阿鼻叫喚のクリスマスキス?

作:GD

「あれ?プロデューサーだけ?他の皆は?」
「わからない。俺が来た時も誰もいなくて、やっと来たのが律子、お前だけだ。」

今日は12月24日。奇跡的に所属アイドルの全員に午後からのスケジュールの余裕があった。
社長の粋な計らいにより、765プロ所属メンバー全員でのクリスマスパーティーが
行われる事になった。会場はだるい屋で、開始は夕方。
だるい屋は765プロが弱小と言われていた頃の事務所の下の居酒屋だ。
たいした昔でもないが、あの頃の事を思うと懐かしい気分でいっぱいになる。
社長やアイドル達と一緒にあの頃の話をしよう。今日は美味い酒が飲めそうだ。

俺はTV局との打ち合わせがあって、日中は事務所にいなかったのだが、
日も落ちてくる頃、だるい屋に向かう途中で春香からメールがあった。

「今晩のクリスマスパーティーは、会場が変更される事になりました。
 事務所で行われるそうです。プロデューサーさんがびっくりする
 プレゼントを用意しているので、ちゃんと時間までに事務所に行って、
 おとなしく待っててくださいね。o(^-^)o 」

何故今頃になって会場が変更されるのかイマイチ理解できないが、
社長の懐具合にでも問題が発生したのだろう。

社会人らしく、ちゃんと時間に余裕を持って事務所には到着した。
しかし事務所には誰もいないし、時間になっても律子しか来ない。
事務所にそういう準備がされているようには見えないし、
時間を5分過ぎても誰も来る気配はない。

事態が飲み込めない。まさか俺と律子だけ仲間はずれにされたんじゃないだろうな…。
最近は律子に相談に乗ってもらう事が多かったし、深夜まで雑務に付き合わせて
しまった事も何度かあった。皆を思っての事だったのだが、浮いていたのかもしれないな…。
もちろん、そんなのは建前で、本当は俺は律子の事を…いや、これ以上はよそう。
多数の人気アイドルをプロデュースしている俺が、そんな個人的な感情を持つなんて
あってはいけない事だ。ずっと前から、自分でもその事は意識しないように努めてきたし、
誰にも悟られていないはず。となると、やっぱり事務所で浮いていたのが大きいのだろうか。
微妙に不安になっていると、律子が持っていた包みから何かを取り出している。

「律子、お前は何をしているんだ?」
「来る前に雪歩に渡されたのよ。先に行って準備しててくれって。
 着いたらこれを装着しておけって言われたわ…何かしらこれ?あずささんとやよい作だって。」

見るとリボンがいっぱいついた帽子のようなものだった。
律子は不思議そうに黙って被る。妙に長いリボンがするすると垂れ下がり、
プレゼントの包装のようだった。はずかしそうにしている律子が可愛い。
ついじっと見つめてしまった。

「もう…あんまりじろじろ見ないで…。
 これは…プロデューサーの分かしら…。真と千早が作ったんだって。はい。」

律子に渡された帽子を被る、俺もプレゼントみたいな状態になってしまった。
確かに…これはちょっと恥ずかしいな。律子の気持ちが解った。
更に律子は包みの中から可愛らしい便箋を2つ取り出した。

「これは手紙ね…プロデューサーの分もあるわよ。はい。」

渡された手紙を開ける。手紙を読む前にふと前を見ると、
律子が真っ赤になりながら呆然としていた。今は構わずに手紙を読む事にする。


 メリークリスマス!今プロデューサーの目の前にあるのが、
 私達からプロデューサーへのプレゼントよ。ありがたく受け取りなさい。
 せっかく私達が用意してあげたチャンスなんだから、頑張んなさいよねっ!

                       あんたのご主人様 伊織 


…目の前にあるプレゼントっぽいものって……アレしかないよな…。
…そうか…悟られていたか…。

そして目の前のプレゼントっぽいものは、真っ赤になりながら何かごにょごにょ呟いている。
俺と目が合うと、口をぱくぱくさせながら必死に話しかけてきた。

「…これ…目の前にプレゼントがあるとかなんとか…亜美と真美から…。」
「…俺のにもそう書いてあるな…伊織からだった…。」
「…これってやっぱり…。」
「…たぶんな…。」

長い沈黙。俺も律子も、何を言っていいのかわからなかった、
最後に言う言葉はわかるんだが、タイミングがわからないというか、
どうやってそこまで言葉を繋いでいいかわからないというか。
軽く深呼吸をした後、無理矢理に言葉を紡ぎ始める。

「…あのな律子…俺はお前の」
「待って!!」

律子に止められてしまった。律子は頬をポリポリ掻きながら続ける。

「ごめんプロデューサー。あのね…今はまだ、そういう話はしたくないかな…。
 もちろん私だって嬉しいし応えたいけど…。私、これでもアイドルだから…。」
「そうか…そうだよな…すまん。」
「歯止め効かなくなりそうで怖いしね…。(小声)」
「え?なんだって?」
「いえいえ、こっちの話。」

再び微妙な沈黙が続いてしまう。

「まあ、何か言うのはまた今度って事にしましょう。だめ?」
「…律子がそう言うならな。」
「うわ、あからさまに不機嫌そう。そんなに残念だった?」

いたずらっぽく笑う律子。いつもの調子が戻りつつある。

「…まあでも…みんなからのプレゼントをわざわざ捨てちゃうのももったいないし…。
 ここは黙ってお互いを頂いちゃう事にしましょ。うふふっ。」

照れながらそう言うと、律子は両手を広げながらゆっくり歩いてきた。俺も手を広げて律子を待つ。

俺と律子は、他に誰もいない事務所で、強く長い抱擁を交わした。言葉はいらなかった。 


〜 同時刻 だるい屋 〜

「つまんない!つまんないぃー!」

クリスマスパーティーの最中、不満をだだ漏れにしているのは伊織だった。

「な、ん、で、プロデューサーがここにいないのよー!」
「あー、いおりんがご機嫌斜めだー。まあ飲め飲めー。」「さあさあ、ぐいっといけー。」
「オレンジジュースで気分が晴れますかってのよ!社長!私にもそれを飲ませてちょうだい!」
「おいおい、水瀬君には日本酒は早いぞ。お酒は20歳になってからだ。あと7年待ちたまえ。」
「あと6年ですっ!」
「あらあらー、みんなでプロデューサーさんにプレゼントしようって話になって、
 伊織ちゃんもノリノリでお手紙書いてたのに。おかしいですねー。」
「あずささん、仕方ないですよ。ボクだってちょっと辛いですし…。」
「今頃きっとプロデューサーと律子さんは、めくるめく大人の世界への一歩を…はううっ…。」
「雪歩さん、それっていったいどんな世界なんですかぁ?」
「や、やよいにはちょっと早いんじゃないかな?(汗)」
「春香は知っているのね。その大人の世界とやらを…汚らわしい。」
「千早ちゃん…なんか怖いよ…。」

盛り上がっているようでそうでない、微妙な雰囲気。
理由は皆が知っている。ここにプロデューサーがいないから。
(ここはがっかりフラレナオン祭りだったのじゃよオンナスキー!)

「まあ…あんなの見せられちゃったら、何も言えないですよね…ははは。」

誰かに言うでもなく呟き、乾いた笑いを漏らす春香。
同意するように、アイドル達は大きなため息をついた。


本当なら、我が事務所のトップアイドル達が集っているこの場所は、
もっとこう、華やかで楽しい席になるはずなんだが…。
何故こんな雰囲気なのか、理解できない高木社長は小鳥さんに小声で質問する。

「今日はみんなの様子がおかしいみたいなんだが、小鳥君は何か知らないのかね?」
「あのですね…この前律子さんがドタキャンで休んだ事があったじゃないですか。
 あの時に、みんな律子さんの部屋に遊びに行っていたらしいんです。
 そこにプロデューサーもお見舞いというか様子見に来てですね…。
 皆はその様子を隠れて見ていたらしいのですが、帰り際に律子さんが寝たと思った
 プロデューサーは、皆が見ている前で律子さんのほっぺに…。」
「…ほっぺに何だね?」
「社長…ちょっとここで言うわけには…。」

視線を感じた社長がふと周囲を見ると、アイドル達の殺意を含む視線が
一斉にこちらに向けられていた。社長はなんとなく事情を理解した。
しかし事情は理解しても、状況を変える事はできない。
肩をすくめ、おとなしくアルコールを摂取する事しかできない
高木順一郎(これでも芸能プロ社長)であった。

「それで涙を堪えてのプレゼントか…みんないい子じゃないか…。
 この経験はきっと、彼女達を一段と輝かせる事になるだろう。
 頑張れ、我が事務所のアイドル達。」

誰にも聞こえないように社長は呟いた。


重い雰囲気が続いていたパーティー会場。(だるい屋1階)
ここで突然、小鳥さんの携帯に着信、律子かららしい。
小鳥さんは軽く連絡を受けて携帯を折りたたんだ。

「今、律子さんがこちらに向かっているそうです。あと5分程で到着するそうですよ。」
「プロデューサーは!?一緒に来てるんでしょっ!?」
「落ち着いて伊織さん、それについては何も…どうしたんでしょうね。」

重い雰囲気に変化はなかった。



ガラガラガラガラ…。

律子が到着、一人だった。何故か台車を押している。
台車の上には大きな袋が置いてあって、もぞもぞと動いていた。
「おーい律子ーもういいかー?」などと、聴きなれた声が聞こえる。
皆が待ち望んだ声だった。

律子は空気を読まずに大声で話し始めた。

「はい、皆さんメリークリスマス!みんなからのプレゼント、本当に嬉しかった。
 ありがとう!お礼に、私からもみんなへのプレゼントを用意したわ。」

目の前のプレゼントっぽい物を見ながら、アイドル達はごくりと唾を飲み込む。

「これから皆に順番を書いたくじを引いてもらいまーす。そしてその順番に、
 この袋の中の物に好きな事をしてかまいません。それがプレゼントです。
 好きな事を言わせたり、好きな事をしてもらってください。どうかしら?」

キター!!!!!!
アイドル達の目が「ギュピィィン!」と十字に光った。

後半に続く。 


「はいはーい、しつもーん!」
「はい真美、何かしら。」
「ちゅーはありなんですかー。」
「うーん…ほっぺたまでならOKという事でどうかしら。」
「やったー!」
「…用事を思い出したので、ちょっと失礼。」

台車を引っぱって柱の陰にから消える律子。
「ぷはーどうしたんだ律子うわっ」
柱の陰からちゅうちゅっちゅっと音が聞こえる…。


全員(キスもしてなかったのか…。(汗))


ガラガラガラガラ…。少し赤い顔で戻って来た律子。
アイドル達はちょっと複雑な気分だったが、これでキッスのお許しが出たと思えば
たいした事ではない。心の中で気合を入れるアイドル達だった。


くじ引きが始まった。順番にくじを引いていき、あっさり順番が決まる。
亜美真美、伊織、春香、あずさ、雪歩、やよい、真、千早の順に決定。

律子は袋からプロデューサーを出して、イスに座らせて、
そのままイスにグルグル巻きに縛り付ける。
もう逃げられないプロデューサー。
「律子、これはいったいどういう事だ?」
やっぱり事情は何も知らないらしい。
「プロデューサーは何もしなくていいの、
 そのままおとなしくしていてくれればいいわ。」
「え?え?」
説明もなく、そのまま続行。


まずは亜美真美。
「ずっとエンコーって奴をやりたかったんだよねー。」
「ちゅーするとお小遣いが貰えるんだよねー。」
「ようし、兄ちゃんにいっぱいちゅーしちゃうぞー!」
「いっぱいしちゃうぞー!」
「1回500円でいいよ。」
「ええええっ!?」

プロデューサーの驚く顔が元に戻る間もなく、
二人はプロデューサーの両頬にキスの嵐を浴びせる!

ちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっちゅーーーっ!!

「亜美は40回ちゅーしたよー。」
「真美も40回ちゅーしたー。」

ひいふうみい…二人の計算タイム。

「合計で4万円だねっ!」
「くれるのはお年玉の時でいいよー。」
「「お正月が楽しみだねっ!」」

キスの嵐を受けてぐったりしながらうなだれるプロデューサー。
その目からは涙がドバドバ流れている。
「お、鬼だ…。」


次は伊織。

伊織は周囲を見回しながら
「本当はあまり気が進まないんだけど、場の空気的に私もキスしなきゃいけないみたいね。
 なんかいきなり凄い物を見ちゃった気もするけど…私は普通にキスして差し上げるわ。
 この伊織様直々にキスして貰える男なんて、貴方が始めてよ。
 感謝しなさいよね。にひひっ。」

全然嫌がっていないのは誰が見ても明らかだったが、誰も何も言わなかった。
このままキス流れで進行して貰わなければいけないのだ。
伊織はプロデューサーのひざの上にちょこんと横向きに座り、
首に手を回してプロデューサーのほっぺにキスをした。

ちゅーーっ ちゅちゅーーーっ ちゅっちゅーーっ

普通にとか言いながら熱烈なキスかましてるし。

「はい終わりっ。私からの最初で最後のキス、一生の思い出にしなさいよね。にひひっ。」

明るくプロデューサーの膝から立ち上がり、早足で自分の席に戻る伊織だったが、
うつむいた顔からは表情を読む事ができなかった。 


次、春香。
「私もほっぺにキスでいいです。お代はいいですよ。えへへ。」
「当たり前だ。早くしてくれぇ〜。」

急かすプロデューサーと急いでプロデューサーの元に向かう春香。
そんな事をさせたらいかんぞプロデューサー!!

「あ。」

こけっガッシャーン!!やっぱりころんだ。
しかし悲劇はそれだけでは終わらない。

春香はプロデューサーをイスごと押し倒して、その上に覆いかぶさるように倒れていた。
そして倒れたばかりではなく、プロデューサーの唇に自分の唇を重ねていた。
全員が固まって5秒ほど時間が止まる。しばらくして亜美真美が大喜び。

「はるるんクチにちゅーしてる!!」
「クチにちゅー!クチにちゅー!」

照れながら立ち上がる春香。

「えっと…私のファーストキスですけど…、よければどうぞっ!」

全員「うおおおおおおおお!!」

どよめきの声が上がる。律子以外の。
律子は半泣きでプロヂューサーをイスごと引きずって行ってまた柱の陰に。
「うわああああああん!」
また柱の陰からちゅっちゅっちゅちゅちゅーっ!という音が聞こえる。

全員(さっきのクチじゃなかったのかよ…。(大汗))

戻って来た律子はもうヤケといったふうで
「これからは唇にキスもありにしますっ!」
心の中でガッツポーズしたアイドルが何人かいた。


次はあずささん。

「えっとー、お口にするのもOKみたいなので、私もお口にさせて頂こうかとー。」

プロデューサーが覚悟する間もなく、プロデューサーの顔を掴んで
超濃厚なディープキスを開始。

ちゅう、ちゅっ、ちゅぱっ、ちゅくっ、ちうー、ちゅうっ、ちゅうーっ!

凄い音を立てたディープキスに全員が絶句。亜美真美も固まって見入っている。

「ご馳走様でしたー。うふふっ、初めてじゃありませんし、いいですよねー。」

全員(なんだってー!!)

衝撃を受けるが、真実が怖くて何も言えない(聞けない)アイドル達であった。


次、雪歩。

「私もおクチにちゅー…はううっ、なんでもないですぅ…ほっぺで…お願いしますぅ…。」

相変わらず煮え切らない態度の雪歩だったが、その雪歩を助ける為に、
亜美真美が立ち上がった。雪歩はプロデューサーの近くに歩いていく。
雪歩がプロデューサーの頬に唇を近づけていったその瞬間に

「どーん!」「ちゅー!」

横から押して唇にちゅーさせた後に、二人の頭を押さえてちゅーを維持。
亜美真美…恐ろしい子!

「むむもがむぐむふうんもふむふ!…がくっ…」

もがいた後にそのまま目を回して崩れ落ちる雪歩。その後何度か目を覚ますが、
その度に今の事を思い出して真っ赤になって倒れるのであった。
これは年内にプロデューサーと顔を合わせるのは無理だな…と皆が思ったとか。


次はやよい。

「私は…ほっぺで十分ですっ!」

伊織のようにプロデューサーのひざの上にちょこんと座って
プロデューサーにキスをしてもらっている。
その目からは滝のような涙がだーっと出ている。

「あらあらー、ほっぺにキスされて泣いて喜ぶなんて、
 やよいちゃんってかわいいですねー。」

あずささんはのんきにコメントしているが、
そうじゃない、本当は皆と同じように唇を重ねたいのに、
それが言えなくてほっぺにちゅーしてもらっている自分が
子供だなあと痛感しての涙なのであった。

(伊織ちゃんだって自分からほっぺにちゅーしていたのに…
 私はまだまだ子供ですっ!ううっ、うわーん!)

やよいの本心に気付いた者はいなかった。頑張れやよい! 


遅くなったけど次は真。

「ボクもプロデューサーの唇にキスします!」

力強い宣言の後、ガッとプロデューサーの顔を掴んで豪快にキス。
男みたいなワイルドなキス。

皆は(これじゃどっちが王子様かわからないよ…)と思っていたが、
それを口に出す者はいなかった。

何かイケナイ物を見ている気になってしまったアイドルも何人かいたとか。


最後に千早。

「私も頬にキスしてもらえればそれで…。」

しかし、それが本意でないのは誰が見ても丸分かりである。
プロデューサーに頬を寄せて静かに目を閉じる千早。
律子はプロデューサーにかけられた紐を解いた。
目と顔で「やれ!やれ!」と何度も合図を送る。

プロデューサーはしばらく渋っていたが、覚悟を決めたのか、
千早をぐいっと抱き寄せて思いっきり唇にキスをした。

ちゅううーーーーーーーーっ!

びっくりしてしばらく抵抗できなかった千早だが、
気合を入れてプロデューサーを突き放す。

「もう!何をするんですかっ!」

真っ赤になって怒った顔をしてはいるが、口は嬉しそうに緩んでいて
まんざらでもなさそうだった。


「ふう…これで全員ね…。」

律子は全体を見回して確認しながら言った。
社長は手酌で大人しくお酒を飲んでいた。
そのまま目が合ったが「よくやってくれた」といった感じの
穏やかな表情なので、胸をなでおろす。余計な事をしたわけではなかったらしい。

「以上が私からみんなへのクリスマスプレゼントです。
 それじゃあ、私たちはこれで失礼しますね。」
「律子、俺はまだ何も食べ」

ガッ。律子はプロデューサーに肘鉄を食らわす。そのまま二人で退場。
律子はちょっと早足で、プロデューサーはそれを追いかけていった。


最後の最後に律子

だるい屋が見えなくなる角を曲がった瞬間に律子は振り向いて、
プロデューサーの顔を掴んで不器用な息継ぎのような、
必死なキスをし始める。(やっぱりちょっと辛かったらしい)
しばらくしてプロデューサーを離す律子。

「…律子…落ち着いたか?」

それには答えず、律子はぼそぼそ喋りながらグズり始めた。

「…靴に画鋲入れてくれればいいのに…ぐすっ…墨でもぶっかけてくれればいいのに…
 みんなに応援されるなんて、そっちの方がずっと辛いってのに…
 ぐすっ…うっ…うううっ…うわああああああん!!!」

人目も気にせずに律子はおいおいと泣き始めてしまう。
プロデューサーは何も言えずに黙って律子を見つめる。

「なんで!なんで私なのよ!他にも可愛い子いっぱいいるじゃない!!
 なんで私なんか選ぶのよぉーーーー!!」
「…ごめんな…。」
「バカバカ!ヘボプロデューサー!わああああん!」

律子はプロデューサーの胸をポカポカ殴る。
プロデューサーは黙って律子の肩を抱き寄せ、律子が落ち着くまで待った。
泣きじゃくる律子が落ち着くのには時間がかかったが、
やっと落ち着いた律子を離して、律子を部屋に送りながら雑談をする。

「みんなにも幸せになって貰いたいよな…。」
「なにを当たり前の事言ってるのよ…。」
「俺に出来る事なら、なんでもしてやりたいよ…。」
「それは本気で言ってるのかしら?」
「ああ…本気だ。男に二言はない。」
「よし、それじゃあプロデューサーには
 なんでもしてもらいますからねっ。」
「おう、いいぞ。」

ニヤリと笑う律子にちょっと不安になったが、
なんとかいつもの調子に戻った律子を見て、
余計な事を言うのはやめにしたプロデューサーだった。

続く(かもしれない) 



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