Dorment volcano

作:ユルカ

「プロデューサー……大丈夫ですか?」

「生きてこの門を抜けられるように、祈っててくれ……」


俺は雪歩の家に呼び出されてここに来た。
雪歩の家はその筋の家だが、彼女自身からはそのことを微塵も感じさせない。
で、俺はそんな雪歩の父親に呼ばれたわけだ。
俺、生きて帰れるだろうか?

広いお座敷の真ん中に俺と雪歩。
両サイドには雪歩曰くお弟子さん。俺曰く黒服の怖い人。
そして、目の前にいるのが雪歩の父親……。


「まずは、普段から雪歩が世話になっている事について礼を言っておこう」

「ど、どうも……」

「で、要件だが……。率直に言う。雪歩のプロデュースを止めてもらいたい」


やはりそれか……。
ある程度予感はしていたがな。


「お断りします」

「何?」

「お断りします!」

「貴様、おやっさんに向かって何を……!」


黒服の怖い人達が俺を睨んでる。やっぱ怖い。


「なら、金銭で解決するしかないか。雪歩を止めさせるのにいくら必要だ?」

「金の問題じゃありません!100億積まれても雪歩は止めさせません!!」

「……貴様!!」


やばい!雪歩の父親が立ち上がった!
俺死ぬかも……。


プツン。


……何の音だ? 


「いい加減にして!!」


ゆ、雪歩?
その雪歩の顔を俺は一生忘れないだろう。
般若のようなその顔を……。


「私は765プロを止める気はありません!!」

「お嬢を止めろ!」


黒服さん達が、雪歩を止めようとするが……。


キッ!!


「ひぃっ!!」


目力だけで威圧した……怖ぇ。
雪歩の父親なんて腰抜かしてるし。


「私の人生、私の好きにさせてください!話は終わり!行きましょう、プロデューサー」


お、おい!


‐雪歩の部屋


「お父さんに嫌われる〜!!」


雪歩は部屋につくなりいきなり泣き出した。感情のままに言ってしまったらしい。


「俺が二人で話して来る」

「お父さん、怒った後はすぐに水風呂に入るみたいです」


水風呂!?


「おやっさんと話し合いたいそうですね。おやっさんはあそこですよ」


雪歩の父親は庭の池に着の身着のまま入っていた。
究極の水風呂だな。


「お話し、させて頂けますか?」

「話したいんなら対等になれ」


入れってことか。

俺は黒服の人に携帯電話と名刺入れを預けると、池に入った。

今は一月。寒い……。 


「なかなか気持ち良いものだろう?」

「そ、そうですね」


取り敢えず相槌を返す俺。


「雪歩があれほど怒るのは、高校入学以来だな」

「前にもあんなことが?」

「もし進路をきちんと決められなかったら、
 高校卒業と同時に背中に刺青をしろと言ったんだ」


刺青……!?


「さすがに怒ったよ。
『お父さんとお母さんから貰ったこの体を傷つけたくない』とね」


そんなことが……。


「雪歩のプロデュースを精一杯、努めるというのならこれからの活動を許そう」

「わかりました。雪歩を……娘さんをお預かりさせて頂きます」

「ところで君、寒くないのかね? 雪が降り始めたのだが……」

「そろそろ上がりたいです……」

「おい、熱い湯とタオル用意しておけ!」


俺はこの後、お風呂であたたませてもらった後、宴会に参加させてもらった。
怖そうな外見からは考えにくい心の広さだな……。

まあ、ひとつ困った事と言えば、町を歩いていて黒服さん達に会うと

「あ、プロデューサー。お疲れさんです」

てな具合に声をかけられて周りからの目線が痛い事だけだろう……。

ああ、雪歩のプロデュースはSランクまでいったことは言うまでもないことかな。

終 



上へ

inserted by FC2 system