キミと共に 〜素敵だね〜

作:229

「はい。着いたぞ。」

「うわ〜☆プロデューサーさん、
 本当にお金持ちですね〜・・・・」

「まあこれも、春香たちのおかげかな。」

 『DESTINY』は、ドーム会場のお別れコンサートを、
アイドル界の歴史に残るほどの大成功で終らせた。
コンサート後、駿は車で、やよいと雪歩をそれぞれの自宅まで乗せ、
その後、春香とともに、駿の別荘にやってきた。
この別荘は森に囲まれた1階建てのログハウスで、
6人ぐらいで寝泊りできるほど広さである。
駿は、『DESTINY』がSランクに到達したとき、思い切って購入したのだ。
車は別荘の横に駐車し、2人はログハウスの中へ。


「さ、どうぞ。」

「おじゃましま〜す・・・・うっわ〜☆
 なんか、自然の家って感じですね!とっても素敵な場所です♪」

「そうか?ありがとう。のど渇いてないか?
 今飲み物持ってくるよ。そこに座っててくれ。」

「はい♪ありがとうございます☆」

 春香は白い4人用のソファーに座った。
駿はオーディオコンポの電源を入れ、ジャズ系の音楽を流した。
気分的には、ヒゲが似合うマスターが経営する喫茶店にいるようである。
駿は冷蔵庫から、缶のアイスココアと缶コーヒーを取り出し、ココアを春香に渡す。


「はいよ。」

「あ、すみません。いただきます☆」

 駿は春香の左隣に座る。
2人は同時に缶を開け、2人同時に飲んだ。


「「はぁ〜♪」」

 春香はココアを半分ほど飲み、
それを前のテーブルに置くと、
少し照れながらも、傾けるように駿によしかかった。
駿はそれを確認し、何のためらいもなく春香の右肩に右手を置く。
遠くから見ると、恋人同士に見える。 


「俺たちの伝説は・・・・
 ひとまずここで終わるんだな・・・・・・」

「そうですね・・・・」

「春香は、これからどうするんだ?」

「う〜ん・・・・少し休んだら、
 もうちょっとだけ、アイドルを続けようと思います。」

「そっか・・・・歌うことが好きだもんな。」

「はい☆ プロデューサーさんは、どうするんですか?」

「俺か?小さい頃の夢に挑戦したいなと思って・・・・」

「夢、ですか?」

「ああ。実は俺も、小さい頃は歌手を夢見てたんだ。」

「え?そうなんですか?」

「ああ。中学の時には、独学でギターも習ってて、
 高校の時には、ダチとバンドを組んで、
 「一緒に音楽で頂点を目指そうぜ!」と思ってた。
 でも、音楽事務所のオーディションに落ちて、歌手の夢を諦めたんだ・・・・。
 夢も無くなって、これからどうしようと思ってた時、
 学校の勧めでなんとなく行った就職説明会で、高木社長に出会ったんだ。
 「俺がプロデュースした娘が、トップになれる・・・・」と思った俺は、
 他にやりたいこともなかったから、迷うことなく765プロに入社した。
 で、初入社の時、春香に出会ったんだ。」

「そういえばプロデューサーさん・・・・
 私と初めて出会ったときにこんなこと言いましたね。
 「運命の出逢いを信じてるかい?」って・・・・」

「あぁ・・・・あの時俺は、一目春香を見たとき、何かを感じたんだ。
 たぶんそれで、あんな臭いこと言ってしまったんだろう・・・・
 その後、社長に会って、
 アイドル候補生たちのプロフィールをすべて見せてもらって、
 いざプロデュースする子を選んだ時、迷わず春香を選んだ。」

「な、なんか照れちゃいます・・・・
 あんな私を選んでくれるだなんて・・・・・・」

「そういえば最初の頃、
 春香はひどい言われようだな・・・・
 社長からは「普通の娘」って言われてたし、
 ひどい時には、関係者や審査員から「没個性」って言われてたんだ。」

「うぐ・・・・言い返せないですよぉ・・・・・・」

「でも、俺は逆に思ったんだ。
 春香には「無限の可能性」があるって。」

「無限の・・・・可能性?」

「ああ。だから俺は、
 『あんなこと言ったやつらを絶対に見返したい!』と思って、
 俺に出来ることすべてを、春香に尽くしたつもりだった。
 でも最初の春香は、Bランクどまりになってしまった。
 本当に申し訳ないと思ってるよ。」

「プロデューサーさん。もういいじゃないですか。
 今回は、プロデューサーさんのおかげで、
 真のトップアイドルになれたんですから♪」

「ああ。そうだな。」

「そうですよ!プロデューサーさんがいたからこそ、
 私はここまで頑張れたんです!もっと自信持ってください!」

「そうだな。ありがとう。これで決心がついたよ。」

「え?」

「俺、765プロでやるべきことは、すべてやり尽したと思ってる。
 だから、765プロをやめようと思ってるんだ。」

「え・・・・」 


「実は少し前、孝志が俺に相談してきた時、
 僕と一緒に、新しい芸能事務所を立てませんか?」
 って話になって、どうしようかなって思って・・・・
 だから、そこでデビューしようかなって。」

「ええ!?プロデューサーさん、歌手としてデビューするんですか!?」

「うん。昔のバンド仲間を集めて、
 新たな道に進んでみようかなって。」

「プロデューサーさんの夢が実現するんですね?」

「まあ・・・・成功するかはわかんないけどな・・・・・・」

「私、応援しますね!」

「そこで、なんだけど・・・・
 春香も来るか?」

「え?私もですか?」

「ああ。実は俺、春香がステージで歌っている姿を見て、
 春香とステージに立ちたいな・・・・って思ってたんだ・・・・・・」

「・・・・わかりました☆」

「え、いいのか?」

「はい☆私も、プロデューサーさんとずっと、
 ずーっといたいですから☆」

「春香・・・・ありがとう!」

「いえいえ、これから、ずっと一緒に頑張っていきましょう!
 プロデューサーさん♪」

「ああ!でも、これからは「プロデューサーさん」
 ではなくなるからな・・・・」

「あ・・・・そうですよね。
 なんて呼んだらいいですか?」

「そうだな・・・・普通に名前で呼んでもいいよ。」

「わかりました。えっと・・・・
 駿さん・・・・・・わぁ☆呼んじゃいました♪」

「ははは・・・・なんか、
 活動開始直前のミーティングを思い出すな。」

「そうですね☆ あははは♪」

「そうだ、ちょっと見せたいものがあるんだ。」

「え?なんですか?」

 駿はソファーから立ち上がり、
入り口とは反対のバルコニーのドアを開ける。
春香も駿についていく。
ドアを開けると、そこには湖があり、星の光が反射して、
まるで別世界にいるような、幻想的な光景が。


「うっわ〜☆すっごいロマンチックですね〜♪」

「本当?雲が一つも無くてよかったよ。」

「わあ〜・・・・☆」

「春香・・・・ここで改めて言うよ・・・・・・」

「はい・・・・」

 すると駿は、片膝を地につき、
春香の目を見つめながら・・・・


「こんな俺でよければ、
 生涯共に付き合っていただけませんでしょうか・・・・・・」

「・・・・はい☆私こそ、よろしくお願いします☆」

「ありがとう・・・・」

 立ち上がった駿は、そのまま春香に近づき、両手を肩に乗せる。
春香は上を見上げながら目を瞑る。
そのまま駿は、春香の唇にキスをした。
3秒ほどしてから、駿と春香は見つめあい、再びキスをする。
その後、キスは数回繰り返され、夜はふけていった・・・・・・ 


 翌日・・・・別荘のリビング隣の寝室で、春香は目を覚ました。
とりあえず顔を洗おうとリビングにでる。
すると、キッチン近くのテーブルで朝食の準備をしていた駿の姿があった。


「あ、おはようございます☆
 プロ、じゃなくて・・・・駿さん。」

「ああ。おはよう春香。
 朝食できたぞ・・・・って、あ・・・・・・!!」

 とっさに駿は顔を背けた。

「あれ?どうかしたんですか?」

「春香・・・・いくらドジでも、せめて服は着てくれよ・・・・・・」

「え?・・・・・・ああぁぁぁぁぁぁぁ!!す、すみませ〜ん!」

 春香は、自分は服を着ていないことに気づき、
赤面状態のまますぐに寝室に入り、急いで服に着替える。
 数分後・・・・私服に着替え、身支度をした後、
朝食を取る春香と駿。2人とも赤面状態である。


「わ、わたしったら何やってるんだろ・・・・あわわわ・・・・・・」

「な、はははは・・・・
 春香のドジがここまで来るとはな〜・・・・・・・」

「誰にも言っちゃダメですよ?」

「い、言えるかそんなこと!」

「う〜・・・・あれ?でも何で私裸だったんだろ?・・・・・・
 あ、そういえば昨日は・・・・・・」

「だ、大丈夫だ・・・・・・」

「え?何が・・・・ですか?」

 駿は、さらに顔を真っ赤にして言う。

「ひ、避妊はバッチリだから・・・・・・」

「あ、あわわわわ・・・・・・」

 ズバリ言われ、春香も顔を真っ赤にする。少し気まずい雰囲気になる。


「・・・・・・朝食終ったら、家まで送るよ・・・・」

「あ、はい。」

 その後、朝食を終え、駿は春香を車に乗せ、春香の自宅へ。
 数時間後・・・・春香の家に到着。


「それじゃあ、ありがとうございました♪」

「ああ。・・・・・・春香。」

「はい?」

「これからも、よろしくな!」

「はい♪これからよろしくお願いします!駿さん☆」

 帰り際、駿と春香はキスをし、駿の車は東京の自宅へ・・・・
春香も、昨日までの出来事を思い出しつつ、自宅のドアを開ける。

 数日後・・・・駿と春香の新たな伝説が幕を開けようとしている。 



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