作:229
「元気かな?」
浜崎琴葉は、ある家の前にいた。その家とは、木造のログハウスである。
この日、琴葉は誰かとここで会う約束をしていた。ドアを開けると、その人はいた。
「琴葉さん!お久しぶりです!」
「春香ちゃん、全然変わってないわね。」
「いえいえ。私もすっかり40歳なんですよ・・・・」
「でも、まだアイドルできるんじゃない?」
「もうさすがに無理ですよ。今お茶出しますね。」
「うん。ありがと♪」
他愛もない話をしながら、琴葉はリビングのソファーに座る。
春香はキッチンに行き、棚から英国風の絵が書かれている缶を取り出し、
缶から紅茶の葉を紅茶用のきゅうすに入れ、熱湯を注ぐ。
それを、2つのティーカップを乗せたお盆に乗せ、琴葉のところへ持ってくる。
「あら、今日は転ばないんだ?」
「もう、私はもう昔の私じゃないんですから!あ、そろそろクッキーが焼けたかな?」
と、キッチンにクッキーを取りに行こうとすると・・・・
「わあぁ!」
すってーん!
見事に転んだ。
「ぷ、あははは!いくら大人に見えても、そこは春香ちゃんなんだね♪」
「もう・・・・笑わなくてもいいじゃないですかぁ・・・・・・」
と言いつつ、春香はキッチンにあるオーブンから手作りのクッキーを取り出し、
クッキーを皿の上に並べ、琴葉のところへ。
「ありがとう。う〜ん♪クッキーのいい匂いがするよ〜☆」
「でしょう〜☆」
春香はティーカップに紅茶を注ぎ、1つを琴葉に渡す。
2人は紅茶を飲み、クッキーをつまみながら、昔を振り返る・・・・
「私達が解散してから、もう16年か・・・・」
「そうですね〜・・・・」
ここで、16年前について説明しよう。
天海春香、星井美希、三島駿、草薙勇樹、浜崎琴葉、早乙女恭介の6人で結成されたグループ
「FREEDOM」は、芸能界や音楽界に歴史に残すほどの活躍をし、
16年前・・・・春香が25歳の時に、駿と結婚したと同時にグループは解散。
ラストコンサートは、日本中の全ドームを制覇し、最後の東京ドームで、有終の美を飾った。
解散後、春香は、お菓子作りの腕が日に日に増していったことが功を奏し、
現在はお菓子作りの先生として、よく料理番組に出ている。
琴葉は解散した年の3年後に結婚。今は専業主婦をしている。
草薙勇樹は、作曲家として現在も活動している。
星井美希は、現在もそのプロモーションを保っていることもあり、ファッション関係の仕事を主に、
今も芸能界で活躍している。
早乙女恭介は、ジャズ活動に移転。美希とのコンビを組んでいる。しかも美希と結婚したという。
きっかけは、美希がまた事故りそうな時に恭介がかばい・・・・
美希はそんな恭介に、だんだん惹かれていったとのこと。
「みんな幸せなんだね・・・・」
「そう言う琴葉さんだって、勇樹さんと結ばれているじゃないですか☆」
「でも最近の勇樹ちゃん・・・・作曲の仕事が増えすぎて、ちっとも私のことかまってくれないもん・・・・・・」
「そりゃ・・・・駿さん専属の作曲家ですからね・・・・・・今度「休ませてあげてください!」って伝えておきますね♪」
「もう♪春香ちゃんったら!」
「あははは♪」
2人が思い出を語ってから数十分後・・・・
「あ、そろそろかな?」
春香はおもむろにテレビをつけた。
『こちら東京ドームは、超満員のファンで埋め尽くされています!』
ドーム会場でのライブ中継だ。
「あ、もうそんな時間か・・・・」
「今日はどんな感じかな☆」
一方・・・・ドーム会場では、一人のアイドルがスタンバイしている。その横には、三島駿の姿があった。
駿は現在、再びプロデューサー活動に入っている。
今プロデュースしているアイドルは、「究極のアイドル」天海春香の子ということで話題を呼び、
その肩書きに負けないほどの実力で、現在文句なしのSランク・・・・
しかも、ファンを全く飽きさせないその姿は、まさに「アイドル神を超えたアイドル」と言えるだろう。
開演5分前、舞台袖にて・・・・
「指示はありますか?」
「そうだな・・・・いつもどおりにやればいい。」
「『楽しく』ですね?」
「ああ。」
と、スタッフが駆け寄り・・・・
「お願いしま〜す!」
「よし!出番だ!」
「それじゃ行ってくるね、お父さん♪」
「ああ!行って来い!!」
「天海飛鳥、行きまーす!」
彼らの伝説はまだ終らない。そこに歌と感動が存在する限り・・・・・・
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