駿は春香に日本刀で突きつけられ、
死を恐怖することより、
春香は俺のことを許してくれなかったということにショックを受けた。


「わかったよ・・・・
 こんな俺は死ぬべきなんだ・・・・・・」

「うふふ♪じゃあ思い通りにしてあげますね♪」

 駿は死を覚悟した。その時だった!


「やめろー!」

 駿はわけもわからずにいた。
ふと目を開けると、
目の前には青紫の髪をし、白い服を着た男が、春香と鍔迫り合いになっていた。

「え・・・・これは一体・・・・・・」

その男は、鍔迫り合いに勝ち、春香を怯ませた。


「マロン!」

「まかせてください!」

 と、そのマロンという春香とほぼ同年代と思われる、
栗色の髪の女の子は、火の玉を出し、春香にぶつけた。


「!!・・・・春香!」

「おりゃあ!」

 男は火の玉を食らって怯んでいる春香を蹴り飛ばした。


「!!・・・・やめろ!」

 駿が叫ぶと、マロンという子は駿に近づきこう言った。


「大丈夫です。ユウキさんも、ヴァルキリー様も、あの子を殺しはしません。
 救おうとしているだけですから。」

「???」

「見ればわかりますから☆」

「はあ・・・・」

「ヴァルキリー!」

「その身に刻みなさい!」

 すると、ヴァルキリーと呼ばれる、
羽兜を被り、神聖な感じの鎧を着た女性が、
春香目掛けてデカイ槍をぶつけた。
春香は槍が刺さり、そのまま消えていった。


「春香ー!!
 ・・・・・・おい!何が救おうとしているだ!殺してるじゃないか!」

「いや、ちゃんと救おうと・・・・」

 すると、ユウキと言われてる男が近づき・・・・


「マロン・・・・何もわからないやつがこれ見て、救ってると思うか?」

「・・・・・・確かに・・・・・・・・・
 でも大丈夫ですから!安心してください☆」

「???」

 すると、ヴァルキリーと呼ばれる女性が近づいてきた。


「安心しろ。
 彼女は救った。」

「あんた、ヴァルキリーって言ってたよな?
 ヴァルキリーって、あの神話で言われてるあのヴァルキリーか?」

 戦乙女ヴァルキュリア・・・・魂を選定する者。
たしか、そんなゲームがあったような・・・・
と、駿はいろいろと考えようとしたが、
春香の安否がなにより心配だった。


「・・・・春香は無事なんだな?」

「そうだ。そなたを殺そうとしたのは、彼女の闇の人格だ。
 あれはそれほどたたないうちに、彼女に乗り移ろうとしたのだろう。」

「だから春香は意識不明に・・・・」

「それは、人が裏切られた時、たまに乗り移るものだ。
 しかし、彼女は強かったのだろう。
 完全に乗り移ることはできなかった。
 しかし、この世界に引き込むことは、それにとって容易なことだったのだろう・・・・」

「じゃあその闇の春香は・・・・」

「さっき俺らが浄化した。
 彼女もそのうち気がつくんじゃねぇの?」

「そうだな目覚めるのは1時間はかかるまい。
 だが、しばらく私の中で魂を闇から解放しなければならないのだ。」

「それを完全に洗い流すのに1時間か・・・・」

「・・・・・・じゃあ、春香は助かるんだな
 ・・・・よかった。ありがとうございます!」

「それより、早くここを出たほうがいい。
 そなたにとって、ここにあまりいるのはよくない。」

「え・・・・なんでですか?」

「この空間は、あの闇が生み出した世界です。
 私達は平気ですが、生きている人間にとって、ここは危険なんです!
 闇を倒して、ここも早めに崩れ去ります!」

「安心しろ。
 我が責任を持ってお前を人間界に戻してやろう・・・・」

「はい・・・・
 お願いします。」

 それからしばらくたたないうちに駿の視界は真っ白になり、
気がつけば、病室で春香の手を握ったままだった。

「春香・・・・早く目覚めてくれ・・・・・・」

 駿は、春香が生き残れることの安心感からか、再び眠りについた。


「私・・・・・・」

 時刻は朝の5時。
外が少し明るくなり始めた頃に春香は目を覚ました。
春香の目に入ったのは見慣れない天井。
周りを見ると、なんとなく病院の個室であることがわかった。
そして、自分の右手を優しく握ったまま眠っている駿の姿も確認できた。
春香は、なんとなくであるが、
自分に何かが乗り移ったというのはっきりしていた。
ほとんど忘れているが、それはとても駿のことを恨み、
春香にとっては、耐え難い悲しみだというのは憶えていた。
だが、今の春香の気持ちは・・・・

 それから翌々日のこと。
春香は昨日と今日は学校であったが、
両親の勧めで、昨日から休みをとっていた。
 春香は自分の部屋のベッドで寝転がりながら、携帯に電話をかけた。


「もしもし・・・・プロデューサーさんですか?」

「春香・・・・学校はどうした?」

「お父さんとお母さんに、休むようにって言われまして
 ・・・・昨日からずっと自宅なんです。」

「そうか。一昨日はすまなかったな。」

「いえいえ!プロデューサーさんは何も悪くないですから!」

 春香の優しさに心を打たれ、
駿は涙を流していた。


「・・・・ありがとう・・・・・・
 それで、今日はどうしたんだ?」

「あの、一昨日の約束、憶えていますか?」

「え・・・・そりゃ憶えているよ。
 俺もちょうど話したいことがあるから、じゃあ今から迎えにいくよ。
 今日もヒマだし・・・・しばらく待っててくれないか。」

「はい。待ってますね。」

 春香は携帯を切り、外に出る支度をし始める。
 そして1時間後・・・・春香の携帯が鳴った。


「はい?」

「今、自宅前に車を停めている。
 両親にも話しておけよ。」

「はい。今行きますね。」

 再び携帯を切り、
春香は両親に、ミーティングがあるから事務所に呼び出しされたと伝え、外に出る。
目の前には、白いフェラーリが道路沿いに停められている。
助手席のドア前に駿が立っていた。
駿は助手席のドアを開けた。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます。」

 春香が助手席に座ったのを確認した駿は、すぐさまドアを閉める。
そして運転席側に回り、ドアを開けて乗った。
ずっとエンジンはかけたままなので、シートベルトをしてすぐ発進した。
2人は会話せず、沈黙した状態のまま1時間半後・・・・
車は駿の住むマンションに着いた。
 駿はマンションの地下駐車場に車を止めた。


「着いたぞ」

「はい・・・・」

 マンションは分譲であり、
駿が3組目(美希は5組目である)のユニットがAになり、
再び売れ出した際に、一部屋を購入した。
中は分譲だけあって、とても綺麗で、
いかにも金持ちのみが住んでいそうな部屋である。


「・・・・すごいマンションですね〜・・・・・・」

「そっかな?
 まあここの部屋を買った時も、また贅沢できなくなり始めたな〜・・・・」

 2人は駿の部屋へと向かった。エレベーターで10階へ上がり、駿は部屋の鍵を開けた。


「さあどうぞ。少し散らかってるけど。」

「わあ〜・・・・ここがプロデューサーさんのお部屋なんですね・・・・・・」

 リビングには特にこれといって目立つものはなく、プラズマテレビなどの最新家電が置かれてあった。


「春香、この部屋を見てくれないか?
 ちと恥ずかしいけど、話はこれを見てからなんだ。」

 駿は、リビングとつながっている1部屋のドアを開けた。

「え?・・・・ええええぇぇえええええええ!?
 あわわわわわ・・・・」

 春香はあまりにも驚いた。
 その部屋には、
Fランク時代に初めて作られた春香の水着ポスターから、
ドーム引退時、太陽のジェラシーを歌い終えた後にファンに手を振っている、
当時レアな春香のポスターまで、春香一色である。
本棚には、今までの春香の写真集や、ライブのDVDなどが。
ガラス棚には、春香のデフォルメフィギュアなどが飾られていた。


「俺、寝るときはここで寝ているんだ。
 春香のことを絶対忘れないために。
 だから、他のアイドルから、いくらか誘われたけど、すべて断っていたんだ。
 いつ春香が戻ってきてもいいように・・・・
 でも、美希は違った。
 あいつは、俺が事故ったとき、真っ先に駆けつけてくれた。
 あのときの美希の心配してくれている顔を見たときから、すべてがおかしくなったんだ・・・・
 ラストコンサートが終った日・・・・
 俺はこの部屋で寝ることができなかった・・・・・・
 でも!昨日、また会ってわかったんだ。
 俺にとって、春香は最愛のアイドルであり、
 かけがえのない人なんだって。」

「プロデューサーさん・・・・」

「なんて、ここまで春香一色だと、気持ち悪いだろ?」

「いえ!すっごく嬉しいです!
 私のこと、こんなに想ってくれてたなんて・・・・」

「そっか・・・・ありがとう。
 ここで本題に入るんだけど・・・・」

「え?」

「実は昨日・・・・」



 〜事件の翌日、事務所にて〜

「美希、ちょっと来てくれないか?」

「どしたのハニー?」

 駿は、美希を応接室に呼び出し、
春香のこと、昨日の出来事、
そして、春香を愛おしく思っていることすべてを話した。


「ハニー・・・・本気なの?」

「あぁ。でも!美希のことも、大切に想っている!
 でも、俺の心は、春香のことを愛さないと、
 死んでも死にきれないって言っているんだ・・・・」

「ハニー・・・・何げに臭いセリフを吐くんだね。」

「お前な〜・・・・こんなときになんちゅ〜ことを・・・・・・」

「いいよ。」

「え・・・・そんなあっさり決まることか?」

「でも!条件があるの。
 その春香って子、ハニーの手で美希を超えるアイドルになったら、
 美希はハニーのこと諦めてあげるね。」

「美希・・・・いいのか?」

「うん。ちょうど、ある事務所に勧誘されてたの。」

「え?」

「そこのプロデューサーに呼ばれたんだけど、
 ハニーのことがあるから、ずっと断ってたんだけどね。」

「・・・・そのプロデューサーって、誰なんだ?」

「なんだったけな〜・・・・・・
 たしか、真最強って言ってたような・・・・」

「な、なんだと!」

 真最強プロデューサーとは、
アイドル神の称号を得た「魔王エンジェル」などをプロデュースする、
まさに真の最強プロデューサーである。
駿とは、特別オーディションでも顔を合わせており、勝敗は5分5分である。
春香のときは見習いであるためか、完全敗北となり、
美希の時は、ほぼ互角であるが、フレッシュ差で勝利したのだ。


「じゃあ、真の最強プロデューサーが育てる美希と、
 俺の春香との勝負ってことか?」

「そういうこと☆」

「のった。」

 駿は美希をがっちり握手した。


「ということだから、美希はこの事務所やめて、そっちにいくから。
 その方が、ハニーも集中しやすいでしょ?」

「美希・・・・お前にはまいったよ。
 ありがとうな。」

「へへ☆」



 〜再び駿の部屋〜

「ということなんだ。」

「えええええ・・・・
 そんな急な・・・・・・」

「正直、春香のお別れコンサート、
 観客は盛り上がっていたけど、今思うと大成功とは言えないんだ。
 だから、今度こそ!
 もう一度Sランクを目指すためにも、
 ラストコンサートを大成功にするためにも、
 春香、俺ともう一度、トップアイドルを目指そう!
 そして、時が来たら・・・・」

 プロデューサーは、まるでお姫様に慕うナイトのように、
床に肩膝をついてこう言った。


「俺と・・・・つきあっていただけないでしょうか。」

「プロデューサーさん・・・・
 はい!私こそ!またよろしくお願いします!」

「じゃあ決まりだな。
 今日早速、これから事務所に行って、
 社長に会って再びプロデュースすることを報告して、
 今後についてミーティングをしよう!」

「はい!また始まるんですね・・・・
 私たちの伝説が・・・・・・」

「そうだ。改めて、よろしくな春香!」

「はい!こちらこそ!」

 と、春香は手を高く伸ばして、
手のひらをプロデューサーに見せた。


「ん?どうした?」

「え?ハイタッチですよ?やよいみたいに♪」

「なるほど・・・・これから気合を入れるのにはちょうどいいかもな!」

「はい♪ターッチ!」

「イエイ!・・・・あはははははははははは!」

「あはははははははははははははははは♪」


 ハイタッチをかわし、お互いの目を見て幸せそうに笑う2人。
こうして、駿プロデューサーと天海春香の、新たなアイドル活動が始まったのであった・・・・・・。


「春香・・・・キミに出逢えて、本当によかった。」

「私もです♪末永い付き合いを、よろしくお願いしますね!プロデューサーさん☆」

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