無題

作:名無し

「千早・・・、俺達、家族になろう!」
と、私に語りかけるプロデューサーは、思わず吹き出しそうな程、真剣な顔。
でも、その言葉は嬉しくて―――。胸が張り裂けそうなほど―――、嬉しくて。
私の返事なんて決まってる―――。
「わ、私なんかでよければ・・・ごにょごにょ・・・」
ああもう、恥ずかしくてハッキリと喋れない・・・。いままでこんなことあっただろうか?
「そ、そうか!!」
それでも、私の声は届いたみたいで、ガッツポーズをするプロデューサーは本当に嬉しそう。
でも私も同じ位、いえ、それ以上に嬉しいんですからね!
「いや〜そうかそうか! じゃ、早速だけど『お父さん』と呼んでくれ! なんなら『パパ』でもいいぞ!」

はぁ!? 

何を言っているのでしょう、この人は。
それよりも、ふ、夫婦なら、あ、あ、あ、『あなた』とか、ダ、ダダダ、『ダーリン』とか・・・! 
そんなんでしょっ!?
これでは千年の恋も醒めてしまいそうです。まぁ私の場合は、これくらいじゃ醒めませんけど。
しかし、その要求は認めることは出来ません。
「そ、そんなこと言えません・・・!」
困り果てた末にそう言うと、プロデューサーは途端に哀しそうな顔をするのです。
「そ、そんな・・・」
がっくりと膝をつくプロデューサー。orz
ああもう、そんな顔しないでください。
「千早! なんでそんなこと言うの!?」
と、いきなりどこからともなく現れたのは、つい先日バツイチとなった私の母。
「な、なんであなたが・・・」
まったく余計なトコロで出てきてくれたものです。
「これからプロデューサーさんと親子になるっていうのに、どうしてそんな哀しいこと言うの?」
と、ヒステリックに私に叫びだす私の母。 
!? 今、なんて言った? 親子!?
「ち、ちょっ、何言ってるの? お母さん!!」
私達、夫婦ですよ!
「? 私、プロデューサーさんと再婚するのよ?」
「はぁ!?」
何を言い出すのでしょうか、この腐れババアは。今迄の騒動で、「あっち側」に行ってしまったのでしょうか。
「ほら、これ」
母が私に見せるのは、左手の薬指のプラチナの指輪!
しかも私がプロデューサーにもらったはずのもの!!
「それっ、私の!」
返してください!
「何、言ってるの? コレは私が貰ったものよ!」
「これから親子になるっていうのに、『お父さん』と呼んでくれないなんて・・・」
「ほら、見なさい千早! 『お父さん』困っているじゃない! ほら『あなた』!、元気を出してください。
今、千早は照れているだけですから」
そ、そんな! お母さんとプロデューサーが結婚!?
いやよ、そんなの絶対イヤよ・・・!!
いや、いや、そんなのイヤ・・・!

「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 


・
・
・
はっ!!
ゆ、夢・・・?
!? プロデューサーに貰った指輪!? ・・・あった。
しかしなんで、あんな夢・・・。
あぁ、そうだ、仕事で遅くなった私をプロデューサーに家まで送ってもらって、玄関先で会った母にあらあらあら、まあまあまあと、
プロデューサーが家にひきずりこまれて・・・。
そういえば、いつもより妙に「親っぽく」張り切っていたような・・・。ああもう、どうでもいい。
所詮、これは夢だ、現実とは何の関係もない。
さぁ、朝食を摂ろう。今日も過密スケジュールが私を待っている。
・
・
・
「おはよう、お母さん」
「あら、おはよう。ゴハンできてるわよ」
「はい、いただきます」
と、自分で適当に盛り付けて頂くことにする。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
離婚したあとも、私達、母子にはあまり会話がない。まぁそれは別に大したことではないけど―――。
「ねぇ、千早」
「何?」
「プロデューサーさんて、素敵な人ね」
「ブッ!!!!!」
こうして私は、盛大に母の顔にゴハンをぶっかけることとなってしまった。
あと、これらのことが、私が海外に進出する理由の一つとなったのは言うまでもない。 



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