たとえばこんなエンディング

作:名無し

「いつまで待たせてるのよっ!この変態!」
「今は変態関係ないだろ!人を殺すような目で見ないでください765プロの皆さん僕は何もしていません」
「ちょっと!私に手を出したのあんたからじゃないの!」
「ちょっ、伊織!そんな事公共の面前で言っちゃだめだろ!」
会話だけ聞いたら、きっと彼らは痴話喧嘩をしているカップルに聞こえるだろう。
女の子のほうだけ、妙に幼い声をしているのだが、まあ幼い声をした女の子なんてどこにでもいるものだ。
しかし実際は二人で、公共の面前、具体的に言えば休憩室の一人がけソファに腰掛けている。
プロデューサーの上に伊織が乗る形で、しかも何だか背中に手まで回して、身体を倒れかからせて、表情は蕩けて。
それは公共の面前でする体勢じゃないよな、としか言えない。
「ねえ、結局何がしたいのかしら。アイドルなんて彼氏もできない寂しい職業よね、私は違うけどっていいたいのかしら」
律子が若干力んだ笑顔をつくってそう言う。
つくづく人間の出来た子である。
「プロデューサー!私もだっこしてくださぁーい!」
「ダメよ、やよい!もう私専用のプロデューサーなのよ!」
「人手が足りなくなるんだけど」
「私の付き人を派遣してあげるわ、あんたよりよっぽど優秀よ」
「いちおうこの職業で飯食ってんだけどなあ・・・」
「わかってるわよ!アンタより優秀なプロデューサーなんていないのよ!」
「伊織っ・・・!」
思わず抱き合う二人。頭の悪いやりとりも度が過ぎるとその場の二人以外の全員が思わず倒れそうになる。
しかし某劇場でもないのだから、ぐっと踏みとどまって、果敢に質問を続けるしかないのだ。
「結局、何で私たち集められたんですかぁ〜、ひんそーな私には彼氏もできないだろって暗に伝えたいんですか」
「いや、違う違う。大体ひんそーなら伊織のほうが・・・」
「ちょっと待ちなさいよ!世界で一番綺麗って言ったのどこの誰よ!」
「もちろん俺だよ!今だって最高に綺麗さ!」
無言で抱き合う二人。おいおい天丼かよ、勘弁してくれよ、ていうか流れほとんど同じじゃんよと思いつつこれは素であると思い直し、
場の全員はやはりまたぐっと踏みとどまる。
「あのね、ハニー。美希ね、贅沢は言わないの。ただ、いおりんに飽きちゃうかもしれないでしょ?
その時は、私のところにいつだって来てくれて構わないの。いおりんじゃできないこともきっと私ならできるの」
「ごめんな、美希。俺にだって貞操観念くらいはあるんだ」
「未成年に手を出しておいて貞操観念って、ちゃんちゃらおかしーの」
「お前だって未成年・・・いや、突っ込むのはよそう、俺にとって不利にしかならない」 

結局、何のためにこうして今をときめくアイドルがこうして集まったかというと。
「そのな、報告しておくべきだと思ったんだ。なんかみんな感付いてたみたいだけど」
「そーね、将来を誓い合った二人の証人にもなってもらえるし」
「それは何ででしょうか?」
「やっぱりみんな年頃の女の子だから。そういう空気、嫌だろ?
だから、はっきりさせておこうかと思って。」
「さっきの会話からそんなの微塵も伝わってきませんでしたけどね」
そう言って頭を抱える千早と真。ああ、常識人だよね、君たちは。
「でも〜、アイドルとプロデューサーさんがくっ付いちゃうのって、まずいんじゃないですか〜?」
「うん、そこなんだ」
そういうとプロデューサーの表情は真剣になる。
「だから、君たちには応援してもらいたいんだ、具体的にはVS社長の時とかに」
「あとVSお父さんね、きっついわよー、伊織のお父さんは」
律子はおどけながらそういうが、どう考えても笑い事じゃねえよ、とプロデューサーは一人ぼそぼそと愚痴る。
「え、パパならもう報告したんだけど?」
「はぁ!?」
思わず素に戻る常識人たち。
状況がいまいち飲み込めないおとぼけさんたち。
「ハニー、何がまずいの?」
「いや、流石に年端もいかない自分の娘にこんな大の大人が手出したら殺すしかないだろ・・・」
頭を抱えるプロデューサー。
「どうするんですかプロデューサー。とっ、とりあえず私を恋人にしてみませんか?」
「いや、それ何が何やらだから。ていうか千早は常識人サイドだと信じてたよ」
「くっ・・・胸ならそんなに、そんなに変わり栄えしないのに・・・っ」
「俺何もそんなこと言ってないよ!?」
「私には成長の余地があるものね」
「うっうー!それならやよいだってまだまだがんばりまーっす!」
「ハニー、ぜぇーったい大きいほうがいいはずなの。だって家に遊びに行ったとき・・・」
「俺の人間としての尊厳を保たせてくれないか、頼むから」
「ちょっと!もう捨てたんでしょうね!ていうか捨ててやるんだから!何よこんなにかわいい彼女がいるのに!」
「ていうか、話を振った美希が言うのもなんだけど、話が進まないの」
顔がちょっとまじめになるナムコプロ一同。

「で、結論としてはこうだ」
交際は認められたこと。ただ、挨拶に来いとのこと。
プロデューサーのひととなり自体は社長からも伊織からも聞いているので問題ないということ。
「よかったですプロデューサー!」
「なんつー豪気な、とは思うがな。まあよかったよかった」
顔をだらしなく緩めて伊織の頭をなでている図は見ているものに不快感を与える。
「パパへの挨拶どうするつもりなの?」
「まあ、近いうちに行くさ。手土産持って行こうかな、ちょうど伊織もお菓子のコマーシャルやってるし」
「ちょっと、あれはそういう用途に使うような高級なものじゃないでしょ」
「愛が伝わるだろ?」
「もうっ・・・ばかっ・・・」
「伊織・・・っ」
二人とも目が胡乱になっている。
「まあ、何はともあれ」
律子がみんなに合図を送って、
「おめでとう!プロデューサー!伊織ちゃん!」
と、大合唱して。
ナムコプロ一同の幸せな日々はこれからも続いていく。 




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