オーデション後の控え室で

作:名無し

オーデションが終わった控え室に千早と俺は居た。
P「千早・・・今日のオーデションは本当にすまなかった。
俺の指示ミスさえなければ余裕で合格できたものを台無しにしてしまった。」
千早は俺に背を向けるように控え室の窓から夕暮れの街を見つめている。
振り向いてはくれない。間違いなく怒っているんだろう。当然だ。
P「敏腕記者がいくら良い記事を書いてくれたって
結局最後は自分の力が頼りなんだと言うことを、今更ながら思い知らされたよ。
もう、こんな思いを千早にはさせない!約束する!」
俺は千早に向かって深々と頭を下げていた。
それぐらい今回の凡ミス自分でも許せなかった。
また、それと同じくらい千早に対してすまない気持ちで一杯だった。
P「だからもう一度、俺にチャンスをくれ!!必ず千早をトップアイドルにしてみせる!!」
なりふり構っていられなかった。
俺は千早が自分に愛想を付かして離れてしまうのではないかと本気で心配していた。
千早の肩が震えている。俺に対する怒りだろうか?それとも落選の悲しみで泣いているのだろうか?
千早「ぷ・・・」
P「ぷ?」
千早「ぷ、ふ、ふふふふふっ・・は、はっはは」
千早は目に涙を浮かべて・・・笑っていた。
千早「ご、ごめんなさい、プロデューサーがあんまり真剣な顔するものだから・・・
思わず可笑しくなっちゃって、ふふっ」
どうやら千早はガラスに映った必死な形相の俺の顔を見て笑いを堪えていたらしい。
千早「いつもどこかボーっとしてる顔しか見たこと無かったから・・・
あんな必死な顔見せられたら、おもしろくて」
千早の告白に俺は苦笑するしかなかった。
一頻り笑ったあと、千早はいつもの顔に戻り言った。
千早「たしかに、今日のオーデションの敗因の一旦はプロデューサーに在ると思います。
でも、一番は私の実力不足です」
P「でも、俺の指示ミスで千早のオーデション暦に要らない黒星、傷をつけてしまっ・・」
千早が指を一本自分の前に突き出し、俺の言葉を遮った。
千早「私はプロデューサーのお蔭で今まで数々のオーデションを合格できたと思います。
私ひとりではきっとここまで来れはしなかったでしょう。」
千早「それに、傷が付いても、私は『勲章』だと思います。私達が一緒に戦ってきたことの勲章。」
P「勲章か・・・」
おおよそ、アイドルには似合わない言葉だったが、
歌を極めようとする千早にはその言葉は不思議と合っていた。
千早「それに・・・私をプロデュースしてくれるのはプロデューサー、貴方だけなんですよ。」
P「それじゃ、これからも一緒にやってくれるのか?!」
千早「当たり前です!こんなところで一人だけ降りられては私が困ります。」
P「千早!ありがとう!本当に有難う!」
俺は思わず千早の両腕を取り何度も礼を言っていた。
千早「こちらこそ、お願いします。プロデューサー」
千早の頬が心なしか紅潮しているのは夕日に照らされているからだろうか?
千早「でも、今日みたいな凡ミスはコレっきりですよ?」
俺は最後の最後できつーい釘を刺されたのだった。



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