キミと共に 〜新しい道〜

作:229

「それでは、プロデューサーさんの、
 新しい夢に、大いなる飛躍を期待しまして・・・・乾杯!」

「乾杯!」

「すみません、
 ありがとうございます!」

 ある日の午後10時、765プロが当時、最初の事務所であった時、事務所の下にあった居酒屋「だるい屋」。
そこには、駿と高木社長、音無小鳥が個室で飲んでいた。

 春香を家に送ったその翌日・・・・駿は、辞表を高木社長に提出し、その胸のうちを打ち明けた。
偶然社長室にいた音無小鳥は、最初は反対していたが、
高木社長はそれを快く受け取ってくれ、話を理解した音無小鳥も、それに賛成した。
すると高木社長が、
 「君と飲みながら話がしたい」
と言った。すると音無小鳥も
 「私も参加していいですか?」
と言い、それに反対する理由もなかったので、お互いのスケジュールに合わせ、3人で飲むことになったのだ。

 3人は、注文した鍋や料理をつつき、酒を飲みながら、
765プロの歴史、自分達の過去について振り返る・・・・


「そういえば、社長と小鳥さんはどこで知り合ったんですか?
 俺が入社した時には、小鳥さんはすでにいましたよね?」

「ふむ・・・・
 小鳥君は、私の知り合いの子でね・・・・・・」

「私が大学生の時、社長にお会いしまして、
『よければ、うちの会社で事務員をしないか?』
と言われまして・・・・それで入ったんです。」

「へぇ・・・・アイドルとしててではなく?
 小鳥さんならいけそうだと思うけどな・・・・・・」

「それについては、私も話したのだよ・・・・
 小鳥君は歌唱力もいいから、
 アイドル候補生として申し分ないんじゃないかと、
 今も思うのだがね・・・・・・」

「そうですよね?」

「いえ、私なんかが、春香ちゃんみたいにステージに立つなんて・・・・
 私は、あの765プロの制服を着てこそ、765プロの音無小鳥だと思ってますから♪」 


「小鳥さんらしいな。
 しかし、俺が入社してもう3年か・・・・・・
 早いもんですね・・・・・・」

「3年で765プロをここまでにしてくれ、
 トップアイドルを多く育ててきた。
 君こそが、真のアイドルマスターだと、私は思うよ。」

「いえそんな・・・・
 彼女達が頑張ってくれたおかげですよ。」

「そんな彼女たちはみんな、
 「プロデューサーさんがいたからこそ、ここまでやれたんです。」
 って言ってますよ?」

「なはは・・・・そこまで言われると、
 この仕事やってきて良かった・・・・って思いますね。」

「しかし、君はこれから新しい人生を歩むんだ。
 事務所は違い、ライバルとなってしまうが、頑張りたまえ!」

「はい!ありがとうございます!」

「さあ!今日はとことん食べ、
 そして飲もうではないか!」

「はい!」

 3人は料理をたらふく食べ、酒を多く飲んだ。

 そして2時間後・・・・


「うむ・・・・
 少し飲んでしまった・・・・・・」

「社長〜・・・・
 飲み過ぎですよ。」

 だるい屋の前で、高木社長は音無小鳥の肩を借りながら、
だるい屋の前に止まっているタクシーに乗っている。


「高木社長!
 今日まで、本当にありがとうございました!」

 駿がタクシーの中にいる高木社長と音無小鳥に、
深く頭を下げ、涙を流しながら叫ぶ。


「ああ・・・・君の新たな道に、
 大きな発展があることを祈るよ。」

「はい!頑張ります!」

「それではプロデューサーさん。
 また会えるといいですね。」

「そうですね。
 それでは、お疲れ様でした!」

「うむ・・・・出してくれたまえ。」

 高木社長の一言でタクシーは発進。
駿は、タクシーが見えなくなるまで頭を下げてタクシーを見送る。


「・・・・・・」

 やはり765プロとの別れが寂しいのか・・・・
駿は涙を流しながら帰宅する。 


 翌日の午前9時。駿は、だるい屋の上である、旧765プロの事務所へ。
その扉には、「柊芸能事務所」と書かれた札が付けられている。
柊とは、孝志の苗字である。
 扉を開け、開口一番に駿は挨拶をした。


「おはようございます!柊社長!」

「おはようございます、駿先輩。
 早いですね。」

「社長〜・・・・
 もっと社長らしくお願いしますよ。」

「あ、失礼・・・・
 うおっほん!おはよう、三島君。」

 ちなみに三島とは、駿の苗字である。


「高木社長の真似ですか・・・・
 ちょっとだけ似てますけど。」

「そ、そうかね?あははは・・・・・・」

「なはは・・・・ところで、メンバーは?」

「ああ。
 まだだけど、そろそろ来ると思うよ。」

 と、ドアが開いた。


「わあ!
 駿ちゃ〜ん♪お久しぶり!」

「琴葉!
 久しぶり!」

「よう。」

「おお、勇樹。
 あんま変わってないな。」

「どういうことだよ。」

「あははは!
 ・・・・・・あれ?」

 すると、ドアの前に長身でテンガロンハットをかぶった男がいる。


「・・・・・・」

「恭介・・・・
 相変わらずだな・・・・・・」

「さっきビルの前で、ちょうど3人会えたの♪」

 ここでメンバーを紹介しよう。

 まずは浜崎琴葉。
ピンク色のツインテールで、少々小柄な女の子。
なんでも「ちゃん」付けをする。
バンド時はドラム担当。
高校卒業後は美容師の専門学校へ。現在は小さな美容院で働いている。

 次に草薙勇樹。
青色のショートヘア、中肉中背で、よくサングラスをかける男。
バンド内でツッコミを多くする。
バンド時はギター担当。
高校卒業後は大学入り。今もストリートミュージシャンをしている。

 そして早乙女恭介。
黒髪のポニーテールで、背丈190cmの、よくデンガロンハットをかぶる男。
ほとんど無口。
バンド時はベース担当。
高校卒業後は、親の自営業を手伝っている。

 ちなみに駿は、バンド時はボーカルとギター担当である。


「見事にメンバーが全員集合したな〜・・・・・・」

「そりゃ、
 リーダーであるお前に集合かけられたらな。」

「そうだよ☆
 駿ちゃんから電話が来て、
 その内容を聞いたときにはびっくりしたよ♪」

「突然ですまないな。」

「気にするな。
 俺たち親友だろ?」

「そうだよ♪
 ずっとマブダチだもん☆」

「ふ・・・・」 


「ありがとう、みんな。
 実は、もうひとりメンバーを紹介したいんだ。」

「へぇ〜・・・・
 誰だよ?」

「社長、彼女は?」

「さっきメールが届いて、
 「最寄の駅についた」とのことだよ。」

「そうですか。
 ならすぐにでも来ますね。」

「誰だろな〜♪
 楽しみだな〜☆」

 すると、事務所のドアが開いた。


「おはようございま〜す♪」

「え・・・・・・嘘だろ!?
 『DESTINY』の天海春香じゃねぇか!」

「ええぇぇ!?
 な、生の春香ちゃんだぁ!」

「・・・・・・」

「恭介だけ驚かないんだな・・・・
 おはよう春香。」

「はい!おはようございます♪」

「は、駿・・・・
 お前らって知り合いなのか?」

「知り合いってレベルじゃないぜ。」

「駿さんは、私がアイドルをやってた時の、
 自慢のプロデューサーさんなんですよ☆」

「うっそ〜!?
 駿ちゃん、超有名人じゃん!」

「まあ俺自体、
 テレビに出ることはなかったけど。」

「でもなんで、天海春香がここに?
 ま、まさかとは思うが・・・・」

「そのまさかだよ。
 俺たちのバンドに、春香も参入しようと思ってな!」

「なにぃ!?」

「すっごい☆
 あの天海春香ちゃんとバンドを組めるなんて・・・・」

「今日は、一応俺たちについて知ってほしいから・・・・
 春香に俺たちの演奏を見せようと思うんだけど・・・・・・」

「マジで!?
 まあ俺はいつもストリートでやっているから、
 演奏は忘れてないけどな。」

「実は私も、
 ドラムだけは続けてるんだ♪」

「俺もだ・・・・
 ベースについては心配するな・・・・・・」

「じゃあ俺だけかな・・・・
 少しだけギターを忘れているのは・・・・・・
 一応、あの曲だけは昨日練習したけど。」

「なら、なんとかなるだろ。」

「そうだね♪」

「ふ・・・・」

「じゃあ行くか。
 では社長・・・・」

「ああ。僕も見させてもらうよ。」

「じゃあ行きますか。」 


 こうして一行は、事務所近くの音楽スタジオへ。
着いてすぐにメンバーは、音響のチェックなどを済ませる。
柊社長と春香はイスに座る。
そして、駿はスタンドにセッティングされたマイクで・・・・


「今日は、一曲だけですが、
 俺たちの演奏を聴いてください!」

「ヒュー♪」

「いえーい♪」

「では聞いてください!
 『想い出は億千万』!」


 想い出は億千万・・・・
元は、某ゲームに使われた曲であるが、
インターネット上で替え歌として流れ、
それがブームとなり、
現在も宴会場などで盛り上がるなどで、
多くの人が知っている名曲である。
当時の駿たちは、この曲をライブでのラストソングにしているのだ。

 ♪ 子供の頃 やったことあるよ 色褪せた記憶だ
     紅白帽頭に ウルトラマン ウルトラマンセブン! ♪

 勇樹の、ストリートで鍛えたギター捌き・・・・
琴葉の、残像を残すほどの高速なドラムテクニック・・・・
恭介の、天才的ベース弾き・・・・
そして駿の、魂の叫びとも思えるボーカル。
それに魅了された柊社長は、ノリノリに首を縦に振る。また春香も、頭の上で手を叩きリズムを取る。
 そして曲は最後・・・・

 ♪ 君がくれた勇気は 億千万 億千万
     過ぎ去りし季節は ドラマティック ♪

 演奏が終わり、これで終わり・・・・
と思いきや

「いっけぇぇ♪」

 琴葉が超高速でドラムを叩き、
ここから『おっくせんまん』の合唱ループとなる。
駿のみではなく、4人全員で『おっくせんまん!』と叫んだ。
それは1分ほど続く・・・・

 そして・・・・・・


「ふぅ・・・・
 ありがとうございました。」

 春香と柊社長は、拍手をしながら感想をしゃべる。


「わあ〜☆
 かっこよかったですよ!」

「うん。
 これなら天海さんと組んでも大丈夫だね。」

「マジっすか!?
 ありがとうございます!!」

「じゃあ私達・・・・
 デビューできるんですね?」

「よし!
 これからまた練習の日々が始まるぞ!頑張ろうぜ!」

『お〜!』

 と、その時! 


「ちょっと待った〜!」

「え?あれって!」

「ほ、星井さん!?」

「なにぃ!?
 「究極エンジェル」の星井美希だと!?」

「わあ〜☆
 こんなとこで、スーパーアイドルの2人を見れるだなんて☆」

「おはよ〜プロデューサーさん☆」

「お、おう・・・・
 久しぶりだな美希・・・・・・」

「駿・・・・
 まさか星井美希をもプロデュースしてたのか!?」

「「究極エンジェル」は違うけどな。
 その前のソロ活動のときは、俺がプロデュースしてたんだ。」

「駿ちゃん・・・・すっごい☆
 あれ?恭介ちゃん震えてる・・・・どしたの?」

 普段こうなることはありえないと思っていた恭介は、
自分のベースを置き、美希の前に出てきた。
そしてかぶっている愛用のハットを脱いだ。
顔面真っ赤で緊張しているのがわかる。


「は、初めまして・・・・
 あなたがデビューしてた時から・・・・フ、ファンでした・・・・・・」

「え?お前、美希のファンだったの?
 そういえばFランクの時、
 ファンからのプレゼントでテンガロンハットが届いてたけど・・・・
 あれってお前が送ったものか?」

「あ、あぁ・・・・」

「うわ〜・・・・
 恭介ちゃんの顔真っ赤・・・・・・」

「ホントに?
 美希、すっごい嬉しいの☆
 これからよろしくね♪」

「は、はい・・・・ん?」

「は?これから?」

「聞いてプロデューサーさん。
 美希ね、事務所のとこからさっきまで、隠れてて聞いてたの。
 それで、美希も仲間に入れてほしいの!」

「社長・・・・
 どうしましょう?」

「僕は歓迎しますよ。」

「春香は?」

「私も大丈夫です!
 実は、美希と一緒に歌ってみたかったんですぅ♪」

「みんなはどう思う?」

「私も超おっけ〜だよ☆」

「お、俺もだ。」

「あ、あぁ・・・・」

「よし!決定だ!
 これからもよろしくな、美希!」

「うん☆
 美希、また頑張っちゃうの!」 


 その夜、駿の別荘で、メンバーと社長での結成祝いが行われた。
会は大いに盛り上がった。

 そして深夜・・・・ほとんどが寝ているところに
 
 〜バルコニーにて〜


「ここはいつ見ても綺麗だな・・・・・・」

「はい・・・・☆」

 駿と春香は、星の光が反射する湖を眺めながら話をしていた。


「高校の卒業式はいつだ?」

「1週間後です。」

「ちゃんと卒業できるのか?」

「もう!
 私だって、活動中はちゃんと勉強しましたよ!
 ギリギリですけど・・・・」

「なはは・・・・そっか。
 春香が卒業してから、
 本格的に活動を始めると思う。」

「はい!頑張りますね☆」

「ああ。
 一緒に頑張ろう!」

「はい!・・・・あ、あの・・・・・・」

「ん?」

 すると春香は、目を瞑って顔を赤らめながら、顔を上向きにした。


「・・・・・・」

 駿はそれを悟ったのか、春香の肩に手を置き、そっと口付けた・・・・・・


「春香・・・・愛してるよ・・・・・・」

「私もです・・・・☆」

 2人は見つめ合い、抱きしめあった。
すると、2人の頭上に流れ星が輝く、まるで2人を祝福しているかのように・・・・・・ 



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