ドリーム☆アゲイン〜夢をもう一度〜

作:ファル

その時、某所にあるドームは大変な熱気に包まれていた。
一世を風靡したアイドル…三浦あずさの引退コンサートである。

「これが…最後ね。」

全てを覚悟しステージに立つあずさ。

「ワァーーーーーーーーーーーッ!」

あずさの登場に、会場全体が盛り上がる。
その興奮に包まれながら、コンサートは大成功に終わった。
しかし…。

「はぁっ…はぁっ…苦しい。」

コンサートを終えたあずさは今にも倒れそうな息遣いだった。
20歳という年齢、ダンスをしながら歌うという事は、既に身体的にも限界だったのである。
数日後…。

「お世話になりました。」

あずさは荷物をまとめて社長室にいた。
アイドルを引退したあずさは、事務所をやめる決意をしたのだ。

「悲しい事だが、ここを出ても、頑張ってくれたまえよ。」

社長に言葉をかけられ、社長室を出る。
そして事務所を出ようとしたその時。

「あずささん!このまま逃げるんですか!?。」

「もう…燃え尽きたんですか?。」

かつて一緒に活動をしていた如月千早が言葉をかける。
あずさの苦労をP以外で一番知っている人物だ。

「……………ごめんね。」

あずさはそれだけ言うと、事務所を出て行った。
それから1年の月日が経ち、あずさは田舎の中学に講師として勤務していた。
担当科目は社会である

「このことから衆議院の優越があり…」

アイドル時代とは違う、しかし穏やかな生活。
あずさはこのままで良いと思っていた。
しかし…。

「あの…三浦あずさって言いましたよね。」

一人の男子生徒があずさに声をかけた。

「ええ、そうよ。何か用?」

「やっぱり!…僕中田って言います。アイドルやってたんですよね。」

この中田という生徒。あずさがアイドルをしていた事を知っているらしい。

「もう…昔の話よ。」

「どうして辞めちゃったんですか!?、僕あの日はずっと録画した引退コンサート見てましたよ。」

「私は…もう20歳だし…身体的にも限界なのよ。」

一通りの事情を説明するあずさ。しかし中田の口からはこんな問が返ってきた 

「あずささんは…何でアイドルデビューしたんですか?」

「えっ…?」

中田は何故あずさがアイドルになったかを聞きだしたのだ。

「運命の人に出逢いたいって言うのは分かりますけど…歌とかが好きでないとやれませんよね?」

「あなたはアイドルになる事で自分の「夢」を叶えようとした。」

「だけど、あずささんにとってアイドル辞めたって事は…夢を諦めた事と同じじゃないんですか?」

突然の言われように、あずさは言葉に詰まってしまう。しかし。

「分かったわ。あなたに言われた事、もう一度考えてみるわね。」

あずさはそれだけを言い残し、立ち去った。
その日の夜

「はぁっ…はぁっ…きついわね。」

そこには遊歩道でジョギングするあずさの姿があった。
再びアイドルになる事を決意したのだ。

「私は…まだ燃え尽きてない。もう一度やるのよあずさ!」

自分に言い聞かせるあずさ。遊歩道には軽い靴音が何時間も響いた。
半年後…

身体的限界を超えたあずさの体は、現役時代と変わらないほどに体力を取り戻していた。
歌の方は元々うまいので問題はない。

「お世話になりました。」

「本当にいいんですか?」

「はい。自分の夢を…もう一度追いかけてみます。」

そう言ってあずさは職員室を後にした。辞表を提出して…。
玄関で靴を履いていた時…。

「あずささん!。」

あずさは驚き、振り返る。そこには中田が立っていた。

「決めたんですか。」

「ええ…ありがとう。中田君。」

「頑張ってください。あずささんの夢…応援してます。」

「一回アイドルやってるからね…夢叶えなきゃ、フェアじゃないでしょ?。」

そう言うとあずさは出て行った。
その足であずさは765プロの扉を開いた。そのまま社長室へ。
一番驚いたのは社長である。

「三浦君ではないかね!。まさか戻ってくるとは…」

「あの…ダメでしょうか。」

「いやいや、構わんよ。こちらとしても、ある程度前歴がある人材がいいのでね。」

「早速活動を開始してもらおう、担当は以前の者で構わんね?」

「はい!頑張ります。」

こうしてあずさは「第二」の人生を歩み始めた。
今のあずさならば、必ず「夢」を叶えられるだろう。

ドリームアゲイン…あずさは今、夢をもう一度叶えようとしているのだ。 




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