オセロのような黒と白

作:ユルカ

「プロデューサーさん……」


彼女の名前は、天海春香。

今をときめくスーパーアイドルである。

しかし彼女は心ここにあらずと言った感じだった。


原因はプロデューサーへの恋心。

しかし、アイドルとプロデューサー……

立場の違う二人が恋愛なんてできやしない……。


「明日も早いんだし……眠らなきゃ……」


しかしこの夜、春香は奇妙な体験をする……。


「ここは……?」


そこは、さまざまな色がせめぎ合い、
あらゆる色を作り出している空間だった。


『ようこそ。フフフ……』
「え……? 私……?」


春香の目の前にいたのは、ゴシックプリンセスを着た
まったく自分と同じ顔の人間。
便宜的に黒春香と呼ぶ事にする。


『そうよ。私はあなたの黒い心の部分。
 プロデューサーさんを思う気持ちの集合体よ』

「プロデューサーさんを思う気持ち……!?」

『ここは心の中よ。ここであなたを殺せば……
 私が表に出ることができる。
 プロデューサーさんを私だけのものにするために!!』

「な……!?」

『だから……死んで!!』


黒春香はどこから出したか、日本刀を振りかざして春香に襲い掛かる!


「ちょ、ちょっと待ってよ!! あなたは私なんでしょ!?
 どうして私を殺そうだなんて!!」

『さっきも言ったでしょ! プロデューサーさんを手に入れるためよ!!
 あなたがいつまでたっても、自分一人でうじうじしているから!!
 それくらいなら私が、私がプロデューサーさんを手に入れる!
 たとえ、他の人が傷ついたとしても……!』

「そんな……!!」

『おしゃべりは終わりよ……。死になさい!!』


日本刀で春香を突き刺そうとする黒春香……

だが…… 



「太刀が甘い。BETAと比べると月とスッポンだな……」

『な、何!?』

黒い戦闘用のスーツを着た少女が、
ナイフで日本刀を受け止めていた。

「春香ちゃ〜ん」

「あずささん!? ど、どうしてここに?」

「ないしょです」

「あずさ。民間人を傷つけるわけにはいかない。
 気絶まででいいな?」

「あ、あの、あなたは?」

「速瀬水月中尉だ。いくぞっ!!」


速瀬水月はナイフで、日本刀を持った黒春香と戦闘を開始する。


「春香ちゃん、今のうちに!」

「逃げましょう!!」


『そうはいかない……』


春香の目の前に闇の塊が出現したかと思うと、
それはすぐに、黒春香へと姿を変えた。


『お前の心は半分以上私……黒い心で染まっている。
 いくらでも出現する。逃がしはしない……』

「いいえ、絶対に逃げ切らせてあげるわ!!」

黒春香の前に、突然壁が出現する!


「だって、この水瀬伊織様がサポートしているからね!!」

「伊織!」

「心強い味方も3人ほどいるしね」

「メロンパンもらったから手伝ってるだけ……」

と言っているのは、紅い髪で黒い刀を持つ少女。

「フンだ。新しい下僕を探しに来ただけよ!」

と言っているのは、ムチを持ったピンクの髪の少女。

「そんな事言ってないで、あの黒いの何とかしなきゃ!」

そうやってなだめているのは、鎧の人物。

『ふざけるな……私から逃げられると思うな!!』

また別の方向から、黒春香がなんと2人も出現!
しかし!

「春香を殺させやしない!!」

「千早ちゃん!」

「ここは僕が抑えておく。魔導具”輪廻”!!」

そう言った青年は色々と年を変えて黒春香と戦っていた。

もう一人の黒春香は……

「おっしおき〜!!」

どっがーん☆

「は、春香さん、ここは先生に任せて早く!!」

先生とは到底思えない少女を支援しているのは、雪歩だった。

『だから、逃がさないと言っている!!』

しつこいくらいに黒春香は春香を狙ってくる。

今度は3人。 



「ワユ、いっきまーす!」

「ハムスターのクルミもいるよ〜!」

「俺のシュートを受けてみろ!!」


それぞれ、ノリの軽い少女剣士、
擬人化したハムスター、
妙に髪の立ったサッカー少年……。


しかし、実力はあるみたいで、黒春香を抑えている。


「春香! ここは美希たちに任せて!」

「うっう〜! 春香さん逃げてくださーい!」

「はるるんを絶対に逃がしてあげるって」

「真美達決めたんだもんね!!」

「みんな……」


『この……いいかげんにしろぉっ!!』


春香の前に出現したのは、超巨大な黒春香……
こうなるともはや怪獣映画である。


『このっ!!』

「きゃっ!!」


巨大黒春香は、春香をつかむとその手を握り始めた……


「い、痛い……やめてっ!!」

『やめるわけないでしょ? さぁ……おとなしく……』

「ドークス!!」

「ハッ!」


眼鏡の少年がクワガタの様なロボットに指示を出すと、
あっという間に春香を助け出した。


「さすがね、ユウヅル君は」

「律子さん! ありがとうございます!」

『……皆殺しだ……ミンナコロシテヤルッ!!!』


その言葉と同時に、こんどは大きなライオン型のロボットが登場してきた。


「春香、無事かい?」

「真!? そのロボットは?」

「今僕の前に乗っている、ルージ君のムラサメライガーさ!」

「いっけぇぇぇっ!!」


一刀両断。

巨大黒春香はたった一撃で、消え去った。

あとには、傷ついた黒春香がいた……。 


『最初にして最後のチャンスをつぶしてしまうなんてね……』

「もう一人の私……」

『私を消しなさい。そうすれば、
プロデューサーさんを自分だけのものにするという野心は消える……。』

「私……あなたを救いたい……」

『何を……!?』


春香は黒春香の目を見て言う。


「あなたと私……全部ひっくるめて天海春香なんだから……」

『……それが…………答えか……』

「おかえり、私……」


―朝


「夢か……
 でも、あの私は遠回しに言っていた。
 今告白せずにいつ告白するのかって……
 よし!!」


奇しくもこの日、天海春香はアイドル活動の
活動停止を言い渡される。

だが、春香の気持ちは変わらない。
全てが終わった時、プロデューサーに告白する。


それをあの時、自分の暗黒面に教えられた……。

黒いことが全部悪いわけではない。


(了) 



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