『泣きたい時は、涙流して』

作:名無し

千早「私、この日が来るのを予感していました。だから、平気なはずなのに・・・」
千早「心を硬く冷たく閉ざせば、どんな事が起ころうとも、歌だけ見て生きて行けた筈なのに!!」

千早は瞳は今にも泣き出しそうなのを必死になって堪えていた。
千早「プロデューサーが悪いんです!!
何が『歌は心だ、心を開かなければ他人の心を感動させる事は出来ない』ですか!!」
千早「こんな辛い思いをするぐらいなら、私、心なんて要らない!!」
P「千早!!」

俺は右腕を大きく振り上げる。千早が咄嗟に身を竦め、顔を守るような体制をとる。
それは千早に染み付いた悲しい習慣でもあった。
俺の右腕は身を竦めている千早の頭に軽く手を載せ、幼子をあやす様に撫でてやった。

P「悲しいことを言うものじゃない。
千早の歌はデビューしてファンの前で歌うように成ってから見違えるように上手くなってきているよ。」
P「昔の千早の歌はテクニックこそ高いが何処か他人を寄せつけない冷たさが在った。
だが、今は違う。
それは自分自身でも感じているはずだ。」

確かに千早自身も自分の歌が変って来ているのは感じ取っていた。
理屈では上手く表現できないが、歌い終わったあとに残る心の安らぎのようなものは
確かに昔の自分には無かったものだ。

P「心を閉ざして貝のようになれば生きていくのは楽になるかもしれない。
でもそれはただ逃げてるだけだ。」
P「もちろん他人が逃げることは非難しない。でも、千早には逃げずに立ち向かって行って欲しい。
  辛くて悲しい事もあるだろうけど、嬉しくて楽しいことも一杯あるはずだ。」
P「それらすべてが千早を育てる糧になるはずだ。
俺はね、千早にそんな大きな心を持った歌手になってもらいたいと思ってる。
  そして、成れると信じてるんだ。」

千早は俯いたまま黙って聞いていたが、しばらくしてポツリと、

千早「プロデューサーって、厳しいですね・・・・・」
P「ああ、俺にとっては千早は家族みたいなモンだからな。もちろん俺だけじゃない。
社長や音無さんや他の皆もそう思ってるはずさ。」
千早「家族・・・・わたしとプロデューサが・・・・・」
P「ああ、俺達は“家族”だ。悲しいときは一緒に泣こう。
嬉しいときは共に喜ぼう、そうすれば辛さは半分。喜びは二倍さ」

千早の顔がみるみる崩れていく。でも、それは千早の心の壁が崩れていく事の証だった。

千早「プ、プロデュー・・・・う、うわぁぁぁぁ・・・・・・!!!」
もう千早の瞳は涙を抑えきれなくなっていた。大粒の涙が床に落ち、口からは嗚咽が溢れた。

俺は千早を引き寄せ左手で背中を摩ってやった。
千早の涙がシャツを濡らすがそんな事は問題じゃなかった。
千早の涙の熱さがシャツ越しに伝わって来た。


〜ノーマルコミュ〜 



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